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ポスターやチラシデザインの超参考にしたい!Mr.Xerty©のデザインたち

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Mr.Xerty©(本名Brice Chaplet)をご存知でしょうか?世界で活躍するクリエイターとして様々なメディアで紹介されている彼は、フランス在住のフリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターです。

写真を加工してイメージを作り上げる「フォトモンタージュ」技法に長けており、書籍や雑誌、チラシ・ポスターなど様々なグラフィックワークに自身のイメージを展開しています。彼の強みはまず、洗練された画像加工の技術です。Photoshopを使いこなす彼は作品制作プロセスの紹介記事もたくさん手がけています。WEBサイトも是非チェックしてみてください!※記事掲載はデザイナーに許諾を得ています。( Thank you Mr.Xerty© !!  個人的にも大ファンです。Mr.Xerty、許可をくれて本当にありがとう。)

パリ発信の斬新なイメージ、Mr.Xerty©の世界

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彼の豊かなイマジネーションが創作活動を支えています。50年代のアメリカ、都市生活、シュールリアリズム(超現実主義絵画)、サーカス、擬人化された動物、神秘(禅)などのモチーフをベースに、抽象的な形態や3Dモデルを組み合わせて構成し、色調やテクスチャー(素材感)を整えて作品をつくりあげます。完成されたイメージは、空想の建物やひねりが加わったような都市景観を生み出し、独特の世界になっています。この作品は、彼が暮らすパリをイメージしたものです。まずは、彼の世界をいくつか見ていきましょう。

 

多国籍感のある豊かでシュールな空間

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Mr.Xertyは大学で地理学と地図学を学んでおり、世界中の史跡や動物や風景を取り入れて作品を作る傾向があります。画像加工ソフト(photoshop)を駆使してそれぞれの要素の色調をまとめ、ひとつの空間にあるかのように仕上げていきます。
この作品では、中央の巨大なバイオリンから木が生えだしています。また煙のようなイメージがオーケストラ指揮者の手を形作っており、象に乗って訪れた旅人は不思議なオブジェから流れる音楽に聴き入っているかのように見えます。彼の作風には、シュールリアリズムの画家、サルバドール・ダリやマグリットの影響が伺えます。

 

音楽から産み出される空想世界

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“MUSIC IS MY SANCTUARY”と題されたこの作品も、音楽から着想を得ているようです。眼球、鳥の頭をした紳士、遺跡、海のイメージがこぼれだす額、古い蓄音機、タイプライターなどがシンメトリー(左右対称)に配置され、不思議な世界を創り上げています。Mr.Xertyはこの「宙に浮かんでいる」ラピュタのようなイメージが好きなようで、繰り返し現れてきます。彼はエンキ・ビラルやメビウスといった「バンド・デシネ」作家に強い影響を受けており、「シュールな浮遊感」というキーイメージが共通しています。

 

禅の精神が導く神秘的なイメージ

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彼が好んで聞くテクノミュージックはアジア圏の民族音楽とも強いつながりがあり、仏像を中心に据えたこの作品からは、そんな東洋思想からの影響がみられます。「さほど静かではない」と題されたこの作品はパリのテロ事件の後に制作され、その後Photoshop Magazineに掲載されました。彼はまわりの人々に平和と静けさを伝えたかったようです。

 

サーカス・動物・都市生活者の奇妙な瞬間

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映画監督のティム・バートンやテリー・ギリアムからも影響を受けたMr.Xertyは、サーカスや擬人化された動物をよく登場させます。奇抜なイメージを放つ世界は強いインパクトがあり、見る人の記憶に鮮烈な跡を残します。登場人物(動物?)たちの間に生じている微妙な間(ま)は、興味を引く面白い何かがこれから始まるような予感に満ちています。

 

レトロなアメリカに迷い込んだアリス

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50年代のアメリカに迷い込んだ不思議の国のアリスが描かれています。「その味とその味は合わない」と思えるような組み合わせでも、料理の腕次第で「新しいメニュー」になり得ます。 “MAD DINER”と題されたこの作品は、あわせ味がもたらす豊かな可能性を教えてくれます。

 

