ピラミッドや古代文明、砂漠というイメージが色濃い、アフリカの国エジプト。その反面、アフリカ最大の都市として評価されたカイロを有する、アフリカ屈指の経済国でもあります。
Ahmed El Azazy 氏は、そんなエジプトでロゴデザインやブランディングを手掛けるデザイナーの一人。独特の力強い色使いと、商品と結びつくモチーフをわかりやすいシンボルにしてビジュアライズする、デザイン力に長けたプロジェクトを多数展開しています。エジプトではどのようなデザインが受け入れられているのか、異文化の香りを感じながらみていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。（Thank you, Ahmed ! ）
フルーツや野菜を冷凍した新商品のロゴデザインとブランディング例
Fruzeeは5種の果実（マンゴー・グァバ・ザクロ・ピーチ・いちご）を冷凍処理しパッケージにした冷凍食品。フルーツを解凍するだけですぐに食べられるというメリットを全面に商品展開することになりました。コンセプトは「Beyond the beauty of the fruit」。「果物の美しさを越えて」という意味になります。生のフルーツを食べるためには、洗ったり、皮をむいたり、カットしたりというステップが必要です。Fruzeeはそのステップを、解凍→食べるという2段階だけに絞った画期的なアイテム。フルーツの美しさを越え、簡単便利に美味しく食べられるという、商品の機能性や利便性の側面を捉えたコンセプトです。
ロゴマークを作成するにあたり、ビジュアルのモチーフになるアイコンが先立って制作されました。5つのフルーツと冷凍を意味する雪の結晶です。手書きで描かれたキャッチーなイラストにそれぞれのモチーフを象徴する鮮やかなカラーが色付けられました。
先ほどのアイコンを並べ、ロゴマークのシンボル「F」が作成されました。この表現方法は、コンセプトに関連する細かなイラストをパーツとし、集積することで一つの具象をあらわす、近年のロゴデザインにみられるトレンドの一つです。通常、ロゴマークとは拡大縮小に耐えられるよう、細かすぎるイラストや文字は使用しないのがセオリーですが、あえて目を凝らして見てみたくなるデザイン表現を採用することで興味を引く斬新な手法です。
シンボルマークが完成し、それに対応するロゴタイプも制作されました。丸みを帯びたボールドタイプのサンセリフ体で綴られた商品名は、親しみを感じやすく可読性の高い、品名ロゴとして使い勝手の良いフォントです。
それぞれのフルーツと冷凍をあらわすカラーパレットが設定され、単色使用の場合のデザインパターンもシュミレーションされています。こうした細かな設定を予め決め、ロゴのレギュレーションを固めていきます。
ロゴマークとフルーツアイコンをビジュアルの軸として、パッケージデザインやPOP、ノベルティグッズなどさまざまなデザインがなされています。イラストとフルーツのイメージカラー、ロゴマークの3つが予め決めたルールに従いデザインされることで、どのデザインをとってもfruzeeのものであるという認識をもつことができます。その積み重ねがビジュアル・アイデンティティを形成し、やがてブランドそのもののイメージとなります。
同様の手法で野菜のフローズン商品のロゴマークも作られています。品名はarena。ブロッコリーやにんじん、ビーンズなど全11種類の野菜を採ることができます。前述のフルーツ同様、手軽さと美味しさ、そして栄養やビタミンの補給に最適な商品となっています。
ロゴを形成するパーツとして野菜のイラストアイコンが制作されました。フルーツと異なるのは、カラーをグリーン一色に統一し、よりイメージの一本化に徹している部分です。
arenaの「A」をモチーフとし、野菜たちがシンボルマークを形成していきます。野菜の大小や角度などをうまく調整し、隙間なく埋めていきます。
ロゴカラーに設定された鮮やかなグリーン。フルーツのジューシーな多色使いに比べ、とてもシンプルでヘルシーなイメージがあります。グリーンはその他にも、自然や成長、生命力や環境への意識など、どれも清々しく前向きなイメージワードばかりです。また、グリーンを生活に取り入れることで、身体的にも精神的にもさまざまな効果があることがわかっています。不安の緩和やうつ病の改善、心身ともにリラックスさせる効果が知られています。
Aranaは栄養価豊富な野菜を手軽に採ることのできる商品。さまざまなベネフィットが想像できるグリーンをロゴカラーに使用することにより、健康意識の高い層へアピールしやすくデザインされているのです。
エアーコンディショナー販売サイトのロゴデザインとブランディング例
takeefyは、エアーコンディショナーに特化したショッピングサイトの名称です。メジャーなブランドの商品を数多く取り揃え、高品質のサポートサービスと共に、廉価で提供しています。その背景には業界に携わって25年という経験がベースになっており、エアーコンディショナーに精通したスタッフが、販売はもちろん、修理、設置など幅広いニーズに応えられる体制をつくっています。また、webショップという利点を生かし、24時間365日休みなく対応できるというのも魅力の一つになっています。
takeefyのロゴデザインにあたり、デザインのベースとなるモチーフを検討するところからはじまりました。ブランド名の頭文字「T」と、エアーコンディショナーの吹き出し口、そして「風」をイメージし、シンボルデザインが形作られました。
左から右へ躍動するようなダイナミックな動きのあるこのシンボルマークは、いくつものサークルをガイドとし、慎重に設計されました。また、右肩上がりのこの形状は、単にエアーコンディショナーのシンボルとしてだけでなく、サービスの売り上げ向上をイメージさせる図柄にもなっています。
ロゴタイプは近未来的な雰囲気を感じさせる書体 Neo Tech がベースになっています。やや丸みを帯びたサンセリフ体で、独自のカーブラインや文字のフォルムが先進性を感じさせます。こうしてデザインされたロゴタイプはシンボルマークと合わさり、ロゴマークとなります。わずかに傾斜したロゴタイプが、躍動的なシンボルマークと一緒になることで、爽やかな風を感じるような颯爽とした印象のロゴマークが誕生しました。
ロゴデザインのカラーは、涼やかな風をイメージするディープブルーとライトブルーを設定しました。暑いエジプトに爽やかな風を吹き込むような清涼感あふれるカラーリングです。単色使用時、また反対色で表現する場合のレギュレーションも詳細に設定し、ロゴイメージの統一を図っています。
ロゴマークのレギュレーションに準じるかたちで、文房具やユーザーインターフェイスがデザインされました。それに続き、ユニフォーム、社用車も同様のコンセプトで制作されています。風が吹き抜けるような清々しいイメージと、近代的な技術を思わせるビジュアルアイデンティティが確立されています。
まとめ
繊細でありながらも力強さを感じるデザインが特徴的だったように思います。はっきりとした色使い、モチーフの特徴を生かしたデザインは、見ている側にそのブランドの特性をダイレクトに印象付けるロゴを作り上げていました。
エジプトは乾燥地帯のイメージが強く、色彩豊かな印象を抱いている人は少ないかもしれません。しかし、Ahmed El Azazy 氏のロゴデザインのように、カラフルでモダンな側面が、今のエジプトには存在しています。今後もどのようなデザインが登場するか楽しみですね。
design : Ahmed El Azazy ( Egypt )
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