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優れたアーティストになるための効果的な7つの習慣について

優れたアーティストになるための効果的な7つの習慣




Blender カンファレンスより、Andrew Price 氏の素晴らしいプレゼンテーションを紹介します。「優れたアーティストになるための習慣」をまとめたものですが、私たちデザイナーは元よりあらゆる仕事においても非常に参考になる内容です。※以下翻訳内容です。

優れたアーティストになるための効果的な7つの習慣について

去年、僕は年下のいとこと1000ドルの賭けをしました。普通であれば、兄弟間で賭けをするのであれば、何か面白いことに賭けるものです。バイクで後ろ回転するとか…そういった狂った遊びのようなものとか。でも僕の場合は、純粋な芸術でした。

その賭けとは、 “ArtStation(ポートフォリオサイト)上で、僕が苦手な平面絵画やイラスト作品に6ヶ月以内に1000「いいね」をもらう” というものでした。

より面白い賭けにするために、もし実際に僕がその賭けに勝ったら、何の報酬もなしということにしました。条件は、もし僕が負けたらいとこに1000ドル支払い、もし成功したら何ももらえない、ということです。

どうしてそんなことをするのか…ですよね?どうしてそんな状況に自分を追いやるのか?基本的に、僕はずっと絵画の勉強がしたかったんです。どういうわけか、始めるまでには至らずにいました。あるとき「損失回避」という言葉を知ったんです。これは、 “人は何か失うものがある時の方が、発奮し執着する傾向にある” ということです。そして、僕にも効いたんです!そこから6ヶ月の間、ほぼ毎日のようにイラストを描き、絵を描き、週末には絵画教室に通い、そういったことに時間を割き、絵の描き方を学びました。

そして、嬉しいことに、その賭けが残り3日になった時、いとこをがっかりさせました。つまりArtStationで「いいね」が1000を超えたのです!

当然、僕はわざわざ誰かを感心させるためにこの話をしているわけではありません。絵を描く技術を磨く中で多くを学び、どうすれば影響力のあるアーティストになれるか?について沢山の気づきを得たからです。この賭け以前は、時間があるときに学ぶ…というタイプでした。いろいろ見て回って、レッスン動画を観るみたいな感じですよね。

でも、もし何かを失うかもしれないとなったら?例えば1000ドルとか。いろいろなことに疑問を持つようになります。

そこで僕は7つの最大の教訓、7つの最大の習慣をこのプレゼンテーションにまとめ上げました。

また、世界クラスの成功者が実際に取り入れている習慣についてもお話ししたいと思います。例えば、スティーブン・キングやピクサー、カニエ・ウエストにも共通点があるということがわかるでしょう。

 

さて、興味はありますか?…よかった!

【毎日の作業】 – 優れたアーティストになるための習慣1

まず最初の習慣は、一見すると単純に感じるかもしれません。毎日の作業です。

日々、タスクや作品・創作活動の作業を「毎日欠かさず」する必要があります。ここで、「どうして毎日欠かさずなの?」と思うでしょう。

「どうして時間があるときにやるだけじゃダメなの?」

「例えば、月曜から金曜まで毎日1時間作業をすれば、5時間ということになるから…じゃあ土日でまとめて5時間作業すればいいんじゃないの?」と。

問題は、私たちがイメージするまとまった時間ではめったに結果を出せないのです。だからこそ、歴史上の偉大な芸術家は、それが執筆でも音楽で功績が何であっても、毎日欠かさず作業をし続けた結果だったという言葉を残しているのです。

例えば、J.Kローリングはハリーポッターのホグワーツの世界を5年かけて書き上げました。しかも子供を育てながらです。週末に子供の世話から完全に離れた場所で、自由な時間を手に入れるという壮大ともいえる瞬間を待つのではなく、毎日欠かさず少し手が空いたタイミングに作業をしていました。

ジェリー・サインフェルドは、サインフェルドシリーズを、カレンダーでジョークを書いた日に「×」をつけながら書き上げました。そして、何日か連続して「×」がつくと、そこからはその連続記録を途絶えないようにすることが目標になりました。

マーク・バービグリアという、コメディアンであり脚本家である彼は、いろいろな人との打ち合わせがあまりにも多く、映画の脚本を書くのが先延ばしになっていると気付きました。そこで彼がした面白いこととは、自分の台本との打ち合わせ時間を設定しました。毎日カフェで、2時間ラップトップと向き合い、タイプし続ける。そうすることで、先延ばししなくなったと言います。

