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多くを伝えるロゴの作り方

1を語り10を伝える、イメージを膨らませるロゴデザインの制作例

多くを伝えるロゴの作り方

ブランドにおいてロゴとは、ビジュアルイメージの最前線にある広告塔であり、同時に企業戦略の要とも言えます。多くの場合において集合体であるブランドの理念を一本化し、また外部との関係性、世の中に伝えたいイメージを表します。人間でいうところ、信念、趣味、志向、価値観すべてのものを表す看板を首から下げて歩いているようなものです。

多くの情報をできるだけ簡単に正確に外部に伝えられるようにするもの。それがロゴデザイン。受け手側からすると「一を聞き十を知る」わけです。

そのような伝達能力の高いロゴをデザインするにはどのような点に着目すると良いのでしょうか。今回はその方法を探りながら、ロゴデザインの作例としてブランディングとグラフィックデザインを手掛けるロシアの Ivan Voznyak さんの作品を紹介させていただきます。※記事掲載はデザイナーに許諾を得ています。(Thank you! Ivan!!)

伝わるロゴとは

伝わるロゴデザイン≠てんこ盛りのロゴデザイン

伝達能力の高いロゴを作りたいからと言って、伝えたいことをなんでもかんでも詰め込むことは正解ではありません。なぜなら人間はいくつもの事柄を同時に見せられたとしても、「ひとつの像」としてイメージを受け取り、その後で要素を把握していくからです。ロゴマークの担う役割の大部分は、目にした瞬間に情報を認識してもらうこと。そう考えた時、ロゴデザインを構成する要素は整理され簡潔であることが絶対条件となります。

その中で多くのイメージを伝えることは非常にテクニカルで至難の業と言えるでしょう。情報量は最低限に絞り、色やフォントをコントロールすることで、伝えたいイメージを潜在意識に訴えかけたり、デザイントレンドを盛り込むことで時代性を感じさせたり。デザイナーたちは飽くなき挑戦を繰り返し、一つではない正解を求め続けます。ロゴデザインの在り方自体が、時代に合わせ様々な形態に変容しつつあるのもその結果の一つなのかもしれません。

 

1.イラストで具体的なイメージを伝える

ブランドの業態や商品のイメージを、デフォルメの効いたイラストとしてロゴデザインに落とし込むパターンです。シンボルというレベルまでは簡略化しておらず、ある程度の具体性をもたせたまま仕上げているので、見る側もイメージを正確にとらえ、想像を膨らますことができます。

看板やグッズ展開などには適していますが、名刺、ショップカードなど縮小した時にも耐えうる形であるかどうか気を配る必要があります。

グリルバーのロゴ

このロゴはイタリアにあるグリルバーのものです。お店で提供している食材を合体して一つのイラストとして表現しています。見てとれるだけでも「牛」「魚」「野菜」でしょうか。まるでギリシャ神話に出てくる獣神のようでもあります。多くの要素を内包しているにも関わらず、一つのイラストとして完成され、インパクトを与えながらも業態をストレートに伝えることに成功しているロゴです。食欲を喚起する暖色系でまとめ、全体に施されたかすれ加工がハンドメイド感をプラスし、厨房で素材が調理される様を想像させます。

 

ロシアのバーのロゴ

こちらはロシアのエクストリームバーのロゴデザインです。店名は訳すと「奈落の底」。英語では「abyss(深淵)」。日本語でも「底知れぬ深い場所」という意味があります。イラストの割れたボトルは「底なし」。まるでジョークのようですがウィットに富んだユニークなロゴです。また、この割れ方から見てとれる通り「bottle」と「battle」をかけており、エネルギッシュなバーであることが想像できます。日本人的な感覚でいくと危険きわまりない感じがしますが、洒落の効いたブランド戦略であり、現地ではホットな場所なのでしょう。

ロゴをラベルに活用

ロゴをグッズに活用

また、イラストをアレンジし擬人化させたTシャツやボトルラベルなども提案されており、イラストを用いたロゴデザインならではのビジュアル展開の一つです。

 

次に紹介するのは歯科医のロゴです。

ロシアの歯科医のロゴ

エンブレムの様な雰囲気の飾り罫の中で、笑みをたたえる紳士のイラスト。安定した構図、程よく恰幅の良い輪郭からは富と信頼、自信を感じさせます。首もとで存在感を放つ、歯を象ったチャームは少々ユニークでありながら業態そのものを表しロゴ全体の主役ともとれます。

ロゴの原案

最初の似顔絵から出発したイラストは不要な部分をそぎ落とし、試行錯誤しながら、信頼足るべき存在にするべく表情や体型を修正し、最後に線の太さの調整や影などを付け足しアンティークな仕上がりへと着地しています。

