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チョコレート

米M&M’sのロゴ・ブランドリニューアルで個性的なキャラクターたちがインクルーシブに進化

茶色いパッケージにカラフルな粒チョコが入った米M&M’s(エムアンドエムズ)が、1月にリブランディングを発表しました。消費者に大人気のマスコットキャラクターたちにもイメージチェンジがほどこされています。

M&M’sブランド製品を製造販売している米マース(Mars)社は、「だれもが自分の居場所だと感じられる世界を作り出すこと」がミッションであると宣言しました。

新しいミッションがブランディングにどう反映されているのか、テレビCMやプロモーション動画でコミカルに活躍するユニークなキャラクターがどのように変わったのか、を見てみましょう。

 

多様性とつながりをダイナミックに表現する動画




「For All Funkind」と題されたM&M’sの動画が公開されています。「funkind」(ファンカインド)は、人類という意味の「mankind」(マンカインド)をもじった造語です。楽しみを求めるすべてのひとびとへ、といった意味合いでしょう。だれもが楽しめる世界を目指す姿勢が込められています。

M&M’sのレンズの形状をしたチョコレートは「チョコレートキャンディ」と呼ばれています。動画の最初に登場するのは、M&M’sの元祖的チョコレートキャンディであるミルクチョコレートM&Mです。くるりと反転しながら、レッドからブラウン、ブルー、グリーンと色が変わっていきます。そして、チョコレート色の文字で表示されるのが、つぎのメッセージです。

「だれもが自分の居場所だと感じられる世界を作ろう」

そのときミルクチョコレートと一緒に姿を見せているのは、ピーナッツ、アーモンド、クリスピー、クランチークッキー、チョコレートといった、多様な色と形をした代表的なチョコレートキャンディの粒です。生きているかのように、仲良く身を寄せ合っています。

次に、アイコン化したカラフルなチョコレートキャンディが水玉模様のように整列すると、その下に同じようにならんでいるのが「&」(アンパサンド)です。キャンディのアイコンはピンボールのように落ちていきます。そして、ふたつめのメッセージが登場します。

「ワン・フォー・オール&オール・フォー・ファン」

オール・フォー・ワンではなく、オール・フォー・「ファン(fun)」です。極太の「&」に注目してください。

先ほどは、チョコレートキャンディが集合していましたが、今度は、そのキャンディをモデルにしたマスコットキャラクターたちが勢揃いします。

続いて、アイコン化されたキャンディが動き出すと、カラフルなアニメーショングラフィクスが展開します。「どなたでも歓迎します」というメッセージとともに紹介されているは、2021年にベルリンにオープンしたテーマショップ「M&M’s Store」です。

ふたたびキャラクターたちが登場します。白い「&」が彼らをつないでいきます。ロゴマークの「m」が出現すると、同じく「&」でつながっています。キャラクターのときととは逆に、「&」がカラフルになっています。

「m&m&m&m ……」と連なっていたものが、今度は「you & me & us & everyone(あなた&わたし&わたしたち&みんな)」に変わり、さらに、それがさまざまな言語で表示されます。次のメッセージで動画は終わります。

「M&M’s - すべてのファンカインドのために(For All Funkind)」

 

「&」はインクルージョンの象徴

M&M’s チョコレート

・M&M’s チョコレート / Oleksandr – stock.adobe.com

M&M’s – JKRGlobal – JKRGlobal
https://jkrglobal.com/case-studies/mms/

多様な個性を認め合い、だれもが受け入れられる世界。それがインクルーシブな社会です。特定のひとやグループをのけ者にせず、自分の居場所がないとはだれにも感じさせないような社会。それを実現するために世界規模で取り組むことを、M&M’sは発表しました。

あらゆるひとびとにカラフルな「Fun(ワクワク)」を提供することが、M&M’sブランドの長年のパーパス(存在意義)でした。マース社は次のようにコメントしています。