線を引くだけでもいい

個人に実際の経験をもとに話すと、毎日の作業というのは単純に聞こえます。では、どうしてしないのでしょうか?問題は、1日中オフィスで仕事をして、あれやこれやと文句を言う上司の相手をした後、家に帰ってきて疲れているタイミングで、最後にしたいことが “何か新しいことを学ぶという罰” か?ということです。NetflixやRedditをみたり、テレビゲームとかそういうことをせずにです。

僕自身に効果があった方法は、できる限り最小限の量でも作業すると決めることです。僕の場合で言うと、紙の上に鉛筆を置いて線を描くことでした。「あー…もう何もできない、何もしたくない。今日は本当に大変な日で、ただのんびりしたい」と感じる日でも、「わかった、線を1本描くだけはどうだろう?」と自分に問いかけるんです。そうすれば「線1本なら」となります。

ポイントは、テーブルを片付けて、ノートを取り出して、鉛筆を準備して鉛筆削りと消しゴムを用意して、椅子と照明をセットしてそこに座ると、そこまでする頃には、線1本では止まらないようになるものなのです。知らない間に、数時間は作業しているものです。時間の感覚がなくなるんです。

つまり、「始める」ことが作業の最も難しいパートであることが多いということです。「始める」ことさえできれば、あとは大丈夫。これが僕には効果がありました。もちろん、もっと大きなトピックでもあります。「モチベーション」というものです。それについては大量の本が出ているので、興味があればそちらをどうぞ。毎日の作業、これが短距離走で勝つ秘訣です。

「trump(勝つ・切り札)」って言葉は何だか変な感じに聞こえませんか?言葉の意味が変わってしまった感じですよね。

 

【質より量をこなせ】 – 優れたアーティストになるための習慣2

2つめは、完璧さよりも量ということです。正直に言って、自分の作品のことになると、ちょっと完璧主義者だなって自覚がある人はどれくらいいますか?手を挙げてください。

ほとんど全員ですよね?

アーティストであればほとんどの人がこの苦悩を抱えています。それと同時に、ほとんどのアーティストが完璧主義者であることを強みだと自覚しています。でも、前の作品よりもより良い作品を作るために、秀逸さという高い基準に必死にしがみつく一方で、完璧主義者でいることは実際自身の成長を食い止めることになるのです。それが、新たな閃きや学びを手にいれる妨げになるということです。

有名な「このアメリカ人の人生(This American Life)」というラジオ番組の製作者だったアイラ・グラスは、「最も重要なことは、とにかくたくさん作業することだ。隙間を埋めるためにできるだけの量の作業をすることで達成できる。」という言葉を残しています。

もっとよく知られた例を挙げたいと思います。ピカソはどうでしょう。ほとんどの人は、彼の作品のほんの一部しか見分けることができません。「そう、これがピカソでしょ、みんな知ってるわ」みたいな感じで。

しかし、実際は、彼の作品には800点の絵画と1200点の彫刻、2800点の陶芸品、12000点のデッサンがあるのです。それ以外にも印刷物やラグ、タペストリーがあります。つまり、ピカソはとんでもない量の作品を生み出しており、私たちのほとんどは、その中でもわずかな成功したヒット作品しか知らないのです。

作品の数と成功に関係性があるのか?と疑問に思うかもしれません。研究者によると関係はあるそうです。ベートーベンやモーツアルトなどの15000曲の楽曲を研究する中で、 “5年の間により多くの楽曲を作曲したアーティストの方が、ヒット曲を実際に生み出す確率が高い” と結論づけています。

つまり、量はとても重要だということです。

さっさと次の作品へ

個人的な視点からお話しすると、僕がこの平面作品を制作している時、完璧にする作業は全体の作業からすると最後の少しの部分です。ひねったり、拡大してみたり、影の詳細の部分を調整したり、明るさとかそういったことをするのは、とんでもなく時間がかかります。

面白いことに、最後の部分から学ぶことというのは実際あまりないんです。学びの大半は、仕上げよりも前の段階にあります。大きな形から顔の造形に落としこんでいく…というような作業。これこそが最も多くのことを学ぶ部分なのです。最後の仕上げは簡単なんです。参考になるものを横に並べて、細かい部分に注意して、手直ししていくだけです。そして、その作業はとにかく時間を食うものです。僕が言いたいことは、もし完璧主義者だと、次の学びに到達すること、次の大きな閃きに到達することができないということです。

完璧さではなく、量!次の作品にさっさと取りかかる!

