パリ五輪2024のエンブレムが発表 – 金メダル・聖火・マリアンヌを統合したデザインに

2019年10月21日(現地時間)に東京2020の次の夏季オリンピックであるパリ大会のエンブレムが公開されました。エンブレム発表セレモニーの会場はパリの巨大映画館ル・グラン・レックスです。発表前に、700人を超えるアスリートや市民ランナー、車椅子ランナー、サイクリスト、スケートボーダーがセレモニー会場をスタートして目的地へ向かうというイベントがおこなわれました。

参加者は20のチームに分かれてそれぞれの目的地に向かって夜のパリ市街地を放射状に走ります。大スクリーンに映されたパリ市街図にGPSを介して各チームの位置がドットとして表示されました。全チームがそれぞれの目的地へ到着するとカウントダウンが始まり、力強い音楽をBGMにしてスクリーン上のドットが「点つなぎ絵」ようにゆっくりとつながれていきます。

そしてパリ2024のエンブレムが出現すると会場は大きな歓声に包まれました。

 

3つの象徴を統合したエンブレム

 

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パリオリンピック組織委員会は、3つの象徴をひとつにまとめたエンブレムであると説明しています。スポーツの象徴「金メダル」、オリンピックとパラリンピックの象徴である「聖火」、そしてフランス共和国の象徴である「マリアンヌ」です。金メダルの円の中に、聖火がネガティブスペースで描かれ、さらに聖火の炎の下部に唇を配置することで、ネガティブスペースが女性の顔に、金メダルのエリアが髪の毛となります。3つの象徴を3つの要素で簡潔に表現したシンボルです。

 

アール・デコにインスパイアされたデザイン

シンボルマークとワードロゴはシンプルかつ独特の曲線で構成されています。パリ2024の公式サイトでは、アール・デコ時代を含む過去のフォントを参考にして新しいフォントが創造されたことがごく簡単に示されています。サイトには以下のような記述があります。

「エンブレムと書体は、初めての総合的な芸術運動であり、1924年開催の前回のパリ大会でピークに達したアール・デコ運動にインスピレーションを得ました」

サイトの見出しコピーをよく見るとアール・デコのフランス語「art deco」ではなく「art d’eco」と綴られています。発音は同じくアール・デコですが意味は「エコ芸術」とでも訳せるでしょうか。パリ2024のコンセプトのひとつには「環境責任を果たす大会」というものがあり、炭素排出量を2012年のロンドン大会よりも55%削減すること、再生可能エネルギー使用率100%などを目指すとしています。

 

「Paris2024」のロゴに用いられているバリアブルフォント

ワードロゴに使われているフォントはフルセットが準備され「Paris2024」と名付けられました。

Hairline(ヘアライン)からBlack(ブラック)まで7つのウェイトが準備されています。パリ2024公式サイトにはちょっとしたインタラクティブな仕掛けがあり、パソコンのキーボードで任意のキーを打つとParis2024フォントでどう見えるかが確認できます(ウェイトはランダム)。スマートフォンやタブレットではタップするごとに文字がランダムに表示されます。フォントを利用したりやガイドラインが欲しい場合はサイトからリクエストのメールを送る必要があります。

 

フランス共和国の象徴「マリアンヌ」

民衆を導く自由の女神

フランスの代表的な画家ドラクロワ(Eugène Delacroix)に「民衆を導く自由の女神」(1830年)という有名な作品があります。パリ2024エンブレムのセレモニー会場や紹介動画にも登場します。

日本では「女神」という訳が定着していますが、原題は「La Liberté guidant le peuple」(民衆を導く自由)という意味で、描かれている女性は「自由の象徴」であり、ギリシャ神話などに登場するいわゆる女神ではありません。実在の人物でもありません。この女性は「マリアンヌ」と呼ばれています。マリアンヌはフランス共和国を擬人化した女性の名前です。マリアンヌはフランス政府のロゴやコイン、切手などでも使われています。

1900年の第2回オリンピック大会が開催されたのもパリです。この大会で初めて女子アスリート(ゴルフとテニス)が参加しました。パリ2024のエンブレムに女性の顔が起用されたのは、このパリ五輪の歴史にちなんで女子アスリートへの敬意の表れでもあります。

 

初めての共通エンブレムデザイン

 