「ハッピーな瞬間を持つ権利はだれにでもあり、ここが自分の居場所だと感じられるためには、ワクワクがもっとも強力な方法なのです」

そして、先に紹介した動画の紹介文には次のように書かれています。

「だれもが自分の居場所だと感じられる世界をつくるために、ワクワクすること(Fun)の力を信じています。力を合わせれば、ワクワクを求めるすべてのひとびとが、自分の居場所だと思える世界を実現できます」

今回のリブランディングのビジュアルアイデンティティを手がけた、ロンドンの広告スタジオJones Knowles Ritchie(JKR)は、ひとびとの結びつきを、ブランド名にも含まれている「&」でシンボライズしました。JKRのデザインチームは次のように説明しています。

「わたしたちはまずアンパサンド(&)から始めました。これはそもそも、創業者のふたり、フォレスト・マース(Forrest Mars)とブルース・マリー(Bruce Murrie)の名前をつなぐためにデザインされた、一体感を象徴する記号なのです」

つまり、インクルーシブな一体感の象徴として、「&」のパレードが動画をとおして繰り広げられているのです。カラフルなチョコレートキャンディも多様性を表現しています。

ブランドロゴのリニューアル

新しいロゴ

2004年~2018年までのロゴ(日本では現在もこのバージョン)

M&M'sの旧ロゴ

・M&M’sの旧ロゴ / mehaniq41 – stock.adobe.com

2004年から2018年まで使われていたロゴは、現在店頭にならんでいるパッケージに印刷されているものと同じデザインです。日本の公式サイトでは、まだこちらが使われています。全体に白いふちどりが付けられていて、「m」をできるだけ隠さないように、アンパサンドのサイズが控えめです。

2019年のロゴデザインのリニューアルで、ふたつの小文字「m」をつないでいる「&」が強調されました。ふちどりは取り去られ、ミニマルな方向にリデザインされています。グラデーションもなくなりました。

2004年のリニューアルのとき、ロゴは右上がりに少し傾けられていて、2019年のリニューアルでもそのままでした。それが今回のリブランディングで水平になりました。これは、「&」を少しでも強く印象づけるための工夫だということです。

インキトラップで「ワクワク」を伝えるカスタム書体

あらたにカスタム書体も作られました。動画中のメッセージに使われているのも、この新しい「All Together」と名付けられたセリフ書体です。書体名は、みんな一緒に、といった意味です。

独特の丸みを持ったデザインで、M&M’sの目ざす「ワクワク」にマッチしています。たとえば小文字の「e」は、笑っているようです。ほかにも「g」や「p」は、20世紀中ごろのアニメ映画のキャラクターのような目でこちらを見ています。「a」「b」「r」などもそう見えるかもしれません。

このように、表情のように見えたり、やわらかい印象を感じさせる効果を生んでいるのは、「インキトラップ(ink trap)」という書体デザインのテクニックです。日本では、「スミトリ」「スミキリ」と言われています。

新聞や電話帳など、紙質が良いとは言えない媒体に、小さいポイントで印刷すると、ストロークが交差する部分のインキが広がって、にじんだり、つぶれたりすることがありました。これは交差部分のインキ量が多くなってしまうのが原因です。文字のその箇所に小さな切り込みを入れることによって、このインキの染み出しを減らす工夫が、インキトラップです。

インキトラップ

Illustration of the typeface Bell centennial’s ink traps, Jim Hood  (CC BY-SA 2.5)

インキトラップを採用した書体として、マシュー・カーター(Matthew Carter)氏が、電話会社AT&Tに依頼されて1978年にデザインした「Bell Centennial(ベル・センテニアル)」が有名です。電話帳に6ポイントで印刷してもはっきり読めるサンセリフ書体です。

時代が進むにつれて紙質や印刷技術が向上したため、インキトラップは必要でなくなりました。デジタル機器のスクリーン表示用フォントには、もちろん不要です。小さな文字を印刷するための工夫だったのですが、文字を大きくすると、インキトラップが視覚的におもしろい、ということで、インキトラップからインスピレーションを得て、ディスプレイ用デジタルフォントやロゴをデザインするクリエイターが現在もいます。