子供がよろこぶ面白さ~科学雑誌の挿画

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子供向けの科学雑誌で、「光の速度」に関するコラムを演出するイラストレーションです。速度感を表現するため、疾走する自転車に強いパースをつけ、正面から描いています。背後には輝きのエフェクト。道路標識を「!」マークにすることで驚きの演出も加えています。科学的でとっつきにくいテーマですが、これなら子供でも興味をもって読んでくれそうですね。彼は雑誌のターゲットに合わせて微妙な味付けで描き方を調整しています。ポスターやチラシといった広告媒体においてもターゲットを意識したデザインの調整は必要不可欠な工程です。

 

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同じ雑誌の別コラムです。こんどは「地球温暖化」に関するコラムを演出しています。水が枯れてひび割れた砂漠に立たされたペンギンたちは、ベールをかぶり、脇にはペットボトルの水をかかえ、汗を流しています。暑そうですね。宙を見上げる姿がなんだかかわいそうです。「こんなに可愛らしい彼らにいったい何が起きているんだ?」このイラストを見た子供たちは、その原因を知りたくなってしまいますね。ターゲットの気持ちを引き寄せる強いイメージとして成功しています。

 

小さな世界~雑誌の表紙イラスト

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地面、道路、人とバイク、都市、気球、空、鳥。地面は液状に変化しながら全体として球状にまとまっています。“LITTLE WORLD”と題されたこの作品は、デザイナーご用達の画像加工ソフトPHOTOSHOPのユーザーに向けた雑誌の表紙として描かれています。

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大人向けの雑誌なので、落ち着いた色調を使い、全体的にコントラストを高めて存在感を強く出しています。独自の世界を創り上げ人々の好奇心を満足させることはクリエイターの醍醐味のひとつでもあります。「こんなことをやってみたいな」と新人デザイナーが手に取るシーンが目に浮かびます。

 

楽しさ溢れる~音楽イベントのチラシデザイン

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Mr.Xertyは音楽関係のイベントを紹介するチラシを数多く手がけています。「好きこそものの上手なれ」なのか、音楽が好きな彼はこの分野をよく知っており、とても楽しんでチラシを作っているように見えます。「よく知っている=うまく描ける」この方程式はチラシ作りで押さえておきたいポイントです。よく知っていることに関してはたくさんのイメージ案を引き出すことができますし、様々な組み合わせや工夫もしやすくなります。逆にいえば、よく知らない分野に関してはできるだけたくさんの情報を集めることで、より多くの引き出しが生まれ、有効なイメージを生み出す可能性も高まるのです。

 

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イラストをメインに据えた音楽イベントのチラシデザインです。無彩色の背景に2人のDJのモノクロイラストとイベントタイトル。2人のイラストと重なる建物や街灯、アンプなどの画像と、モノグラムのようなパターンやグラフィティの欠片たち。躍動感を与える配置とアクセントカラーが映えて、チラシでありながらサウンドを感じるデザインに仕上げています。
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この2枚のチラシは同じシリーズの音楽イベントチラシです。向かって左は画像をすべて同じカラー・トーンで統一し、絵柄のもつ強烈なインパクトとそれをさらに助長する光彩で、アーバンでクレイジーなイメージを作り出しています。右は左とは正反対に絵柄にカラーをふんだんに使い、サイケデリックでゴージャスな印象。イベントタイトルと会場であろうビルの画像を共通項に、異なった見せ方をしながらも世界観を共有させるシリーズ広告の良い例です。

 

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こちらもシリーズものの音楽イベントチラシの例です。全体の1/3を占める存在感の大きいタイトル、シンメトリーに配置されたデザインパーツ。構成がどれも同じでベースのカラーリングを毎回変えています。イベントのタイトル通り、内から外へ飛び出すような躍動感が伝わってきます。このイベントを認識している人なら一目で「あのイベントの新しい告知だ」と理解できるアイコニックなデザインです。

 

物語を伝える~映画のポスターデザイン

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1992年に撮られたファンタジー映画のブルーレイ化パッケージ、チラシ、ポスター、webサイトです。幽霊の音楽教師が音楽業界を目指す若者を後押しするというストーリーです。映画公開時のビジュアルは若者と幽霊(赤い服)のふたりだけのシーンでしたが、サブキャラクターを数名登場させてボリュームアップを図ることで、それぞれのキャラクターが担うストーリー展開を想像させ、より期待感がもてるイメージに仕上がっています。このような構成はフォトモンタージュ技法が得意とするところです。彼は007シリーズなどの映画ポスターに影響を受けています。