 

【多くから盗め】 – 優れたアーティストになるための習慣3

3つめ。「盗む」です。

崇拝するアーティストの作品を見て、生まれながらにしてその技術を身につけていたと考えてしまうのはよくあることです。

レンブラントは、初めて絵を描き始めた頃からあの光と陰の描き方を知ってたとか、

クエンティン・タランティーノは、彼の面白い話を生まれながらにして作れたとか。

でも、人間の脳はそのようには機能していないのです。何事も、その前の経験からアイデアが築き上げられているのです。崇拝するアーティストの作品を見て、「なんて独創的なんだ!どうやったらこんなことができるんだ!」と思ったとしても、その作品は彼らが崇拝する先人の作品から着想しているのです。だからこそ、歴史を振り返ってみると、最も偉大とされるアーティストたちが「盗むこと」を薦めているのです。

例えば、デイビッド・ボウイは、「僕が学んだ唯一の芸術は盗んだものだよ」と言い、スティーブ・ジョブスはインタビューで「素晴らしいアイデアを盗むことを恥ずかしいことだと思ったことはない」とおおっぴらに答えています。

これは、バンクシーがパブロ・ピカソの「盗む」ことの名言を盗んだものです。これ好きなんです。

ここで興味が湧きませんか?「どうしてこんなにも盗むことが推奨されるのか?」盗みは道徳に反するものです。そう習って成長してきましたよね。でも間違いなんです。

良い盗みと悪い盗みの違いとは

ここに、良い盗みと悪い盗みの違いがあります。これは、「アーティストのように盗め(Steal like an Artist)」という本をまとめたものです。

このリストの中で、特に僕の目に留まったもので最も重要なものだと思うのが、上から3つめの項目です。

「多くから盗む」対「ひとつから盗む」です。ひとりの人から盗むことを「剽窃行為」といいます。多くの人から盗んだものは、誰も気付きません。

ギャリー・パンターがうまく表現しています。「もし誰か影響を受けた人が一人だとしたら、周りは君を “次世代の○○” と呼ぶだろう。しかし、もし100人からあらゆるものを取ったのであれば、周りは君を “独創的だ!” と言うだろう。」

ひとつおすすめしたいのが、まず崇拝する誰かを見つけること。心から好きなものを見つけることです。最近ではインターネットがあるので、とても簡単にできるでしょう。例えばArtStationのポートフォリオを見て、自分の好きなものを探せばいいのです。僕は、まず賭けを始めてすぐにEvernoteでファイルを作って、ArtStationで気に入ったものをどんどんコピペしていったんだ。考えすぎる必要も、識別しすぎる必要もなくて、作家が誰かも書き加えませんでした。その作家が誰なのかも知らないんですから、ただ単純にコピペしただけです。

これはその先の参考として、インスピレーションとしても役立ちました。顔を描いていたとき、何かわからないけど目がうまく描けない…となった。そういう時にこのファイルを開き、いろいろな作品を見て「あー、こういう風にすればいいんだ」と手がかりを得ます。すごく気分が落ちていて、作業をする気に全くなれないときにも、インスピレーションとして役立ちました。というのも、そのファイルを開くことで、どうしてこれを始めたのか?というところに立ち返ることができるからです。それは心底自分が好きなものなんです。伝統的な画家のこととかを考えるのではなく、自分が本当に好きなもののことを考えることができます。

それが「盗む」です。崇拝できる人・ものを探し、そこから盗め!ということです。

 

【意識的に学ぼう】 – 優れたアーティストになるための習慣3

4つ目は、「意識的な学び」です。「練習により完璧に至る」という言葉を聞いたことがある人、手を挙げてください。

ほとんどですね。

つまり「もし何かを極めて得意になりたいのなら、10000時間の練習が必要だ」ということですよね。僕も昔はその通りだと思っていました。自分のポッドキャストやレッスンでもそうアドバイスしてきました。もし誰かがEメールで「Blenderでいい成果を出したい!」と言ってきたら、「練習しなきゃダメだよ」といいます。練習、練習、練習です。

でも実際は、それだけが全てではないということです。人間の脳は痛みを避けるようにできています。つまり、注意しないと、練習が怠慢のもとになる可能性があるということです。私たちは “練習” をこのような感じに捉えがちです。

