Skip links

著作権が私たちの未来に与える影響について – TEDx re-cut




TEDxブカレストの講演より 「著作権が私たちの未来に与える影響について」のプレゼンテーションを翻訳して紹介しています。※以下翻訳内容です。

こんにちは、私はヤーナです。僕は、アレックスです。

今日、僕たちがお話しするのは「著作権」と呼ばれるものについてです。

これは、あるものの範囲や目的を拡大させるための一連の法律であり、私たちの知るところの「文化の終わり」をもたらす可能性のある一連の法律です。

それでは、まず3つの短いお話から始めたいと思います。

あなたがEメールに返信しようとして「返信」をクリックし、受け取ったメールの送り主の文面を返信するあなたのメールにコピーします。ちょっと待って!作者の許可を取ってませんよね。ここで発生しているのが、無許可の著作権です。

電話中にバート・シンプソンのいたずら書きをしたとします。そうするとそれは “作者の許可なく二次創作物を作った” ということになります。

また、例えばトムとジェリーのタトゥーを入れているのであれば、 “著作権作品の無許可の複製そして無許可の公表” に値する可能性もあります。

つまり、今お話ししたことは全て「違法」ということです。例えばビールを飲んで楽しんでいても、もし18歳以下だったとしたら、それは違法です。それと同じように、著作権侵害の罪で何十万ユーロもの賠償を求め訴えられる可能性があるのです。

あなたは海賊みたいなものなのです。というのも、過度に厳しい著作権法があるからです。現状はどうにも厄介で困難な状況にあります。どのように今日のような状況が可能になってしまったのかを理解しようとした方がいいのかもしれません。

 

− これは今劇場公開中の映画のDVDで、しかも無料なんだ。

− 無料なの?

− そう、無料。正直にいうと、これは違法にダウンロードしたものなんだ。でも無料だよ。

− そうなんだ、わかった。もらっていくよ。

− 2枚もらってもいい?

− どうぞ。ただひとつ難点というか問題があるんだ。もしこのDVDをあなたが持っていってしまうと、ここにいるこの素敵な女性が仕事を失ってしまうんです。

− この人のこと知らないからね。

− このDVDは、違法にダウンロードされたものだから、彼女みたいな人たちが仕事を失ってしまうんだ。

− 実際にそんなことが起きるの?

− そうだよ、こういうことの結果としてね。

− もらっていくよ。

− もらっていく?

− ああ

− どうして?心がないから?

 

さて、著作権か心をなくすか…。これは、あなたにとっても納得させられる議論でしょう。ここで取り上げられているのは、アーティストやその作品・仕事などを守る道徳的義務としての著作権、そして金銭的インセンティブがあるがゆえの一種の財産としての著作権、そして全てのコピーに対する排他的制御権としての著作権です。

というのも、著作権なしにアーティストたちはどのように生計を立てればいいのか? ということになります。確かに同意せざるを得ない議論ともいえます。しかしながら、あなたはいたずら書きのバート・シンプソンが原因で訴えられてしまうのです。

「財産」とは無限で、永遠に所有することができます。それは不可侵で、誰も侵害することができないものです。

一方で「著作権」は期限があり、さらに、同意なしにあらゆる方法で使用することができます。例えば、パロディや批評という形式です。つまり、著作権は、実際のところは権利や財産の一種ではなく、どちらかというと特権のようなものということです。

この特定の期限が過ぎると、あなたの作品は公有のものになります。つまりバート・シンプソンのいたずら書きをするように、誰もがその作品の一部分を使って、新しいものを作ることができるようになるということです。著作権の究極の目的は、公有物を豊かにすることです。より豊かな文化王国ともいえます。手短にいうと、著作権は限定された期間に効力のあるもので、財産ではなく特権であり、それは著者や作者だけではなく、世界全体がそこから利益を得るためのものということです。

まぁ、理論的にはそういうことですね。というのも、現実ではバートをいたずら書きして訴えられてしまうのですから。もうひとつ私たちが知っている変な例を挙げると…例えば、パリに行って、エッフェル塔を見て、そこからブリュッセルでアトミウムを見て、そういった観光名所で夜に写真をとると、著作権を侵害することになります。なぜなら、これらの名所の照明デザインが著作権で保護されているからです。

ある美術館では、第一次世界大戦時の手紙を展示することが許されませんでした。その手紙の多くは「オーファンワーク(Orphan work)」と呼ばれ、権利の所在が不明なものですが、法律により確か2038年まで保護されているからです。