ロゴの展開事例

屋号の「Dr.nebolit」は英語で「Dr.does not hurt」=「痛くない先生」 非常にユニークなネーミングです。実在するか否かは別の話ですが、痛くない先生の具象化という命題においてこのロゴマークは素晴らしく成功していると言えます。

 

2.名称の頭文字とブランドイメージを重ねてデザインする

名称の先頭にくる文字をデザイン化しシンボルとしてロゴマークにする手法。シンプルな手法ながら、文字をどう見立てデザインするかは料理のように奥深く、デザイナーの手腕が問われます。文字とイメージとをどこまでリンクさせられるかが勝負です。また、ブランド名の2文字(または3文字程度)のイニシャルを組み合わせてロゴマークをデザインすることをモノグラムと言います。

ルイヴィトン(LとVの組み合わせ)やニューヨークヤンキース(NとYの組み合わせ)などに代表される古くからある手法ですが、近年人気が再燃しています。

 

工業系の企業ロゴ

工業系のプロジェクトを担う企業のロゴマークです。中心のグリーンで塗られた円の中に頭文字「A」が存在しています。その「A」から4本の線が分岐し、まるで脳のシナプスのように分岐・結合を繰り返して裾野に広がっています。産業においてブレーンの役割を果たすこの企業のポジションを表す良いシンボルマークとなっています。また、ここ数年ロゴデザインのトレンドとなっているモノライン(均一の太さの一本線)を使い、今らしさを体現しつつ時間が経過しても廃れない普遍的な広がりをもつデザインに仕上げています。

 

同じくモノラインで構成されるロゴデザインの例をここで2つ紹介します。

工業会社のロゴ

ラップグループのロゴ

イーグルを象ったデザインはロシアの工業デザインの会社、下の獅子を象ったデザインはブルガリアのラップミュージックグループのロゴです。2例とも迷路のごとく複雑に走るモノラインで構成されています。上の例は力強いイーグルの心臓部にブランド名の頭文字が内包され、ぶれない理念と盤石な企業の力をアピールした上で繊細な物作りの精神も伝えています。

重厚感のあるマーク

下の例では、獅子であると同時にエンブレムの形にもなっており、ラップミュージックという伝統とは遠いところにあるカルチャーでありながら、獅子と紋章という古典的なモチーフを採用することで、一般的なストリート風のデザインとは一線を画す存在感を放っています。2例とも力強いモチーフを緻密な方法で描き出すことにより、相反するイメージを同時に発信することに成功しています。

 

医療機関のロゴ

こちらはロシアの医療機関のロゴマークです。施設名の頭文字をシンボライズしマークにしています。モチーフは百合の花。百合の花は聖母マリアに捧げられた花として知られ、純粋・無垢・威厳という花言葉を持ちます。また、下部の絡み合う明るいブルーのラインは色彩的には安心・平和・清潔感を指し、医療というテーマにしっくりと馴染みます。

神秘的なモチーフ
また、絡み合う様は世界的にも医療のシンボルとして認知されているアスクレピオスの杖(神話で語られている名医が持つ蛇が絡み付く杖)を思い出させます。全体にやさしく、包み込むような柔らかなイメージを持たせるロゴデザインは医療系のロゴとしてとても好ましいものと言えそうです。

 

Wi-FiモチーフのIT企業のロゴ

Mに加えて、一目でわかるあのモチーフ(Wi-Fi)をあしらったIT企業のロゴマーク。Wi-Fiはもはや世界的なアイコンですから、オンライン環境のある国でならどこの国でも認識されることでしょう。落ち着いたブルーグリーンのカラーリングは、先進性を感じさせながらも知的で安定感のあるイメージを抱かせます。ブランド名の頭文字が下支えとなりその中心から発信されていく見せ方は、多くを語らずとも企業の姿勢を伝えるに十分なロゴデザインです。

 

悪魔をモチーフにしたバーのロゴ

これは「hardcore bar E-Evil」というbarを想定して作られたロゴデザインです。名の通り「悪」そして「悪魔」「地獄」をモチーフに頭文字をシンボライズしています。悪魔が持つとされている「トライデント(和名:三叉槍)」を「E」の形と重ね、荒々しく圧し折るその勢いごとデザインの中に集約しています。また、メインカラーが「黒」ではなく「赤」であることが酒場の持つエネルギーを感じさせ、陰鬱な印象になりがちなテーマをことごとく力強さに変換しています。

 

立体的モノグラム

このロゴは工具専門店ブランド2文字のイニシャル(T・M)を組み合わせてデザインしたロゴマークです。まるで硬質のパイプでつなぎ合わせたような質感をフラットにデザインし、上質なツール(工具)をシンボルとしてモノグラムを完成させています。レッドとブラックの配色は、アクティブでエネルギッシュ、同時にプロフェッショナルな印象を与えます。
また、平面的になりがちなモノグラムデザインを立体化した点は、既存のデザインへの挑戦にも見え、意欲的な制作例だと感じました。

