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米CNETの新しいロゴデザインが登場 – 20世紀のテレビ報道黄金時代を意識

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米CNET(シーネット)が、4月の末にブランドリニューアルをおこないました。同社の運営するニュースサイトのデザインが一新され、ブランドロゴが新しいデザインのものに差し替えられています。

CNETは、米国サンフランシスコに本社を構えるIT系メディアです。同社ニュースサイトでは、テクノロジー関連の情報を中心に提供してきました。デジタル機器やアプリの新製品情報や解説、レビューといったものです。

しかし、テクノロジーとわたしたちの日々の生活との関わりは、ますます深まっています。CNETでも、専門分野に加えて、ヘルスケアや金融、環境といった領域まで記事の対象範囲が拡げられてきました。

新しい情報の断片を次々と発信するのではなく、ユーザーの役に立つ情報を提供してきたCNETは、信頼できるメディアであると評価されています。そのCNETが採用した、新しいロゴデザインを見てみましょう。

 

独特のセリフ体で組まれたロゴタイプ

大文字で「CNET」と組まれたロゴタイプは、ほかに見たことがない、と思わせてくれます。とりたてて派手で奇抜な処理がおこなわれているわけではありません。オーソドックスなセリフ書体のようでありながら、何かが違う、と感じます。ロゴを右から逆順に見ていくと、その違和感の理由がだんだんわかってきます。

右はしの「T」から受ける印象は、オールド・スタイルのセリフ書体、たとえば「Times New Roman(タイムズ・ニュー・ローマン)」のエクストラボールドを見た時と同じで、さほど特別なデザインには思いません。次に「E」を見ると、ステム(タテの線)が太いこと、セリフが大きいことに気づきます。

さらに「N」は、普段目にするデザインとはあきらかに異なっています。まるで「Z」を時計回りに90度回転させたかのようです。「C」も、角ばっているのでとてもユニークな感じがします。

セリフの形状が同じ

このロゴデザインが不思議な印象をあたえるヒミツのひとつは、4文字ともセリフ部分に同一のパーツを使っているということです。厳密には「T」のブラケットの大きさがわずかに異なっていますが、大きさと形がまったく同じの長いセリフがすべて共通で使われています。

先に挙げたTimes New Romanでは、「N」の垂直のステムの先には、左右に突き出たセリフがついてます。しかし、CNETのロゴでは、内側を向いているクチバシ状です。

また、Times New Romanの「C」では、上部の先端がセリフで、下部の先端にはセリフがありません。一方CNETのロゴでは、ほかの文字と共通のセリフが上下ともにつけられています。

タテヨコの比率が同じ

もうひとつのヒミツは、4文字ともタテヨコの比率が同じだということです。すべての文字が、正方形のフレームいっぱいにデザインされているということです。

「C」が角ばっていること、「N」のセリフが内側を向いていることは、このフォーマットに基づいているからです。また、Times New Romanでは、「E」の上下のアームがステムを突き抜けていますが、CNETのロゴでは、そうなっていません。これも、正方形のフレームというフォーマットに合わせるためです。

共通化されたセリフと正方形のフレームの影響で、見るひとによっては、ネガティブスペースが普段より強く感じられるかもしれません。並んでいる4つの文字を眺めていると、CNETや制作者が意図したわけではないでしょうが、だまし絵の隠された絵のように、ホワイトスペースが主張してきます。

 

小文字で組まれていた歴代のロゴタイプ

コンピューターやインターネットについてのテレビ番組制作会社として、CNETは1994年に創業しました。社名は、コンピューター・ネットワーク(computer network)という言葉を縮めたものです。

創業当時から同社が使っていたロゴは、一貫して小文字のワードロゴでした。「c」と「net」の間に縦のラインを入れた「c|net」というロゴタイプが使われてきました。赤い円に白抜き文字のロゴは、多くのユーザーにとって、ハイテク製品やテクノロジーに関する、信頼できる情報の象徴でした。

2008年のリニューアルで、赤い円に立体的なグラデーションがつけられます。このとき、ワードロゴから縦のラインが取り去られて「cnet」となりました。書体も別の書体に変えられています。しかし、2011年の2度目のリニューアルで、書体とともに元の「c|net」に戻されました。

CNETの旧ロゴデザイン

・CNETの旧ロゴ / monticellllo – stock.adobe.com 

初代と3代目のワードロゴは、基本的にコンデンスのサンセリフ書体で組まれています。「n」だけにスラブセリフ体のようなセリフがついたユニークなデザインです。セリフが外側へ向けられていて、足のようにも見えます。

今回のリニューアルまで一貫して使われてきたロゴは、デジタルデバイスのスクリーン状でも表示に不都合が生じることもありませんでした。

 