「長い時間割けば割くほど、より良い結果が得られる」というもので、こういう線グラフです。

 

でも、実際はこんな感じになります。

最初に少し成長が見られるものの、その後は単純に練習を続けるだけでは停滞します。僕が賭けを始める前に、何人かにメールして「絵画についていくつか質問に答えてくれない?」と尋ねました。

その中の一人、エフラム・マーシーというアーティストがいて、彼の作品は素晴らしくて大好きなんですが、その彼が今までに聞いたことがない、興味深いことを話してくれました。それが「最大の時間のムダは、何をしているかを意識せずにいることだ」ということでした。別の言い方をすると、「いたずら書きをする」こと。

実際、彼の真意を理解するまである程度時間がかかりました。僕の好きなことのひとつなんですが、一人で家で仕事をしていて、コンピューターの前に座って、とてもさみしい作業で、あまり多くの人と会話しないので、そういう1日の最後に、人が話しているのを聞くのが好きなんです。

ヘッドフォンをつけてポッドキャストを聞きます。ビル・バーとか「ママの家(Your Mom’s House)」とか…コメディアンの話をたくさん聞きますね。ただただ僕にとってそれはリラックスできることで、そこで何をするかというと、ノートを取り出して、イヤホンをつけてポッドキャストを聴きながら、ただスケッチするんです。特に目標があるわけでもなく、ただスケッチをするだけです。

僕がそうしていたことは、あまりいいことではありませんでした。実際ひどい出来のものばかりで、人間に見えないものすらありますよね。長年ある呪文「練習により完璧に至る」を信じていた僕は、これを続けていれば、きっと上手くなると。でも、前に描いた作品を見てみると、数週間前に描いたページをずっとめくっていて気付いたのは、そこに何の変化もなかったということです。それだけの時間をかけても、全く上手くなっていなかったのです。どれも同じくらいのレベルでした。「こんなことにずっと時間を費やしても何も学ばないな」と思いました。

「よし、じゃあ元に戻って、何かを学ばなきゃならない」となったのです。レッスン動画みたいなものを観るのが実は嫌いでした。特に描画理論のビデオとかは、本当に味気ないものです。

これは、僕が顔面解剖学のコースを観ているときの様子を妻が写真に収めたものです。こんなにつまらないコースはありませんでした。結局、これ以上自分を追い込みたくないと思いました。皆さんにもわかると思います。忙しい1日の最後に、Blenderの画面を観て、もう知っていることをまた観ることになることもありますよね?こういうことをするのが本当に嫌でした。

でも、このプロセスを通して、僕はいくつかの顔面の比率を間違って覚えていたことに気付くことができました。つまり僕が描いていた顔は完全に間違っていたのです。もしこの誤りに気付いていなかったら、ずっと絵のレベルは上がらないままだったでしょう。このコースを修了すると、僕の描く顔はすぐさま格段によくなりました。こんな感じです。

学び直すことを止めて、ただ練習して「練習により完璧に至る」と過信し続けていたら、上手くなることはなかったでしょう。つまり、実際はこんな感じのグラフになるということです。

意識した学びを取り入れることで、一段階ずつ成長していきます。単純に練習をし続けるよりも、その分野でかなりの改善が見られるようになるでしょう。誤解しないでくださいね、練習は重要なんです。でも、練習だけで完璧になれるか…となると、それには賛成しません。

「意識的な学び」は、必ずしも楽しいものばかりではないが、改善するための最短の道!ということです。

 

【休息をとる】 – 優れたアーティストになるための習慣4

「休息」!

Blenderでシーン作りをしていて、行き詰まった、壁に突き当たった、何が起きているのかわからず、ただただイラつくという経験をしたことはありませんか?経験がある人はいますか?ほら、たくさんいますね!よかった。ひとりじゃなかったんですね。僕はしょっちゅう経験しています。

そして、こういった経験もしているんじゃないでしょうか。

そこから離れて、皿洗いとかをし始めると、突然解決方法を思い付いたりしませんか?変な話ですよね。シャワーを浴びてる時とか、どこか別のところに行った瞬間、「あ!そうか、あっち側に照明をつければいいのかも」とか「シャツの色を変えれば全体に合うのかもしれない」とか…こういったことを、作業から離れた時に思い付くのです。これは、実際に多くのプロのアーティストが使っている戦略でもあります。