 

リアルをファンタジーに変換する~デザイン事務所のポスター

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パリの風景をバックに、設計図や家具、釘などが浮遊する空間の中心にあるのは、さまざまな内装を生み出すインテリア工場。工場のデザインは彼が影響を受けたというレトロフューチャーなスチームパンクテイスト。色調もあざやかさを抑え、全体に落ち着いた雰囲気を漂わせています。インテリアデザインの纏うイメージは、モダンで硬質、ともすれば幾何学的なイメージさえ想起させますが、彼の描いたポスターデザインは、自然と文明が融合し、自由でファンタジック、インテリアデザインのもつ可能性をより大きく、かつユニークに見せます。こうした企業イメージを視覚化するポスターは、クライアントからの要望を汲み取り具現化することがとても重要な作業となります。

 

問題意識に現実味を加える~環境保全プロジェクトのポスター

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開かれた本の中身が北極の環境調査風景になっているシュールなデザイン。インターネットを介して環境保全活動への理解と参加を促すキャンペーンの告知ポスターデザインです。都会生活者にとって他人事になってしまいがちな「環境問題」を日常のパーツと組み合わせることにより、問題を身近に感じられるよう工夫されたデザインです。まるでポップアップの3D絵本のように立ち上がる雪山、本の外側にまで飛び出した氷塊とペンギン。ファンタジーと現実とを混同したデザインに、キャッチコピーの最後のワード「NOT A FANTASY」がうまく絡み合う。見た者を唸らす秀逸なポスターです。

 

虚構性を表現~TV番組イベントのポスター

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フィクションをテーマとするTV番組のイベント用ポスターです。「架空の世界」がテーマですからMr.Xertyがまさに得意とする分野です。彼は虚構性を強くイメージさせる人体の変容を用いて、シュールリアリズム寄りの奇妙な世界を創りました。座っている人物がメインキャラクターで、宙を舞っている2名の男女がサブキャラクターになっています。瞑想のポーズで印を結ぶメインキャラクターの頭部から伸びるモニターを実らせた奇妙な木。頭部が歴史ある建築物になりながらも愉快そうに飛び跳ねる2人。静と動、過去と未来。相反する要素をミックスし、豊かなイマジネーションの世界を表現するこれらのキャラクターが、メディアによって組み合わせを変えて登場してきます。

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ビルボード、メインキャラのみが登場です。

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会場スクリーン、サブキャラがやや大きめの扱いに。

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ご招待カード、バッグなどのアイテム。サブキャラにクローズアップしたバージョンも展開しています。背景素材もしっかり流用されて、全体のイメージが統一されています。どれもインパクトがあり、人目を引きますね。これだけシュールなテイストで全面展開してくるのは、アートを愛するフランスならではという感じです。

 

豊かなイメージ~銀行のポスターデザイン

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最後に紹介するのは、BNP Paribasという金融企業が展開するオンラインバンク“Hello-Bank”のポスターです。このプロジェクトではあまり「奇妙な世界」は求められていません。目をひく、キャッチーな仕上がりでありながら、安心と信頼感を必要とする銀行という業態に合った落ち着いたモチーフを選んで構成し、爽やかにまとめています。一見して”砂漠に浮かぶオアシス“とでも言えそうな大地に芝生とビル、女性、絵画。椰子の木はリゾートも連想させます。都市生活者の豊かな理想が盛り込まれていますね。色調も明るめ多めに調整されています。

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ネットバンクを示す@マークを飛行機雲で表現したり、スマートフォンを「乗りこなす」サラリーマンなど、遊びも随所に取り入れて、気軽に使える雰囲気を作り出しています。

 

イメージの重奏で伝わる「良さ」とは?

ポスターやチラシのデザインにおいてはシンプルに伝えることが重視されがちですが、このような「変化球」も他社から一歩抜きん出る戦略として、場合によっては一考の余地ありかもしれません。彼の作品から学べることは、いくつかの異なるイメージを組み合わせることによって生ずる視覚的インパクトの強さです。広告コンセプトやターゲットに合わせてテイストを整えていけば、この「強い変化球」が活躍するポスター・チラシデザインも生まれてきそうですね。

Design : Mr.Xerty © ( Paris, France )

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