世界各国の銀行ロゴに学ぶ、グローバルなデザイン表現

銀行のロゴについて

この世界を回し続けるのは、めまぐるしく執り行われる経済活動。その経済の基礎となっているのが私たちにとっても身近な銀行の存在です。国内にも数ある銀行ですが、世界に目を向けてみると数え切れないほどのbankが存在しています。多くの同業他社の中で自らの存在をアピールしていく手段としてデザインはことさら力を発揮します。

特にロゴデザインは、見る人にとって「第一印象」に成りえる、企業にとっての玄関口とも言えるデザインです。特に金融業は、国境や業種を越えて取り引きが行われ、その影響力は絶大なものです。今回は、世界の銀行がどのようなロゴデザインを掲げているか一緒に見ていくことにしましょう。


ドイツ銀行(Deutsche Bank)のロゴ

ドイツ銀行のロゴマークMartin Good / Shutterstock, Inc.

正方形に斜線が入った「ロゴ・スクエア」で有名なのがドイツ銀行です。1870年の設立当初は、パワーや名誉の象徴である「鷹」を2頭用いた「インペリアル・イーグル」をシンボルとしたロゴデザインが採用されていました。1930年代には、合併を繰り返したグループ名を「ドイツ銀行」と改め、楕円形にイニシャル「DB」をモノグラムで重ねたロゴデザインが誕生します。以降、第二次世界大戦での分割・統合を繰り返し、1974年にドイツ人グラフィックデザイナー、アントン・スタンコウスキー氏が手掛けた「ロゴ・スクエア」が発表されるに至りました。

この「ロゴ・スクエア」の誕生の経緯は、取締役会にて8人の著名なグラフィックデザイナーにドイツ銀行の現代的なロゴの考案を依頼する決定が下され、選考基準は言語に左右されず、国境を越えて認知されることが第一の条件として執り行われました。このシンプルでチェックボックスのようなデザインは、作者のスタンコウスキー氏曰く、「確固たる基礎と未来志向へのダイナミズム」という両極端なドイツ銀行の姿勢をモチーフにしており、「正方形」は磐石な基礎を、「斜線」はダイナミックな成長・発展を表しています。斜線は一見すると正方形の対角を結ぶ線のように見えますが、実は微妙な「ずれ」を意図的に仕込まれており、その「ずれ」こそがこのデザインの最も注目すべき価値だと述べています。この「ずれ」は、デザイン的な面白みだけではなく、ドイツ銀行のもつ、グローバルな発展への変容性、未来への無限の可能性を示唆する、このロゴにおける肝のような存在と言えます。

この「ロゴ・スクエア」登場以来、現在までその姿は変わっていませんが、当初はこのシンボルマークとスタンダードなサンセリフ体Helvetica(ヘルベチカ)で書かれた「Deutsche Bank」のロゴタイプがセットで使用されていました。2010年、ブランドとビジュアルのリニューアルに伴い、ロゴタイプを必ずしもセットにしない、「ロゴ・スクエア」を単独でロゴデザインとする見直しが図られました。これほど長い年月の間ブランドの顔としてあり続け、そしてここから更に洗練された一つのデザインとして生き続ける「ロゴ・スクエア」は、最早ロゴデザインの枠を飛び越え「ミニマル・アート」として世界に認知されています。


バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)のロゴ

バンク・オブ・アメリカのロゴマーク

Ken Wolter / Shutterstock, Inc.

現在、アメリカ最大の金融グループになった、バンク・オブ・アメリカ。前身になるロゴデザインは、ロゴタイプをHelvetica(ヘルベチカ)、シンボルデザインはイニシャル「BA」を合わせ、中央に鷹が飛ぶイメージを浮かび上がらせるロゴデザインでした。ここから大幅にリニューアルされたのが現行のロゴデザインで、目を引くシンボルデザインは星条旗をモチーフに作られています。よく見てみると、星条旗が3つの「=」で構成されていることに気がつきます。「=」は公平性を感じさせるモチーフで、フェアな取引や公明正大な企業姿勢をあらわしているのではないでしょうか。

また、それぞれの「=」を少しずつずらして配置することにより、絵柄に奥行きと立体感を与え、動的なイメージを与えることに成功しています。常に水物のように動き続ける金融市場のなかで、迅速な対応力や先を察知して先手を打っていく姿勢は金融業界のリーディングカンパニーとしては必須。動的イメージによってこれらの企業姿勢を見る側に想起させることを可能にしています。

星条旗を斜めに描いている点もミソで、まさにはためく星条旗を左下から見上げるような構図になっています。シンボルデザインを正面から見るとひし形状になっており、赤で描かれた2つの「=」が右向きの矢印にも見えます。アグレッシブかつパワフルな赤色で描く矢印は非常に力強くポジティブな印象を与えます。アメリカという大国のメガバンクに相応しいロゴデザインと言えるでしょう。


クレディ・スイス(Credit Suisse)のロゴ

クレディ・スイスのロゴマークStefano Ember / Shutterstock, Inc.

富裕層をターゲットに日本でも支持を集めているスイス発祥の金融グループ、クレディ・スイス。そのロゴは、清潔感と洗練された高級感を併せ持つタイニーセリフ書体で書かれたロゴタイプを中心に構成されます。優美なカーブを描く品のある文字に、知的で思慮深さをイメージさせるディープブルーをコーポレートカラーとし、右肩にはシンボルデザインにあたる、羽ばたく翼のような図形が重なって配置されています。明度の違う2つのブルーが重なり合い、中央にもう一つの図形を形成しています。

これは、クレディ・スイスと顧客との親密な関わりと、世界を舞台に優雅に羽ばたくクレディ・スイスの発展を意味しているのではないでしょうか。美しさと信頼、この2つをイメージさせるこのロゴデザインはハイソサエティーなクラスに響くエレガントなデザインと言えそうです。


バークレイズ(Barclays)のロゴ

バークレイズのロゴマーク

chrisdorney / Shutterstock, Inc.

