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フォルクスワーゲンの新ロゴ発表について

フォルクスワーゲンが次世代EV車と新ロゴデザインで再スタート




2019年9月にドイツで開催された「フランクフルト・モーターショー2019」で、世界最大級の自動車メーカー「フォルクスワーゲン」社が次世代EV車の第1弾「ID.3」を公開しました。そのフロント部に輝く「VW」ロゴは従来のものとは異なるフラットでシンプルなデザインでした。今回リニューアルされたロゴのデザインに込められた意味を探ってみましょう。

ID.3

フォルクスワーゲンの新ロゴ / Tobias Arhelger – stock.adobe.com

 

フォルクスワーゲンの従来のロゴと一線を画すデザイン

フォルクスワーゲン(Volkswagen)という名前は、ドイツ語の「Volk」(=国民または人々)と「Wagen」(=自動車)の複合語で「国民車」という意味です。

フォルクスワーゲンのロゴの歴史 (via Pinterest)

頭文字「V」と「W」をタテに並べたモノグラムは1937年からロゴの構成要素として使われていました。円のフレームとのシンプルな組み合わせは、基本的に第二次世界大戦終結後すぐの1945年から続いています(60年代の一時期を除く)。2000年から膨らみを感じさせるグラデーションやクロームの質感が追加され立体化が始まります。2012年にベベルの面が強調された現行のデザインになりました。

長い歴史の中で「VW」のロゴは、力強い太い線で描かれている点と、ネガティブスペースと要素とのバランスという点では一貫したテイストを保ってきました。

フォルクスワーゲンの新ロゴ

フォルクスワーゲンの新ロゴ /

ricochet64 – stock.adobe.com

今回リニューアルされたロゴは、余分な要素や処理を取り除いたフラットなミニマルデザインです。そういう意味では3次元化する以前の歴代のロゴと共通しています。しかし、線の太さ、ネガティブスペースとのバランスが大きく異なります。また、文字と円とのコントラストが強いことと「W」の底の2つの頂点が円から離れていることも今回初めてです。全体に歴代のロゴとは明らかに「トーンが違う」と言えるでしょう。

ロゴカラーもブルーと白との組み合わせだったものから、ダークブルー、ライトブルー、白、黒の中から2色を組み合わせることが可能になり、バリエーションが広がりました。また、GTIモデルなどには赤の可能性もあるとのこと。

ロゴの置き換えは欧州を皮切りに世界中で順次展開され、2020年の半ばまでには終了する予定です。

 

「ムービング・フレーム」ロゴ

新しいブランド戦略の基礎はフォールクスワーゲン社内のデザイン部門とマーケティング部門によるジョイントチームで作られました。チーフ・デザイナーのクラウス・ビショフ(Klaus Bischoff)氏は次のように述べています。

「新しいブランドデザインで、エレクトロ・モビリティ(e-mobility)を人々の心に届けるための本物のコミュニケーション・プラットフォームを作り上げました。私たちは『デジタルファースト』『ノーフィルター』をモットーにして、これからのフォルクスワーゲンを見せているのです」

新ブランドの6つの原則では、デジタルメディアがカスタマーとの重要な接点であることを「デジタルファースト」の原則として掲げています。また、「完全なブランド体験」の原則として、360度コミュニケーションにより、あらゆるタッチポイントでユーザーに同じブランド体験を提供する、としています。




ひとつの具体的な例が「ムービング・フレーム」(moving frame)です。従来のロゴのように1箇所に固定する使い方ではなく、デジタルデバイスの画面の大小、アプリ、使われ方に応じてもっとも効果的な位置に配置できる柔軟性を備えていることを意味しています。ネット上でムービング・フレームのコンセプト動画を見ることができます。




また、初めてサウンドロゴを採用しました。広告だけでなく、車内のタッチスクリーン操作などのインタラクションや車を離れる際にで新しいサウンドが使われるということです。

 

3次元的ロゴがトレンドだった自動車業界

2000年代初頭、自動車業界では実物のエンブレムを3次元的に再現したロゴへの変更が一種のトレンドとなっていました。フォルクスワーゲンと同じドイツ由来のブランドにもそれが見られます。

BMWのロゴ

Alexandru Nika / Shutterstock.co

たとえばBMWのロゴは1917年に誕生しました。その後少しずつ手直しが施されてきたとはいえ他に比べると変化は少ないと言えます。それでも、2000年には陰影のある立体的な現行のロゴが発表されました。

 

アウディのロゴ

Vytautas Kielaitis / Shutterstock.com

アウディ(Audi)は創立100周年を記念して2009年にメタリックな3次元ロゴにリニューアルされます。

 

