色がユニークな世界観を繰り広げるミュージックビデオ制作例

色がユニークな世界観を繰り広げるミュージックビデオについて

音楽や本の楽しさのひとつは、そこで語られる物語を自由に想像できるところではないでしょうか。そういう点で、ミュージックビデオは場合によってはその楽曲に込められた物語を視覚化してしまい、想像の幅を狭めてしまう可能性もあります。そこで今回は、色を効果的に使うことでユニークで想像力を掻き立てる世界観を生み出しているミュージックビデオを集めてみました。色の効果を体感してみてください。

 

前衛的な世界観がどこか不気味なミュージックビデオ制作例

The Breeders – Walking with a Killer (Official Video)

アメリカ出身のオルタナティヴ・ロックバンド「The Breeders」の楽曲「Walking with a Killer」のミュージックビデオです。どこか不穏な物語のように見えるモノクロ映画がベースに、ポップ調の色と場違い感のある花のモチーフがコラージュのように合わせられています。楽曲のタイトル「Walking with a Killer(殺人者と共に歩く)」からも察することができますが、歌詞の内容もかなりダークで、サラサラした曲調からはイメージがつかないもの。そのアンバランスさが、モノクロのベースに差されるくすんだ色調でも表現されているように感じます。

ロックっぽさが薄い不思議な世界観が印象的なこの「オルタナティブ・ロック」は、1970年終わりから1980年代にアメリカで生まれた、商業的なポップ路線なロックとは一線を画す前衛的なロックとして確立したジャンル。この楽曲でも、決してポップな大衆受けする路線を意識していないことがよくわかりますね。殺人や死、といったダークなポイントにあえてカラフルな花のモチーフを重ねたり、赤ちゃんを寒色で塗りつぶすような演出がしてあったり、どこか不気味でありながら、不協和音のように、まとまった美しさがあるミュージックビデオに仕上がっています。

 

EDEN | Projector

アイルランド人シンガーソングライターEDENの楽曲「Projector」のミュージックビデオです。シンプルな構図で、大きな窓とベッドというシーンから、ただ広い空間に飛び出すという流れですが、何よりも印象的なのは色調です。ざらつきのある、かすんだようなカラースキームで統一されており、楽曲の音質と見事に調和しています。空虚さにあふれた歌詞とはミスマッチともいえる暖色系の色が、この男性が渇望する世界を表現しているようにも感じます。

そして、この楽曲の最大の特徴はどういうわけか曲の真ん中に日本語の歌詞が紛れていることです。ブリッジに女性の声で日本語の語りが入ります。歌詞検索などでは、日本語表記のまま掲載されているものもあり、この楽曲のターゲットとなるであろう英語圏の方にとってみれば、謎の言語が紛れているように感じられているかもしれません。ベッドルームから飛び出した未知の世界を表現するために、あえて不思議な言語代表として日本語が選ばれたとも考えられます。最後に結局部屋に戻ってきてしまう、というのがどこか皮肉にも感じる、ユニークな世界観が色によって演出されているミュージックビデオです。

 

単調なメロディに深さを与える不思議なタッチのミュージックビデオ制作例

Maggie Dave – I’m Not Ready

インディーズのミュージックプロジェクト「Maggie Dave」の楽曲「I’m Not Ready」のミュージックビデオです。まだデビューもしていないMaggie Daveは、2人のミュージシャンが組んだプロジェクトで、その世界観は独特という言葉に尽きます。絵本のようなタッチのアニメーションが描き出すのは不条理感が満載で、「I’m not ready(準備できていない)」という歌詞と不思議な調和を感じてしまいます。黄色がベースになった色使いになっているからか、おとぎ話のようなファンタジーなトーンもありますが、アニメーションで描かれているシーンひとつひとつを見てみると、不気味さもあり、ダークファンタジーの巨匠ティム・バートンの世界を彷彿させるような感覚もありますね。

「準備できていない」と「君は絶対に信じてくれない」という否定的な歌詞が続き、アニメーションの最後に登場する線路がどこに繋がるのか…と物語の先まで想像してしまう、というのがこのミュージックビデオの芸術性を証明しているのではないでしょうか。

 

万華鏡のような世界が広がるミュージックビデオ制作例

Corridor – Topographe

カナダ・モントリオール出身のミュージックバンド「Corridor」の楽曲「Topographe」のミュージックビデオです。カラフルな万華鏡をのぞいているような気分になる構成が印象的ですね。ヨーロッパ風なイラストの中にコラージュのように実写が融合しており、実写なのかアニメーションなのかも明確ではないところが、この映像に惹きつけられる要因のひとつなのかもしれません。モントリオールを拠点としていることもあり、楽曲は全編フランス語。タイトルになっている「Topographe」は日本語にすると「地形学者」。タイトルの意味がわかった段階で、もう一度ミュージックビデオを見てみるのですが、こじつけでもしない限り、その関連性が浮かび上がってこない、というところに何故か深みを感じてしまいます。

歌詞の内容は、自分の存在感をテーマにしていて、実物大の自分を見てほしい、という渇望のように受け取れるもの。本当に伝えたいことを、真逆の世界観にのせて発信するという手法が効果的に使われているミュージックビデオです。

 



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