このように、著作権ポリシーの問題は全てひとつの恐れに端を発しているのです。その恐れとは、新しい技術が現存のビジネスモデルを危機にさらし、脅し、そして破壊するかもしれないリスクです。

その解決策として、作者や配給者やプロデューサーに対してより厳しく制御・コントロールすることで、創作活動を続けられるようにするということになりました。つまり、創作のインセンティブとしてのコントロールに依存する産業が形成されたのです。

 

なんだかおかしな話ですよね。ここで、この議論を2つに分けて考えてみましょう。

まずひとつが、コントロール。どの世界のマネージャーでも過度のコントロールは悪いことだというでしょう。

公有物はコントロールができないものです。莫大なインスピレーションの源であり、誰しもが自由に手にすることができるものです。

ゾンビや吸血鬼が登場する素晴らしい物語がない世界を想像してみてください。そういった素晴らしい物語の95%、その中にはあなたが好きな話も入っているかもしれませんが、それらは、もしゾンビや吸血鬼が公有物ではなかったとしたら存在しなかったのです。

77年前、ウォルトディズニーが「白雪姫」を発表しました。もちろんオリジナルの物語ですが、グリム兄弟の物語を大きくベースにしています。

そして、このグリム兄弟の物語は公有物だったのです。しかし、ウォルトディズニーの映画は2036年まで著作権が有効です。つまり、現段階ではディズニーがグリム兄弟の物語をもとにしたように、この映画をもとに何かを作ることはできない…ということです。

 

“過度のコントロールは悪いこと”

現行の法律をもっと深く掘り下げてみましょう。著作権は、作者の存命期間とその後70年間有効(※国によって異なる)とされています。つまり、20世紀中に作られたほとんどの作品は現段階で著作権があるということになります。まるまる1世紀分の作品が該当しているということなんです。もしそれがどういうことかピンとこないようでしたら、こういう風に考えてみましょう。

映画史全体に残る作品のほとんどが著作権が有効です。

そして歴史に残るほとんど全ての録音された音楽もそうです。

つまり、これらすべてが失われた文化ということです。ここで考えてみてください。「ベースにする作品がない状態から新しい作品を生み出すうえで、著作権は本当に製作を促進することになるのか?」そして、「亡くなった作者が死後70年も自分の作品が著作権で守られているかどうかを気にするだろうか?」

公正に考えれば、作者は死後のことなんて気にしないでしょう。もう亡くなっているんですから。では、誰が気にするのでしょうか?それは、権利保有者です。その作品を所有し、金銭的な利益を手にする第三者が権利を保有しています。その個人もしくは組織の権利保有者がさらなるコントロールを執拗に求めているということです。

彼らにとって所有者がいない作品は悲劇であり、彼らにとって文化とは農地のようなもので、開拓してそこからお金を生み出すものなのです。もし何もしないなら無駄になるということです。考えてみてください。自分のバージョンの「ロードオブザリング」や「ゴッドファーザー」や「1984」を作れたらどんなに素晴らしいでしょうか。

もしジェームス・ボンドやインディージョーンズが公有物だとすれば、彼らが登場する自分独自の冒険物語を作ることができるでしょう。過度のコントロールは悪いことなんです。

 

2つ目は、「インセンティブ」です。必ずしも金銭の保証や製作におけるコントロールを必要としているわけではありません。企業が製作する作品のほとんどは純粋に金銭目的で作られており、そのような作品は保護する方法が必要です。モーツァルトやビートルズも人生のある一点では、実際金銭的な収入のために創作していたと思いますが。

現在、3億700万枚の著作権フリーの写真がFlickr(フリッカー)にあります。

1000万本の動画がYouTubeにあり、合計で8億8200万点のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの作品がオンラインで発表されています。

このように、新しく、安価な技術とインターネットの登場により、作品が呼吸できる場所が増えてきたのです。そしてその呼吸できる場所の出現により、革新性や創造性は、所有権がコントロールされ、道徳的な権利や金銭的なインセンティブがある場所よりも、もっとずっと面白い場所で生まれることがある…ということに気付かされたのです。

一部の産業は、実際コントロールを制限することで、想定されるいかなる障害や問題点よりも、多くの利点をもたらすのではないか?と気付き始めているのです。

アンドロイドとリナックスは、OSとサーバー市場のリーダー格企業で、双方とも著作権フリーです。

テスラモーターズは、電気自動車の市場リーダーですが、2015年に全ての特許を開放しました。コントロールの誓約や製作するための金銭など必要としていないのです。

というのも、オリジナルのジョークや香水、料理のレシピ、衣服デザイン、家具デザイン、車体デザインなどが “不足している” というわけではないからです。実際、このような産業では法による保護はほとんどない状態なのです。