M&M’sのカスタム書体「All Together」は、このインキトラップを応用することでユニークなデザインとなりました。これに加えて、「g」や「p」などのカウンター(閉じられた空間)の位置をうまく調整することでも、独特の表情が作り出されています。

 

スポークスキャンディたちの靴が変わった

M&M’sのマスコットキャラクターは、「スポークスキャンディ」と呼ばれています。スポークスパーソン(代弁者)をもじった造語です。製品であるチョコレートキャンディを擬人化したスポークスキャンディは、米国では現在、6人(6個?)が活躍しています。

最古参のレッドとイエローに、あとから加わったブルー、グリーン、オレンジ、そして日本では紹介されていないブラウンです。製品のイメージも考慮した色なので、当然ながら、日本の戦隊モノの色分けとは少し違いますね。

今回のリニューアルで、スポークスキャンディたちの見た目も変わりました。とはいうものの、リニューアル前後の姿を並べて、よく見比べないと違いがわかりません。

リニューアル以前のスポークスキャンディの手足の色は全員ほぼ同じでした。新しいデザインでは、それぞれがキャンディのコーティングの色味を帯びています。多様性を考慮に入れたアップデートです。

また、スポークスキャンディたちの靴も変更されました。グリーンはゴーゴーブーツからスニーカーに履きかえています。ブラウンは、ピンヒールから低めのブロックヒールに履きかえました。ブラウンのかけているメガネのデザインも変わっています。

レッドとイエローの靴は、ひも無しのものから、それぞれデザインの異なるひも付きのスニーカーに変わっています。ひもを結んでなかったオレンジは、リニューアル後はちゃんと結んでいます。

スポークスキャンディたちが、現在の消費者の代表となるように、キャラクターデザインをアップデートしたのだと、マース社は説明しています。

「靴の変更はささいなことかもしれませんが、確実に気付いてもらえるヒントになっています」

手足の色や靴の変更は、個性を強調して、多様性を表現するための手直しなのです。

スポークスキャンディの変遷

靴を履きかえたことと、その理由はわかりました。しかし、わざわざ衣装替えするほど、スポークスキャンディに影響力はあるのでしょうか。

「お口でとろけて、手にとけない」




砂糖でコーティングされているので、日中の屋外でもとけない、というのが、M&M’sのセールスポイントです。M&M’sは、いまから80年前の1941年に生まれました。

「太陽の下でベストのチョコレートはなんでしょう?」というセリフで始まる、1962年放映のCMがあります。溶けてベトベトになる一般的なチョコレートバーと比較して、M&M’sはどこで食べてもチョコレートで汚れることはない、とアピールしています。

キャッチフレーズは「お口でとろけて、手にとけない(Melts in your mouth, not in your hands)」。チョコレートキャンディを口に運んだ手のひらが汚れていないことを見せるのがお決まりのポーズです。

その理由を説明するのがスポークスキャンディのふたりです。砂糖コーティングのおかげで手が汚れないと、体を張って説明しています。ミルクチョコレートのレッドとピーナッツのイエローは、1960年にスポークスキャンディとして登場しました。

キャラクターデザインの変容

[1991年のテレビCM](過去のCMを見ている現代のスポークスキャンディたち)

1991 M & M’s “Home movies, a handful of smiles” TV Commercial




[1995年のテレビCM]

M&M’s – Blue Blue Blue (1995, USA)




過去のテレビCMを楽しんでいる4人のスポークスキャンディが登場する1991年のテレビCMには、レッドとイエローに加えてグリーンとオレンジも登場しています。現在のスポークスキャンディの外観に近づいてきました。しかし、このグリーンとオレンジは、現在のキャラクターとは設定は違っているようです。