ベンツのロゴ

Tofudevil / Shutterstock.com

メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)の有名な「スリーポインテッド・スター」と呼ばれるロゴは従来から比較的立体的な表現がされていましたが、2009年にいったんフラットになった後、2011年にはメタリックな光沢感を再現した現行の3次元ロゴになりました。

 

スキューモーフィズムからフラットデザインへ

2001年にアップル社からMac OS X 10.0がリリースされました。スティーブ・ジョブズが戻ってきてからは初めてのOSのメジャーバージョンアップでした。そのアイコンの美しさに人々は驚きました。そのころ飛躍的に進化したコンピューターディスプレイの色の再現能力などを活かしたデザインは、多くの人はそれまでに目にしたことがなかったものだったからです。

スキューモーフィズム

現実世界の事物をリアルに再現したスキューモーフィズム(skeuomorphism)と呼ばれるスタイルです。確証はありませんが、パソコン画面の表示性能の向上や、スキューモーフィズムデザインの浸透が、自動車メーカーを始め多くの企業ロゴの3次元化に直接間接に何らかの影響を与えた可能性が考えられます。

マイクロソフトのロゴ

tanuha2001 / Shutterstock.com

しかし2011年にマイクロソフト社がメトロデザインを採用したWindows 8を発表してから状況が変わります。フラットデザインがデザイナーを引きつけ、ミニマリズムが大きな潮流となっていきました。2013年にはアップル社がiOS 7でフラットデザインに大きく舵を切ります。2014年にはGoogle社がフラットデザインを踏まえつつ直感的な操作性を重視したマテリアルデザインのガイドラインを発表しました。

自動車とデジタルデバイスとの結びつきはますます強くなることが予想されます。デジタルデザインの新しい考え方やテクノロジーが今後もロゴデザインに反映されていくのは自然な流れでしょう。

BMW社のブランド「Mini」は2001年から使われていた3次元ロゴを2018年にいち早くフラットデザイン化しました。

 

「ビートル」「ゴルフ」そして「ID.3」

フォルクスワーゲンと言えばなんといっても「ビートル」でしょう。自動車に詳しくない人でも丸みを帯びた丸の愛らしい姿を見れば、「あぁ、あのクルマ!」とわかってもらえると思います。

ビートルの広告デザインを見る (via Pinterest)

米広告代理店DDB社によって1959年から始まった初代ビートルの広告シリーズは数々の名作を生みました。「Think small(小さいのが理想)」「Lemon(不良品)」といったキャッチのついた伝説的作品はいまでもコピーライター、デザイナーを問わず広告関係者のレファレンスのひとつです。1998年に発表されたニュービートルは、前年に発表されセンセーションを巻き起こしたアップルの初代iMacとともにデザインの力を人々に印象付けました。2011年にはザ・ビートルがリリースされますが2019年7月に生産終了となりました。

もうひとつの代表的なモデルが「ゴルフ」です。イタリアのインダストリアルデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロのデザインによる初代モデルが1974年に発売されました。2019年3月に生誕から45周年を迎えたゴルフは世界中で3500万台以上売られ、トヨタ・カローラに次いで世界第2位の販売台数を誇ります。

ID3

Tobias Arhelger – stock.adobe.com

今回発表された「ID.3」はガソリン車やディーゼル車のベースをEV車両に流用したものではありません。純粋にEV専用に開発したプラットフォーム「MEB」を使った量産車の第1弾モデルです。フォルクスワーゲン社のリリースには「MEBは〔…〕ビートルからゴルフへの移行にも匹敵する技術的マイルストーン 」であると書かれています。ピュアな電気自動車「ID.3」は、フォルクスワーゲンの新時代の幕開けを告げるものです。

そして、新しい時代に足を踏み入れたフォルクスワーゲンにふさわしいブランディングが必要になったというのがロゴを含めたブランドリニューアルの理由です。

 

ブランド刷新のもう一つの理由? – ディーゼル・スキャンダル

新しいブランディングが必要だった理由にはもうひとつあります。それは2015年に発覚した排出ガス規制にまつわる同社の大規模な不正です。フォルクスワーゲンの信頼性が深く傷つき大きなダメージを受けました。環境に配慮した電気自動車に本腰を入れて取り組み、ブランドを再構築する以外に信頼回復のための選択肢はなかったとも言えるかもしれません。

自動車業界は今、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)という言葉に象徴される技術革新によって、100年に1度の大変革期を迎えていると言われています。フォルクスワーゲンが災い転じて福となせるか、今後の展開は注目に値するでしょう。

 

※公式WEBサイト情報もあわせてご確認ください。



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