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「ダイナミックロゴ」が2028LAオリンピックの正式エンブレムに

ロゴが動く!?多様性を体現するアニメーションロゴがロス五輪の正式エンブレムに

「ダイナミックロゴ」が2028LAオリンピックの正式エンブレムに

2020年9月1日(現地時間)、2028年ロサンゼルスオリンピック・パラリンピック組織委員会が大会エンブレムを発表しました。ロサンゼルスでオリンピックが開催されるのは、1932年、1984年に続いて3回目となります。そして、第34回目にして初めて「動く」エンブレムが採用されました。ロサンゼルスの略称LAの「A」の文字が次々と姿を変えていく動的なロゴデザインです。

 

ひらがなの「あ」も登場する30種以上のエンブレムデザイン

2028年開催の夏季オリンピック・パラリンピックのロサンゼルス大会は「LA28」と略され、SNSではハッシュタグ「#LA28」で関連情報や投稿があがってきます。エンブレムも「LA28」とオリンピックロゴ・パラリンピックロゴとの組み合わせです。

極太のサンセリフ書体のLと28は固定で、「A」の文字がアニメーションです。さまざまなデザインで描かれた「A」が連続的に変容しながら、全体でひとつのエンブレムとなっています。9月15日現在、全部で32もの異なるバージョンが公表されています。

野球チームのロゴ風のものからさまざまなタッチのイラスト風のものまで、まさにロゴデザインのショーケースとなっています。そのなかには、ひらがなの「あ」が、バスケットボールを抱きしめているものもあります。テレビのニュースなどで目にしているかもしれませんね。

 

ロサンゼルスは単一のアイデンティティを受け入れない

ロサンゼルス五輪組織委員会のケーシー・ワッサーマン(Casey Wasserman)会長は、

ロサンゼルスは単一のアイデンティティを受け入れない。ロサンゼルスを表現する方法はひとつだけではない

と語りました。ロサンゼルス市民ひとりひとりにそれぞれのアイデンティティと物語があるというわけです。

そして、

28年のオリンピックは、ロサンゼルス市民の総合的なクリエイティビティを発揮し、我々の強みである多様性を讃えるものになるでしょう

と述べています。

何百というさまざまな母語を持つ何百万ものひとびとが集うロサンゼルスは、単なる都市ではなく、ひとつの考え方であり、ひとつの活動である。そう宣言しているロス五輪公式サイトには次のように書かれています。

「LAは、果てしない夢を追い続けるための、永遠のキャンバスなのです」

すなわち、ロサンゼルスの本質である「多様性」を表現するために、エンブレムはこのように変容しながらさまざまな顔を見せるデザインになったというわけです。

 

ロサンゼルスゆかりのひとびとの多様な「物語」

レジェンドアスリートやパラリアンの物語

それぞれのロゴは、ロサンゼルスゆかりのアスリートやクリエイターをはじめさまざまな分野のひとびとの協力によってデザインされました。公式サイトでは、「LAストーリーズ(LA Stories)」のページで、「A」のデザインとそこに込められた思いが紹介されています。

そこには、五輪金メダルを6個獲得した短距離走者アリソン・フェリックス(Allyson Felix)氏や、200m走と400m走で4個の五輪を持つレジェンド、マイケル・ジョンソン(Michael Duane Johnson)氏の名前もあります。




パラリンピック陸上選手のスカウト・バセット(Scout Bassett)氏のデザインは、無限の可能性と夢を表現しています。これは、陸上トラックと無限大のマークをモチーフとして中国の竹細工のように組み合わせているのではないでしょうか。

ストリートカルチャーのカリスマやアーティストの個性的なデザイン




「グラフィティのゴッドファーザー」と呼ばれるアーティストのChaz Bojorquez(チャズ・ボホルケス)氏は、独特のレタリングで「A」を描いています。Bojorquez氏は、生まれ育ったイースト・ロサンゼルスのカルチャーに影響を受けた作品を1960年代から発表してきました。メキシコとカリフォルニアの大学で学んだアートと東洋の書道がミックスされた作風が特徴です。




ナイキやコカ・コーラ、ラコステなど世界的ブランドとのコラボレーションを多く手がけているSteven Harrington(スティーブン・ハリントン)氏の作品もあります。サイケデリックポップアーティストであるHarrington氏の代表的なキャラクターであるヤシの木がAの字を突き抜けています。これは、ランナーが記録の壁を破ったときの陶酔感を表現しているということです。また、Harrington氏のこのエンブレムは、写真共有アプリSnapchatのAR体験機能と連動しています。

 

コミュニティのリーダーや起業家、女優など多彩な参加者




ミュージシャンのビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)氏のデザインは、トレードマークの髪の色と同じグリーンで、自身の名前のロゴと同じ書体が使われています。




前述のひらがなの「あ」を使ったデザインは、リトル・トーキョーに建設中のイベント・スポーツ多目的施設「テラサキ武道館」をサポートしている日系の高校生Aidan Kosaka(アイダン・コサカ)氏の作品です。