 

しかし、総売上を見てみると、これが最も著作権の保護が厳しい書店における音楽の総売上で…

 

そしてこれが家具・ファッション・車・食品業界での総売上です。

この状態で、著作権のコントロールは創作のインセンティブになっているのでしょうか。もはやそんなことはないのです。50年とか100年前であれば確固たる議論とされていたのだと思いますが、現代では絶対的に意味がないことです。

 

では、アーティストの権利に対する道徳的義務という点ではどうでしょうか。すべてが自由に出回るようになるとすれば、作者はどのように生計を立てればいいのでしょうか?

簡単な答えを出すとすると、無料だからといって人々が作品に対して一切お金を払わないということではないということです。多くの映画製作者やミュージシャンといった文字通り作者と呼ばれる人たちが、自分の作品をインターネット上に無料視聴用としてアップロードしています。これは、寄付やチップ、そして最も重要なポイントとして、忠誠心のあるファンのためです。そのようなアーティストは、新しい技術を理解し、それを受け入れ、作品を楽しみ共有するというやり方を恐れていないということです。

そのようなアーティストは、できるだけ多くの人にあらゆる作品に触れてもらうことが良いことだということを理解しているのです。

どうやってお金を稼ぐのか…そうですね、創造的再利用(クリエイティブ・リユース)は実際作者にとってより多くの収益を生み始めているのです。印刷機が登場した時、カメラが登場した時や、CDが登場した時を考えてみてください。これら全ての新しい技術が、作者つまりアーティストにとって新しいチャンネル、新しい場所、新しいメディアを本質的に生み出し、作品をより多くの人、より広い視聴者層に広めることが可能になったのです。

海賊行為、つまり著作権侵害に関していうと、最大のファンの中に海賊が潜んでいるというのが実情です。数値にすると、一般のファンの約3倍の人数がコンサートに行き、Tシャツやポスターを購入しており、売り上げで見ると、海賊ファンは一般ファンよりもかなり多額を費やしていることがわかります。海賊ファンは、物販でもデジタル上でも双方で多くのお金を費やしているのです。

 

お金についてですが、インディゴーゴーやキックスターターといったクラウドファンディングのプラットフォームの登場により、作者がお金を稼ぐ方法が変容したと考えられます。

例えば、ミュージシャンは、アルバムをより安い値段で提供できるようになりましたが、個別の特典をつけることで購入を動機付けるのです。そのほかには、特別限定版パックを製作し、ファンが通常よりも高価でも購入するようにしたり、セット版を提供したり、すでにこういう販売方法を実践しているアーティストもいますが、作品そのものは無料で提供し、そこに追加として任意で寄付できるようなものをつけるというやり方があるのです。レベルの高い作品を提供し続ければ、このような方法で驚くほど稼ぐことができるものなのです。

人々は、無理強いしなければ自然とサポートしたくなるものなのです。

私たちを信用する必要はありません。アーティストのアマンダ・パーマーに聞いてみるといいでしょう。彼女は、最近120万ドルを彼女ひとりで稼ぎました。

これは私たちの猫の写真です。ここまで聞いてくれたのですから見る権利がありますよね。この写真も著作権フリーです。

著作権というのは、とても難しい問題です。特に全ての事実を正しく理解していないと、より難しい問題になります。そこで私たちはウェブシリーズを立ち上げ、これらの問題に取り組んでいます。神話のようなものの正体を明かし、全ての事実を明るみに出そうとしています。

これは始めたのは、こういった問題について討論することは非常に重要だと考えているからです。本当の意味での討論が必要で、そうすることで主唱者やロビーイスト・研究者を通り抜け、私や彼、みなさん、そしてバート・シンプソンのいたずら書きで訴えられてしまうかもしれない一般大衆にもしっかりと届くようになるでしょう。

私たちが立ち上げたウェブシリーズ「コピー・ミー」は、YouTubeやVimeo、そしてPirate Bayで観ることができます。共有して、ダウンロードして、リミックスして楽しんでください。

以上です。ありがとうございました。

 

参照リンク : How copyright affects our future (TEDx re-cut) – Copy-Me  (CC BY 3.0)
当記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons license / CC license)に基づいて編集しています。(記事内の画像・デザインや映像の権利は個別のライセンスにより保護されている場合があります。)

最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)




サイトへのお問い合わせ・依頼各種デザイン作成について


Home
ご依頼・お問い合わせ
Top