1962年のCMや1991年のCMに登場しているセルアニメのキャラクターは、いずれも現在のスポークスキャンディとは外観も雰囲気も異なります。CMのトーンもほのぼのとしています。

ブルーの登場は1995年です。ブルー誕生を告知するCMを見ると、スポークスキャンディたちはCGで描かれています。外観と言動が、ようやく現在のキャラクターと共通のものになったことがわかります。強い個性が与えられ、CMもコミカルなストーリー仕立てになっています。

スポークスキャンディたちは、少なくとも米国市場では古くからテレビCMに登場し、多くの消費者に広く認知されてきたことが想像できます。

 

6人6様のキャラ設定

M&M'sのキャラクター

ehrlif – stock.adobe.com

1995年に広告代理店BBDO社によって、現在まで続くスポークスキャンディたちのキャラクター設定がおこなわれました。レッドは皮肉屋、イエローは天然、ブルーは冷静な自信家です。

そして、グリーンが1997年、オレンジが1999年にスポークスキャンディのメンバーに加わります。ブラウンが2012年のスーパーボウルのCMでデビューして、6人が揃いました。

グリーンはセクシーなセレブという設定で、ときにはゴーゴーブーツをピンヒールに履きかえて、ひとびとを悩殺するマドンナです。オレンジは「みんなが自分を食べようとしている」と常に病的におびえています。ふたりめの女性として最後に加わったブラウンは、洗練された知性を持つ冷静なキャラクターです。

1995年以降のテレビCMを見ると、スポークスキャンディたちは、単なるマスコットではなく、強烈な個性を放つスタープレイヤー集団に成長したと言ってよいでしょう。

2022年のキャラクターはどう進化したのか




リニューアルで、スポークスキャンディが靴を履きかえたことを紹介しましたが、グリーンの衣装替えについてマース社は次のように説明しています。

「くつろぎを感じさせるクールなスニーカーは、彼女の気負いのない自信を反映しているのです」

つまり、ゴーゴーブーツをはいて、まわりの視線を意識しながら、魅力にあふれた女性としてふるまうのをやめて、肩の力をぬきながらも自信に満ちている、というふうに内面が変わったのです。

ほかのスポークスキャンディたちも、1995年に設定されたキャラクターに新たな面が追加されています。イエローをまっぷたつに切断するなど、ほかのスポークスキャンディたちに対して傍若無人だったレッドは、やさしくなりました。グリーンとブラウンの関係も以前よりフレンドリーになっています。マース社によると、2022年のイエローには、オプティミスティックな面も見えてくるだろうということです。

心配性のオレンジは、本当の自分を受け入れられるようになりました。マース社によると、オレンジのこの変化が、メンタルヘルスやウェルビーイングについてひとびとがもっと対話できるよう助けるのだということです。

2022年のリニューアル後はじめてとなるプロモーション動画『オフィス・パーティー』編には、M&M’sの目指す一体感やインクルーシブなメッセージが込められています。

オフィスで同僚たちがちょっとしたパーティーを開いているときに、ひとりで仕事を続けるジャックを見て、仲間に入れましょうと提案するのはグリーンです。お色気たっぷりだった以前のグリーンとは、声質も態度も違っています。みんなと違う装いの、パントマイマーのようなジャックは、多様性を象徴していると考えられます。

認知度が高く個性的だからこそのリニューアル

M&Mのスポークスキャンディたちが、インクルーシブの実現やダイバーシティの広がりを受けて、外観や性格を微調整する必要があったのは、もともと強い個性を持っているキャラクターで、それが数世代にわたって消費者に広く深く浸透していたからではないでしょうか。

 


【参考資料】
M&M’s – JKRGlobal – JKRGlobal (https://jkrglobal.com/case-studies/mms/)

M&M’s reveals global redesign alongside new brand purpose (https://www.creativereview.co.uk/mms-redesign-jkr/)

※公式WEBサイト情報もあわせてご確認ください。



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