ほかに、14歳でALSと診断された女優Lauren “Lolo” Spencer(ローレン・ロロ・スペンサー)氏、タトゥーアーティストDr. Woo(ドクター・ウー)氏、タコスレストランのオーナーやアパレルブランドThe Hundredsの創立者などのデザインも含まれています。

それぞれの「A」を実際にデザインしたのは誰か?については明らかにされていませんが、アーティストたちのように自らの手でデザインしたものもあれば、一部のデザインは、大会委員会の外部クリエイティブパートナーがサポートしています。クリエイティブパートナーには、ナイキのデザインチームや、デジタル制作会社MediaMonks、クリエイティブスタジオStink Studiosなどが含まれています。

 

ロゴデザインの随所に見られる「多様性」のコンセプト




公式サイトでは特徴的な書体が使われています。フォント「ITC Machine」のように弧を描く部分が面取りされた幾何学なデザインです。HTMLのソースを見ると「LA28Text」「LA28Display」といったコードが見られるので、オリジナルフォントなのでしょう。

エンブレムの「A」を除く「L」と「28」は、見出しの極太書体をアレンジしたかのように見えます。しかし、よく見ると3つとも同じスタイルではありません。「L」はエッジに控えめな丸みがつけられていますし、「8」は直線がまったく使われていません。多様性の表現である「A」が目を引きますが、残りの3文字にもさりげなく同じコンセプトが反映されているのです。

また、公式サイトのエンブレムは、盾のようなフォルムの白地のなかに置かれています。この白いエリアの4つのコーナーはすべて異なっています。ここにも「多様性」の考え方が反映されていると考えられます。

ちなみに、アスリートやクリエイターが提供したデザインに加えて、パラリンピック委員会が提供したエンブレムがあります。多様性を受け入れることで得られる美しさを表す「プリズム(prism)」、パラリンピックの4つの価値のひとつ「公平(equality)」、退役軍人や軍関係とパラリンピックとのつながりを象徴する「迷彩柄(camo)」などです。これらパラリンピックの白いエリアはオリンピックに対して左右が反転しています。

2024年パリ大会のエンブレムは2019年10月に公開されました。オリンピックとパラリンピックのエンブレムが統一されたのは24年パリ大会からです。東京2020でもそうですが、現代のオリンピック・パラリンピックでは「多様性」が重要なコンセプトとなっています。

 

ミルトン・グレイザーの「I❤︎NY」

「I❤︎NY」のロゴデザイン

Boggy – stock.adobe.com – 「I❤︎NY」のロゴ

オリンピックエンブレムからちょっと脱線しますが、2文字を二段に重ねたデザインで有名なロゴに、「I❤︎NY」があります。イラストレーターでありアートディレクターのミルトン・グレイザー(Milton Glaser)氏が生み出し、世界中で同様のデザインが作られるきっかけになりました。

ハートマークは動詞「love」をシンボライズしたものですが、言葉をシンボルに置き換えたのは、グレイザー氏の「I❤︎NY」が初めてと言われています。絵文字が考案されるよりずっと以前のことです。ミルトン・グレイザー氏は、2020年6月26日に享年91歳で永眠されました。

本サイトの記事「ミルトン・グレイザー(Milton Glaser)- ニューヨークから世界に影響を与えた多能のグラフィックデザイナー」もご覧ください。

 

デジタルと未来を考慮したロゴデザイン




国際オリンピック委員会(IOC)は2017年に、2020東京大会の次は2024年がパリ大会、2028年がロサンゼルスと発表しました。2つの大会を同時に決定するのは、1924年パリ大会・1928年アムステルダム開催を決定した1921年以来96年ぶりとのことです。その裏には、巨額な費用のために開催を断念する都市が増えたので、早めに開催地を確保したいという事情もあるようです。

4年後のパリ大会はまだしも、ロサンゼルス大会は、8年先です。ロス五輪委員会は「デジタル時代のためのデザインを考えた」と言っています。デジタル技術の進歩を考えると、8年後にエンブレムがどのような環境で使われているかは、現在のわたしたちの想像を超えているかもしれません。

仮想現実(VR)、拡張現実(AR)を超えて、ミクスト・リアリティ(MR)やエクステンデッド・リアリティ(XR)の中でオリンピックを観戦することが特別でなくなっている可能性もあります。そこでエンブレムがどのように表示されるのか。それを思えば、動いているとか止まっているとかいうこと自体が、すでに古いのかもしれません。

ロス五輪公式サイトのホームページで最初に目に入ってくるのは次の言葉です。

「Creating what’s next. This is LA28」
(これからを創造すること。それがLA28五輪。)


【参考資料】
LA 2028 [ロサンゼルス五輪公式サイト] (https://la28.org)
LA Stories [ロサンゼルス五輪公式サイト – ロゴ一覧] (https://la28.org/en/la-stories.html)

※公式WEBサイト情報もあわせてご確認ください。



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