例えば、スティーブン・キングは、「どんな小説でもその長さにかかわらず、初稿を完成させるのに3ヶ月以上かけるべきではない」と言いました。3ヶ月が経過したら作業をやめて、その原稿を6週間一切見ず、その6週間は別のことをして、旅行に行ったり…別の作品を書き出したり…とにかく何か別のことをする。そして、その後作業に戻ったら、誰か別の人の作品を読んでいるような気分になると。その原稿がまったく別の視点でみえるのだと。今まで一切みえなかったものが見て、ただそこに座り、それをタイプし続ければいいだけということです。

作品と距離を取ってみよう

僕自身の経験からいうと、僕はこのスターウォーズのレイを数日間夜通しかけて描いたんですが、ここからどうしていいのか全くわからなくなりました。

「うーん、白黒で典型的な感じか。背景が黒で…」みたいな感じです。この先どう進めていいのか全くわからず、そこから3日間休息をとりました。別の絵を描いたり、別のことをしたんです。そして3日後、この絵に戻ると、この絵から完全に離れた感覚がしたんです。いい意味で、ですよ。自分がその絵に関わっていないような、なんというか…実験的なこともどんどん試せるというような状態になりました。

今でも覚えているのが、Photoshopで今まで気付かなかったブラシに目が行き、それをトップに使ってみることにしました。そうすると、「おー!これは面白いぞ!」という感じになったんです。そこから15分もしないうちに、こういった興味深いエフェクトを描き出すことができました。

この「フォース」的な、不思議なオーラみたいな感じです。もし2日間休むことなく作業し続けていたら、ここにたどり着くことはできなかったでしょう。ある一定の休息の期間が作品との距離を取る期間を与えてくれたということです。こういった休息の期間をもつことは、とても重要なのです。

実際、「Blender Guru」で戦略のひとつとして実践していることでもあります。例えば、もし創作したい作品が3つある場合。トレイラーとかそういうものですね。3つ全てを同時に作業するのではなく、まずひとつを完成させて、別のものをスタートする…それが完成したら、もうひとつをスタートする…という方法をとります。その3つをそれぞれ個別に進め、この日はひとつの作品、次の日は別の作品、その次のはまた別の作品、そしてまた最初の作品に戻ります。そのサイクルを続けて、それぞれの作品に戻るたびに、前は気付かなかったことに気付けるのです。この感覚は、皆さんにもきっとわかるものだと思います。

これが「休息」です。休息をとることで、新鮮な視点で作品を見ることができる!ということです。

 

【フィードバックを大切に】 – 優れたアーティストになるための習慣6

6つ目は、「フィードバック」です。

「独創的な思想家」や「偉大な芸術家」を想像してみてください。彼らは独創的だったわけですから、批評家や否定的な意見をもつ人や「それは良くないよ。そんなことしないほうがいい」というような人を相手にすべきではありません。彼らは “正しいことをしている” とわかってやっているのですから。

しかし、実際プロのアーティストのインタビューや自伝を読んでみると、正反対のことが実情だということがわかります。彼らは誰よりもフィードバックを求めています。ミュージシャンや作家といった人を見ていて気付いたことは、彼らがいかに多くのフィードバックを求めているかということでした。

例えば、ピクサーでは「ブレイントラスト(学識・有識者委員会)」と呼ばれる部屋があります。その部屋に入ると、肩書きや役職は無視して自由に意見を発表することができます。入社したてのジュニアアーティストが、この部屋に入って「こんな映画はクソだ!」と発言することができるということです。隣にディズニーのCEOが座っていたとしてもです。誰もが平等に発言権を与えられていて、そこでの発言が原因でクビになったり、何かしらの影響を受けることはありません。自由に考えを発言できる場なのです。

ピクサーの共同創設者であるエド・キャットムルは、「この場はピクサーの成功において最も重要な部分のひとつだ」と言っています。というのも、実はピクサーの初期の作品はひどいものだったからです。そこで、エドはかなりの時間をかけて、 “初期の作品がいかにダメだったか” を社員に話し続けたと言います。彼が言うには、「ピクサーが映画作りを始めたその日に素晴らしい大作が誕生したわけではなく、フィードバックと試行錯誤の結果だ」と。初期のものから、全く違うものを彼らは生み出しました。成功への道はひとつだったということです。