 

3.ロゴタイプそのものに意味を持たせる

ロゴデザインの中心となるのがブランド名を直接的に表す文字部分。すなわちロゴタイプです。このロゴタイプに一工夫凝らし特性を主張する事例を紹介いたします。

投資信託会社のロゴ

アメリカにある投資信託の企業ロゴです。株価の値動きを表すチャートのようにリズミカルに右上方へ上がっていくカンマ。右へ行くほどグラデーションで青みが濃くなっていきます。この右上がりの滑らかなカーブは取引で得られるベネフィットを想像させるでしょう。そして、ロゴタイプはまるでグラフの横軸の目盛りのように均整のとれたプロポーションで等間隔に並んでいます。これは常に動き続ける市場に対し、冷静かつ正確に対処する企業姿勢を示し、見る側に安心感を与えます。

 

インダストリーのロゴ

このロゴは階段状にステップアップしていくバーをキービジュアルにロゴタイプを見せています。全体をスクエアでまとめ、文字の集まりでありながら絵柄としての面白さを感じさせます。

備品にもブランディングを活かす

この企業は工業デザインの会社で、名刺やステーショナリーにもこの3つのカラーバーをモチーフに展開しています。シンプルなデザインの魅力は、その応用力と展開の柔軟性にあると言えるでしょう。企業の成長に合わせて、ロゴも柔軟に対応していくことが出来ます。

 

農産業と化学の企業ロゴ

ロゴタイプに絵柄を組み込み、業態を表しているロゴマークです。ポテトの品種改良など農産業を主軸とする企業で、頭文字の背景にあるのは試験管、文字と培養種をだぶらせて表現しています。コーポレートカラーになっているライトグリーンとイエローは緑生と実りをあらわし、ロゴタイプは知性と勤勉さを感じさせるセリフ体。企業の姿勢と業務内容をうまく伝えるデザインです。

企業ブース

ノベリティ

企業ブースやノベリティなども提案されており、ビジュアルとコーポレートカラーをうまく活用し、企業全体のブランディングが統一されています。

 

4.ロゴから展開するブランドの世界観

ロゴマークはCI(コーポレート・アイデンティティ)を表す看板とも言える存在。そのロゴから派生して作られていくグラフィックツールは自ずとブランドの世界観を広げ、より多くのイメージを見る側に与えます。

建築エキスパートのロゴ

このロゴマークは建築関係の革新的な専門家グループのロゴです。名称の頭文字2文字を中心に、未来の建物のようなロケットを描いたロゴマーク。真っ直ぐ上空を目指す勢いのある図案です。このロゴマークから派生するグラフィックツールは、ロゴという枠を飛び越え、未来を語るに相応しい自由で遊び心溢れるデザインで展開されています。

企業ロゴの展開例2

企業ロゴの展開例

業態を知らずとも、このビジュアルを見るだけでワクワクしますね。何か面白いことをしてくれそうだ!という期待感を与えるデザインと言えるでしょう。

 

最後に紹介するのはフードビジネスを展開するロシアの企業ロゴです。

フードビジネス企業のロゴ

4つそれぞれの食材を象徴するカラフルな図柄を繋ぎ合わせ一つの企業ロゴを形作っています。

分解して利用できるロゴ

ここから展開するグラフィックツールは、これら4つのマークをそれぞれ独立させて使用することができ、また4色のカラーをVI(ビジュアル・アイデンティティ)の要として機能させることで、ロゴだけに頼らないよりグローバルなイメージ展開を可能にしています。

食べ物の色と連動

ロゴでラッピング

ロゴで社用車もインパクト抜群のラッピングを施されています。柔軟に活用できるのは、このマークの魅力と言えるでしょう。

 

Ivan Voznyakさんの作品は、CIを色・書体・イラストを用い、さらにデザイントレンドにも配慮し表現した秀逸なロゴデザインばかりでした。

百聞は一見に如かず。ロゴマークが運ぶイメージは、思ったより多くの情報を伝えているのではないでしょうか。企業の社会的な関わりをコントロールするCIの中で、中核的な役割を果たすVI。そしてその中でも心臓のような働きをするのがロゴデザインと言えるでしょう。オンライン環境の発達により企業と社会のコミュニケーションは、より複雑により近く、そしてより多様化しています。これらの変革に柔軟に対応し生き延びていくためには、最初の接点となる企業の顔「ロゴデザイン」をしっかりと設定し、それを駆使した戦略が必要となります。これからの発展を望むなら、まずはロゴを作ることからはじめてはいかがでしょうか

 

Designer : Ivan Voznyak (Russia)

・この記事は制作者に許諾を得て掲載しています。


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