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2022年、ミラノサローネが完全復活!イタリア現地からレポート

ミラノサローネ_写真1

Salone Internazionale del Mobile di Milano(ミラノサローネ国際家具見本市)は、ミラノ開催の見本市として、世界最大規模の”家具”の見本市。パンデミック前までは、毎年4月に定期的に開催され、ビジネスにとどまらず、学生の研修やツアーで訪れる方で賑わっていました。延期を重ねた上、2021年には秋のスーパーサローネ特別展を開催、そしてミラノサローネ60周年の今年、時期は6月にずれ込みましたが6月7日から12日での開催が実現。Rhoの見本市会場以外で開催されるイベントFuoriSalone(フォーリサローネ)も6月6日から13日の日程で無事に完全再開を果たしました!

この期間はミラノデザインウィークと呼ばれ、ミラノ中でサローネ関連の展示やイベントが続々と開催されます。今年は特に、やっと“日常”が戻ってきた事への喜びにサローネが加わり、ミラノ中が活気付く一週間となりました。今回はそのフォーリサローネの様子を少しお届け致します。でもこのブログのテーマはグラフィックデザインとはいえメインは家具のイベントで、いったい何が見つけられるのでしょうか?

 

サスティナビリティ、これが主題ならここに行くべし。

「サステナビリティ(sustainability)」を重視するという昨年からのコンセプトに従って、メインの見本市の方では、ブースの設計や施工素材にも、環境への配慮を重んじるようガイドラインが配布されたというサローネ。世界的な風潮ではありますが、新しいアイデアや自由な発想が許されるこの場では、配慮に止まらず共生、そして再生までも、溢れるアイデアで広げてくれる可能性を提供してくれるのでは?そんな期待を抱きつつ、雲ひとつない快晴の週末はやっぱり屋外展、ブレラ植物園とミラノ大学などで開催されている、インテルニとモンダドーリグループ主催による「design-re-generation展」を見に行きます。

ミラノサローネ_写真2

ミラノ植物園には抗菌銅のパイプにより、色々な形で循環エネルギーを作り出し、植物園全体をエネルギーパークに変えるというプロジェクト「Feeling the Energy」が。長く巧みに配置された銅管からは、ミストが噴射され来場者を癒したり植物に水を与えたり、キラキラ輝くソーラーパネルで日中蓄えたエネルギーを夕刻のライティングに利用したり。都心の植物園という癒しのスぺースがエネルギーを生むという楽しいインスタレーション。建築家カルロ・ラッティとイタロ・ロタによるプロジェクトです。

ミラノサローネ_写真3

ミラノ大学では毎回ダイナミックな屋外インスタレーションが見られます。入口のアーチをくぐるとすぐに、ザハ・ハディッドによるミラールーム(ミニ会議室)、ピエロ・リッソーニの工事現場の足場のような巨大作品、奥にはミケーレ・デ・ルッキによる空を見上げる望遠鏡のフォルムをイメージさせる銀色の塔が。とにかく有名建築家、デザイナーの作品が、いたるところに散りばめられた贅沢な遊園地のようになっています。

実際、会場の中庭からは見えない奥の左右翼のスペースには、studio Lissoni が手がけた巨大迷路“The A-maze Garden”(タイトル通りAmazonの企画。Amazonスマイルの迷路に配置された、歴史的イタリアンデザインや限定商品が購入できちゃう…。)、インダストリアルデザイナーのラファエロ・ガリオットがアウトドア家具ブランドNARDIと作成した本当に迷いそうな“Labyrinth Garden”もあり、夏休みに入ったばかりの家族連れも、大いに楽しんでいる様子。初めは並ばずに入れた展示にも、いつの間にか長蛇の列ができていました。

 

ブラジルのグリーン、大地に染み込む歴史と新しく伸びる新緑。

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広い大学敷地内には40もの展示があり、どれも逃すまいと左回りで小走りに一つひとつ網羅していきます。万歩計をつけていなかったことを後悔しながら、暑さと情報の多さに疲れを覚えた頃、正門入口に戻る手前左手に、爽やかなグリーンの空間を見つけました。「あれ、ここって確か屋外の回廊じゃなかったかな?」と思いながらも、吸い込まれるように入っていきます。

ブラジル家具産業協会がApexBrasil(アペックスブラジル)と提携、建築家でキュレーターでもあるブルーノ・シモンエスによって企画された、“Poesia do Cotidiano展”。伝統工芸から新世代のデザイナーによる最新プロダクトまで、日常的なインテリアを通じてブラジルの文化と創造、その多様性を感じることのできる展示。新しい表現を生み出す現代のデザイナー作品と、産業の複雑な関係を、大学の長い回廊をいくつかの部屋に区切り展示ブースとし、長く深いストーリーを辿るようにあらゆるプロダクトが配置されています。

木製のエレガントな家具、その中にココナッツの穴あけ器具(たぶん…)砂糖きびを切るナタと肉用のまな板があったり、土と交わる日常と洗練された世界が交差するような不思議な空間です。最後のブースには、コーヒーショップ的な一角が。ただでさえちょっと疲れた足は、持ち主の言うことを聞かずここでストップ。仕方なく腰掛けると、なにやらいい感じのパッケージがずらっと展示されているではないですか。

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まず目についたのが“WolffCafé”のパッケージ。サブスククラブでの定期的なコーヒー販売、社会貢献のためのプロジェクトに投資するなど独自の方法で独特なアロマのコーヒーを提供。パッケージのオオカミは創設者兼チーフロースターのヒューゴ・ウルフのお名前から来ているようです。“AHACafés”のパッケージも中心のイラストがとってもキュート。特製コーヒーのマイクロロースターとのことですが、さまざまなフレーバーを生み出している様子。

気候変動による「コーヒー豆」の生産危機や、生産者・労働者減少の深刻な問題については、日本とブラジルの深い歴史を顧みると、また美味しいコーヒーが万一手軽に手に入らなくなってしまったらと考えると、本当に気になるところです。ブラジルのコーヒー業界を活性化するために情熱を燃やす、若い製造者や焙煎者、起業家や実力あるデザイナーの存在。一見くつろぎのスペースに見えましたが、ブラジルとコーヒーの関わりを突きつける、展示テーマに強烈に沿った締めくくりにふさわしい空間だったのでした。

しかし、コーヒーのパッケージデザイン、形も様々で面白いです!機会があったらもう少し深めてみたいと思いながら、正午を過ぎ、ますます賑わうミラノ大学を後にしました。

ミラノサローネ、ミラノデザインウィークは家具の見本市にとどまらない広がりを毎年見せてくれます。次の開催は2023年4月18日から23日を予定。どうか来年こそは、無事に4月の開催が叶いますように。Ci vediamo il prossimo anno!(また来年お会いしましょう!)

 

参考:
ミラノサローネ公式HP (https://www.milanosalone.com/)
インテルニマガジン、“Poesia do Cotidiano”展記事 (https://www.internimagazine.it/design-regeneration-2022/poesia-do-cotidiano/)
ウルフカフェ (https://www.wolffcafe.com.br/)
AHACafés (https://www.ahacafes.com.br/)


プロフィール_StudioMIRRO01

<プロフィール> スタジオ MIRRO
イタリア在住。フリーGデザイナー&イラストレーター。ライティングでは各種媒体の記事制作やタイトル作成に関わり、ソフトタッチなイラストと同様、フワッとあたたかさが伝わる文章を心がけています。

 

※掲載商品・パッケージ等のデザインは当サービスの制作実績ではありません。
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