フィードバックを重要視している人の例としては、最もフィードバックを求めなさそうな人に皆さんには見えているかもしれませんが、この人です。

今後の方向性に迷いがないような人。カニエ・ウエストです。

彼の最も人気のある、評価されたアルバム「My Beautiful Dark Twisted Fantasy(俺の美しく黒いひねくれた幻想)」は、批評家全員の高評価を得ました。過去10年、何十年、今世紀最高のヒップホップアルバムだという人もいました。とにかくどの批評家にも愛される作品ということです。このアルバムは、何人かのアーティストによる作品で、実際に見てみると、38人のアーティストやプロデューサーがこのアルバムに関わっていました。カニエ・ウエストは、ハワイでスタジオを借り、彼のお気に入りのアーティストをそこへ呼んで、製作を行ったそうです。

JayZやリアーナ、ドレイクといったアーティストがアルバム製作に参加し、しかもそこで批評もしたといいます。プシャ・Tは、インタビューでそのプロセスについて話していて、まず何人かの人を部屋に連れて行き、そこで「これどうかな?」と質問し、そこで出る意見にカニエは心底興味を持って耳を傾けたと言います。ピクサーの方法と比較すると、とても似たプロセスのように聞こえます。誰も責められることはなく、真実かつ率直なフィードバックということです。そして、そのプロセスが成功への道となるのです。

ここで3Dの例を出すと、まぁこの会議がまさに3Dについての会議だと思いますが…グノモンスクール(Gnomon School)です。

グノモンを知っている人はいますか?名前を聞いたことあります?この学校は、世界トップのCGの学校で、卒業後の就職率は97%と言われています。グノモンの次のランクの学校だと、この数字は50%以下になります。とんでもないですよね。

この学校では素晴らしいコースが展開されています。僕がオーストラリア・メルボルンに来た時、ちょうどグノモンが週末イベントを開催していたので、参加し、創設者のアレックス・アルヴァレスと話をしました。「グノモンの生徒のレベルそのものがかなり高いものではあるんだけど、その中でもどのクラスにも1人や2人は逸材がいるんだ。その後とてつもない成功を収め、将来の仕事を見つけるのにも何の苦労もないという生徒がいるんだよ」と、彼は話していました。そこで僕が聞いたのは、「では、逸材と他の生徒との違いはなんですか?」と。

すると、間髪入れずに彼が答えたのは「逸材は批判を求めていて、実際にそこに耳を傾ける」と。彼は、構成や明度・物語といったものには一切触れませんでした。逸材とその他を分けるのはたった一つのことなのです。とても興味深いですよね。

フィードバックは何時間もの試行錯誤に匹敵する

そして、個人的な立場からお話しすると、この作品を作ったんですが満足していませんでした。

そこで、これをツイッターに投稿して、そこでいくつかフィードバックを手に入れました。

ただそこからどうすればいいのかわからず、その時ちょうどグノモンのイベントがあり、そこにディズニーのキャラクターアーティストであるディラン・エクレンがいたので、彼のところに行き「僕の作品を見ていただけませんか?一生懸命作った作品なんですが、ご意見伺えますか?」と。すると、彼は「もちろん!」と。iPhoneを取り出して見せると、すぐに「2種類の異なる照明を使っているよね。とてもおかしな感じだ。後ろからと前からと照明が合っていないね。それと、2種類の異なるスタイルを使っているね。漫画っぽい感じの顔にリアルな質感の髪を描いている。ここも合わせないといけないよ。」と。興味深い。すぐに彼が何を意味しているのか理解できました。

ほんの1分程度のことでしたが、そのおかげで何時間もの作業を省くことができました。

指摘された点を修正すると、ちょっと良くなったと言いたいところですが…格段に良くなりました。

ということで、これが「フィードバックを得る」ということです。フィードバックは非常に価値のあるものだ!ということです。

 

【自分の好きなものを作ろう】 – 優れたアーティストになるための習慣7

7つ目は、「自分の好きなものを作る」ということです。

個人的に、モチベーションは芸術においてかなり見落とされている部分だと感じています。偉大なアーティストであれば、どんなトピックを与えられても素晴らしい作品を生み出すと思われがちです。そういったことを想像しがちだと思います。しかし、実際は偉大なアーティストやミュージシャンが作っている作品をみてみると、彼らが個人的に興味があるものだということがわかります。

クリストファー・ノーランは、自分が興味を持つものに関する映画を作っています。精神状態だとか、何かに囚われている状態や、SF的なものがその例です。彼はそのようなものに強い興味を持っているのです。そして、物語や世界観を同様の映画ではみられないようなところまで掘り下げて発展させています。