ハイテクのレビューサイトから現代生活に役立つメディアへ




わたしたちは現在さまざまなニュースをメディアサイトやSNSから入手しています。しかし、そのほとんどは投稿されたとたんに、次の新しいニュースに押し流されていきます。さらに、現れては消えていくニュースのほとんどが、自分にとってどんな意味があるのかわからない不要な情報です。

今回のリブランディングを請け負ったデザイン会社Collins(コリンズ)のサイトには、次のように書かれています。

「もっとも信頼できる報道機関であっても、日々の生活を改善するためには、その報道をどのように使えばいいのか教えてくれません。しかし、CNETは、読者の気づきから行動までの点と点をつなぐ報道を提供しています」

ブランドリニューアルに先立ってCNETは、ユーザー調査をおこなっています。その結果、ネットメディア利用者がもっとも重視しているのが信頼性であることがわかりました。そして、CNETユーザーの82パーセントが、CNETが頼りになるブランドであると考えています。創業当初から、ハイテクやインターネットについて、価値あるニュースや信頼できるレビューを提供してきたCNETの強みが確認できたわけです。

現在、わたしたちの生活全般にテクノロジーがますます深く関わってきています。CNETの取り扱う情報も、お金や家庭、健康、文化、自動車、気候などに範囲が広がっています。そこで、CNETはそういった現状にマッチしたブランディングを求めて、見直しを決めたのです。

 

テレビ報道の黄金時代をヒントにしたロゴデザイン

テレビの黄金期

ユーザーにとって役に立つ編集重視のメディアにふさわしいロゴデザインはどうあるべきか。刹那的だったり政治的な色の強い現在のネットメディアが乱立している中に埋没する代わりに、Collinsは、1950年代から1970年代の放送ジャーナリズムの巨人たちに目を向けました。

「この時代は、ニュースが深く尊重され、公共財とみなされていた時代でした」

テレビの3大ネットワーク、ABC、CBS、NBCは、1950年代から1970年代までのテレビ市場の90パーセントを支配していました。テレビ報道が国政からひとびとの行動にまで大きく影響を与えていた時代です。

CBS NEWSのロゴデザイン

・当時のCBS NEWSのロゴデザイン / prima91 – stock.adobe.com

ABC newsのロゴ

・ABC NEWSのロゴデザイン / Roman Tiraspolsky – stock.adobe.com

当時の3大ネットワークのロゴはそれぞれとても個性的なものです。現在、デジタル機器の画面での見え方に配慮して、サンセリフ体のロゴを採用するというのが大きな流れになっています。しかし、CNETは同じ道を取らずに、独特のセリフ体のデザインにしました。

3大ニュースのロゴデザイン

・3大ニュースネットワークのロゴデザイン / Tada Images – stock.adobe.com

3大ネットワークのロゴを見ると、その理由がうかがえます。デザインの方向性は違いますが、CNETの新しいロゴは、少なくとも、吟味されない情報が分単位で更新されていくような多くのネットニュースとはあきらかに一線を画しています。


CNETのサイトトップには回転するアニメーションロゴが掲げられています。これもテレビ画面に表示される放送局のロゴを意識した演出ではないでしょうか。

 

科学SF雑誌を思わせるレトロフューチャーなイラスト


FacebookやTwitter、YouTubeのCNET公式アカウントのヘッダーには、レトロなイラストが使われています。古い時代の雑誌を思わせる色使いと、エアブラシのタッチが独特のイメージです。描いたのはイラストレーターのロバート・ベイティ(Robert Beatty)氏です。

ベイティ氏は、Macの10年前のモデルにインストールした古いバージョンのPhotoshopを使ってエアブラシを表現しているといいます。ベイティ氏の作品は、ノスタルジック、サイケデリック、神秘的と形容されることが多いです。


ネット上では、CNETの新しいビジュアルを見た人たちから、『Omni(オムニ)』誌の表紙を思い出した、という感想も上がっています。『Omni』誌は、科学や超常現象などを専門にした雑誌です。SFやファンタジー小説も掲載されていました。テレビ報道最盛期とほぼ同時期の、1978年10月から1995年までの間に印刷出版された、サブカルチャーの担い手でした。

 


【参考資料】
Product reviews, advice, how-tos and the latest news – CNET (https://www.cnet.com/)
CNET REBRANDS AND INVESTS FOR THE FUTURE (https://www.prnewswire.com/news-releases/cnet-rebrands-and-invests-for-the-future-301534021.html)
CNET’s rebrand takes inspiration from the world of 1950s and ’70s journalism – Design Week (https://www.designweek.co.uk/issues/30-may-6-june-2022/cnet-rebrand/)

※公式WEBサイト情報もあわせてご確認ください。



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