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新しいシンボルマークである「マリアンヌ」とワードロゴ「Paris 2024」は、オリンピックとパラリンピックで共通のものとなります。違いは五輪マークとパラリンピックシンボルだけです。これはオリンピック史上初めてのことです。

 

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たとえば2020年東京大会の市松模様のシンボルはオリンピックとパラリンピックではデザインが異なっています。また、パラリンピックのエンブレムには「Paralympic Games」という文字がワードロゴに添えられています。東京オリンピックに限らず、リオ、ロンドン、北京でも同じでした。

「オリンピックとパラリンピックは2つでひとつのプロジェクトを表しています。ひとつのエンブレム、そしてスポーツが人生を変えるという共通のビジョンによって象徴されるプロジェクトです」(パリ2024組織委員会サイトより)

 

パラリンピック

パラリンピックについて

パラリンピックとオリンピックはそれぞれ起源の異なる別々の競技大会でした。

「パラリンピック」が正式名称になったのは1988年のソウル大会からで、夏季オリンピックと夏季パラリンピックが同じ都市で開催されるようになったのもこの年からです。冬季大会が同じ開催地になったのは1992年のアルベールビル大会(フランス)以降です。2000年にオリンピック開催国がパラリンピックを続けて開催することが決まり、2001年には国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)が連携を強化することで合意しました。そして2008年北京大会および2010年バンクーバー大会以降は、IOCがIPCを支援するとともに、組織委員会がオリンピック組織委員会に統合されました。

 

ダイバーシティとインクルージョン

公式サイトでエンブレム自身が自らの意味を説明する動画を見ることができます。「私はパリ2024のエンブレムです。これがわたしの顔です」という言葉ではじまるエンブレムの声は男性のものです。マリアンヌはエンブレムに込められた3つの象徴のひとつであり、シンボルマーク=マリアンヌではありません。女性の声で自己紹介をしてしまうとシンボルマークからマリアンヌしか見えてこなくなるおそれがあるためにあえて男性の声にしたのでしょうか。

おそらくそうかもしれませんが、その動画を見たときに「インクルーシブ」あるいは「ダイバーシティ」という言葉を思い浮かべる人もいるのではないかと思います。実際、東京2020組織委員会も「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を東京2020大会成功の原動力として、大会計画・運営準備を進めています」と公式サイトで表明しています。

また、パリがオリンピック・パラリンピックを誘致した際には、パリ大会を「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)を加速する装置として計画する」としていました。パリ2024のエンブレムがオリンピック・パラリンピック共通であることの裏にも「インクルージョン」の考え方があるかもしれません。インクルーシブ・デザインという言葉も珍しくはなくなってきています。東京2020、パリ2024をそういう視点で見るのも意義のあることではないでしょうか。

 

過去のエンブレムデザイン

2024年パリ大会のように、聖火をモチーフにしたものは1996年のアトランタオリンピックまで遡る必要があります。

アトランタオリンピックのロゴ

アトランタオリンピックは近代オリンピック開催100周年を記念する大会でした。また、もうひとつのモチーフである顔の採用は、少なくとも前回のパリ大会が開催された1924年以降は初めてのようです。

 

オリンピックのピクトグラム

オリンピックといえば、グラフィックデザインの視点からは、ピクトグラムによるサインシステムも関心の対象となります。言葉の壁を超えるために、1964年の東京オリンピックで初めて全面的に導入されました。

それを踏襲しながら緻密なグリッドに基づいてさらにシステマチックに構築したのがオトル・アイヒャー(Otl Aicher)です。アイヒャーは、1972年のミュンヘンオリンピックのアイデンティティ作りを牽引したグラフィックデザイナーです。

ミュンヘンオリンピックのピクトグラム

ミュンヘンオリンピックのプロジェクトでは、とりわけピクトグラムシステムが高く評価され、それ以降のオリンピックピクトグラムの基準となりました。

2020年の東京オリンピックでは、これまでの考え方を踏襲しつつ、さらにアップデートされたピクトグラムが使用されることが2019年3月に発表されています。ちょっと気が早いですが、ユニークなエンブレムを掲げた2024年パリオリンピックではどのようにアレンジされるのか、フランスならではの思いがけないピクトグラムが開発されるのか、興味がそそられます。

 

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