イーロン・マスク!彼はアーティストではありませんが、大きな成功を収めている人です。彼の3つの会社、SpaceX・テスラ・ソーラーシティは、彼が人間性というものに興味があり、それを未来に引き継ぐことに興味があったからこそ創設された会社です。

つまり、これは個人的で内在的ともいえるモチベーションであり、興味があるものだったということです。もし彼がパン屋さんを始めていたら、きっとうまくいかなかったと思います。彼は天才ではないのです…。いやまぁ、天才ではあるんですが、彼は神話にあるような何でもお金にできる能力があるわけではないんです。アーティストが興味がある分野ということが、実際に重要なテーマだと思います。

より芸術的な例を出すと、ブライアン・イーノは、アンビエントミュージックの巨匠ともいえるアーティストですが、彼は「自分が聞きたい音楽を聞くことに興味があるから、この世界に傾倒した」と話しています。それは彼の音楽にもしっかりと表現されています。

好きなもの=モチベーション

個人的な経験をお話しすると、僕がいくつかの作品を描いているとき、それをツイッターやフェイスブックに投稿していました。こういったスケッチのようなものなんですが。

数ヶ月した頃に「あなたって、可愛い女の子しか描かないのね」というコメントが出るようになりました。「うーん…」という感じになり、その言葉の影響を受けてしまいました。「参ったな…可愛い女の子しか描かないような男になってしまうんだな」みたいな感じです。これは家族だったり、オンライン上の人とか、インスタグラム上で繋がっている人が「どうして女の子ばっかり描くの?」と聞いてくるんです。そこで「バランスを取らなきゃダメだ。男の絵も描かないと。」という感じになりました。

そして、実際に男性の絵を描き始めました。でもうまくいかないんです。そこに気持ちを込められなかったんです。

ヘクター・サラマンカ。このシリーズが大好きなんです。ただそれに興味が持てなかったんです。見映え良くしようとする努力には、内的なモチベーションが必要だということです。とにかく気持ちを込められませんでした。

ちょうどこの頃「怪しい伝説」という番組が人気で、10年近く放映されていました。僕はそんなにこの「怪しい伝説」を観ていませんが、とても面白い番組だというのは知ってます、サイエンス系のそういう番組です。僕はハマっていませんでしたが、男性が2人登場するいい感じの絵を描けば、みんなが気に入ってくれるかもしれない…と思いました。

ただうまくいかなかったんです。そして、ここでもまた気持ちが込められませんでした。素晴らしい番組だと知っていても、僕はそれを観なかった。しばらくそういった試行錯誤を繰り返し、時間はかかりましたが、これを描くのに半年もかかりました。

時間を無駄にして、そして閃いたんです。周りがどう思おうがどうでもいい…と。どうでもいい!と。そこから元に戻り、自分が本当に好きなものを描き始めました。正直、男性よりも女の子の方がずっと魅力的な対象なものに感じます。僕はそう感じるんです。お役所的で形式的なものはもう十分です。

政府からの規制、上司からの指示。芸術は、自分が本当に興味があるものに取り組むことができる数少ない場所です。だからこそ個人的に思うのは、周りの人間に口出しさせて、何をすべきだとか、すべきではないとか言わせるのは、大きな間違いだということです。

ということで、「自分が好きなものを作る」そうすればより良い作品を生み出し、モチベーションを長い期間維持できるということです。

 

これがまとめです。

毎日の作業を欠かさず行い、習慣づけることを意識する、これがとても重要です。

いいことだと思っていたとしても、一般的にそうではないので、完璧主義にならないこと。

自分が崇拝できるものを見つけ、そこから盗むこと。

つまらないこともありますが、自分の弱点に気づき修正するためには必要な過程ということで、意識的に学ぶこと。

休息をとること。往々にして、作業し続けるよりもいい成果が得られます。

いろんな人からフィードバックをもらうこと。耳を傾けずやり過ごすのはいいことではありません。

 

そして、最後に、

自分の好きなものを作ること。

 

参照リンク : The 7 Habits of Highly Effective Artists – Blender (CC BY 3.0) / Andrew Price at Blender Conference 2016
当記事はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons license / CC license)に基づいて編集しています。(記事内の画像・デザインや映像の権利は個別のライセンスにより保護されている場合があります。)

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