プレミアリーグの冠スポンサーとしてもよく知られる、バークレイズ。イギリスの3大銀行の一つであり、世界的にみても総資産額が世界2位という超メガバンク。そのロゴデザインは、創業当時から「鷹」がモチーフとなっています。かつては、翼と胸に3つの王冠をあしらった格調高い紋章のようなデザインでしたが、現在は、エンブレムのシルエットと鷹のモチーフはそのままに、極力シンプルに徹したスタイリッシュなシンボルデザインに進化を遂げました。

鷹は空の王様と異名をとるように、力強さや名誉をイメージさせる動物です。また、鷹はつがいになったら一生同じ相手と添い遂げるという誠意を感じさせる動物でもあります。世界的な大手金融機関に相応しいモチーフと言えるのではないでしょうか。そんな鷹をエンブレムのようなフォルムに落とし込み、単体での使用にも充分対応できるシンボルデザインとし、すっきりとしたサンセリフ書体のロゴタイプを横に配置しています。ロゴカラーは爽やかなスカイブルー。透明感をもつこの色は、金融機関として当然求められるクリーンな企業姿勢を表しているのではないでしょうか。


カナダロイヤル銀行(RBC)のロゴ

カナダロイヤル銀行のロゴマーク

Lester Balajadia / Shutterstock, Inc.

カナダロイヤル銀行は、資産及び時価総額においてカナダの最大規模の銀行であり、世界でも有数の大手銀行の一つです。そのロゴデザインは、深く濃いブルーのエンブレムに、ゴールドのライオンが描かれており、その手には地球のような球体が抱えられています。百獣の王ライオンをモチーフにした大手銀行らしい堂々たるシンボルマークです。立派なたてがみが印象的で、地球を手にしていることから、世界を手中に収めているような自信と誇りが見て取れます。シンボルマークの下には白ですっきりと「RBC」と書かれており、このエンブレム一つで企業名まではっきりと伝わる視認性にも長けたロゴデザインです。


ABNアムロ銀行(ABN AMRO)のロゴ

ABNアムロ銀行のロゴマークJPstock / Shutterstock, Inc.

オランダのアムステルダムに本拠地をおく投資銀行。世界的な金融危機、リーマンショックの折、一時国有化された時期もありましたが、現在は株式上場し大手投資銀行として地位を築きなおしました。

ロゴデザインを見てみると、シンボルマークはグリーンの盾のようなエンブレムに右下から鋭利に切り込む黄色の三角形。日本の若葉マークを連想させる色使いと形ですが、色の組み合わせとしては、対照色相関係にある2色で互いの色を引き立てあう好相性の組み合わせです。故に視認性に優れており、一度目にすると記憶に残る印象的なデザインです。盾を象ったデザインは、「顧客の資産を守る」という意味合いも感じさせ心強さを助長するシンボルです。


中国銀行(Bank of China)のロゴ

中国銀行のロゴマークTonyV3112 / Shutterstock, Inc.

中国銀行は、北京に本店をおく中国第2の商業銀行。そのロゴデザインは、中国の古銭をシンボルマークとし、筆文字で描かれたロゴタイプとセットになっています。中国の硬貨は昔、中央に四角い穴が空いており、戦国時代以前の頃より流通してきました。その古銭をベースに中央に1本ラインを入れ、「中」の字を見事に浮かび上がらせています。信頼に重きをおく業態であることから、安定感のある形状をしており、中心に伸びる線は中央の四角形を通じて一つになっているようにも見えます。銀行と顧客が手を取り一つとなる姿がそこに描かれているのではないでしょうか。

そして、特筆すべきはやはり毛筆のロゴタイプ(カリグラフィー)です。自国の文化の象徴でもある「漢字」を全面に出すロゴタイプは、西欧諸国には真似できないオリジナリティに満ちたロゴデザインです。


ウェストパック銀行(Westpac)のロゴ

ウェストパック銀行のロゴマーク

Gordon Bell / Shutterstock, Inc.

ウェストパック銀行は、オーストラリアのシドニーに本店をおく四大市中銀行の一つです。ロゴデザインは頭文字「W」をモチーフにしたシンボルマークを中心に構成されています。3つの赤い四角形で「W」を描いているのが特徴的で、シンボルマーク単体でもロゴマークの機能を果たし、またシンボルマークに続き「estpac」を付加することでロゴタイプとしても読むことが可能です。

オーストラリアにはエアーズロックに代表されるような「赤色の大地」や「巨岩」といった風景が知られています。この3つの赤い四角形は、まさにそれらの景色とシンクロするような点があり、オーストラリアを代表する銀行として相応しいロゴデザインではないでしょうか。また、上方に広がっていく図柄は、発展や成長を感じさせ、期待感のもてるデザインに仕上がっています。


銀行

世界の銀行のロゴ、いかがでしたでしょうか。どのロゴデザインもそれぞれの意味・主張があり個性的なものが多く見受けられました。共通して言えるのは、「銀行」という業態に不可欠な「信頼」や「安定」というキーワードが必ずロゴデザインの中に感じられたこと。そして、国境をまたに架ける金融市場に通用するような、ボーダレスでグローバルなデザインであることではないでしょうか。

どのデザインも、ロゴタイプがなくても認知することのできる、記憶に残るシンボルマークを携えています。それは「言葉」を超えるコミュニケーションが「デザイン」によって行われている証に他なりません。

 

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