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レターアーティストのビンセント氏

左利きでカリグラフィーを行うことの苦労と工夫

カリグラフィーは西洋における書道に近いと言えるでしょう。ブラシを用いて、有機的に文字を描きます。今回は、左利きのレターアーティストであるビンセント・デブール (Vincent de Boer) 氏のインタビューをご紹介します。ビンセント氏は左利きであることの制限を受け入れながら、数々の美しいカリグラフィーを輩出しています。

原文 : “Use the Tools at Hand: Performing Calligraphy When You Are Left-Handed”

以下翻訳内容です。※翻訳・掲載は記事製作者の許諾を得ています。(Thank you, TypeThursday ! )

 

ツールの使い方:左利きでカリグラフィーのパフォーマンスを発揮するには

レターアーティストのビンセント氏

壁に直面した時、あなたならそれをどうやって乗り越えますか?今週のインタビューでは、カリグラファーのビンセント・デブール氏にカリグラフィーへの情熱と、左利きでカリグラフィーを行うことについてディスカッションしました。

 

TypeThursday(以下TT):ビンセント、今日はTypeThursdayへようこそ。

 

ビンセント・デブール(以下VB):やあ!初めまして。

 

TT:All Eyes on Typeについてお話しするのが楽しみですが、まずはあなたのことについてもう少し聞かせてください。作品から文字への愛を感じます。それについてもう少し詳しく聞かせください。

 

ビンセント氏のモチベーション

VB:ありがとう!私の名前はビンセント・デブールで、オランダ出身のレターアーティストです。グラフィックデザイン分野での経験がありますが、長い間タイポグラフィに興味がありました。手で文字を作るということは私にとって必要不可欠です。それがライティングでもドローイングでも、とにかく手で文字やアルファベットを作ることです。ここ2年はアーティストとして独立して仕事をしています。それ以前は、二人のタイプアーティストと共にグラフィックデザイン事務所をやっていました。

 

TT:素晴らしいですね。文字を手で作るきっかけになったのはどんなことでしたか?それは個人的な好みでしたか?それとも学校やメンターから教わったもの?

 

VB:とても幼いころから絵を描くのが好きでした。もちろん4歳ではまだ字は書けませんでしたが、漫画などを描いていました。それからずっと、無意識に左手を洗練させる挑戦をずっと続けています。11歳の時にグラフィックデザインに興味を持ちました。手で描くこととグラフィックデザインの組み合わせは、とてもロジカルなものに思えました。私は手でモノづくりをすることがとても好きなんです。一本のブラシと一枚の紙、一筋の線。とてもロマンチックだと思いませんか。

 

TT:あなたは左手で文字を書くのですよね?

 

VB:そうです。

 

TT:カリグラフィーは左利きの人にとってとても難しいことだと聞きますが、苦労した経験はありますか?

 

VB:とても苦労しました。左利きだと手で文字をこすってしまうのでとてもイライラしますね。さらに、自分の手で文字が隠れてしまって、最終的な文字が見えない。スペーシングなどがとても計算しづらいのです。右利きの先生のクラスで学んでも、彼らは私達の苦労を全くわかってくれませんでした。でも、無意識に良いことも吸収したと思います。私にとっての創造力とは問題解決によって生まれるもの、つまり、誰も歩いたことのない道を歩くことです。だから、カリグラフィーには不可能なこともあると受け入れる必要がありました。例えば、銅板に文字を描くとか。それからは他のことに集中できるようになりました。手で文字をにじませないように、ドライブラシの技術を学ぶことから始めました。

 

TT:左利きであることの制限をうまく受け入れたのは素晴らしいことですね。異なるライティングツールについて少し教えてもらえますか?さきほど、銅板とドライブラシが出てきましたが、他にはありますか?また、ご自身の経験においてどのように役立ちましたか?

ビンセント・デブールの作品

 

カリグラフィーにおける道具と素材の重要性

VB:私はブラシを最も多く使います。さっき銅板の話をしたのは、インクが乾くのが遅いからです。文字をにじませてしまう可能性が高くなります。金属の道具や金属製のニブをブラシと比べると、前者の方がインクが乾くのが遅いです。もちろん、使う紙によっても異なりますが。一度、ニブを光沢紙に使ったことがありますが、インクが乾くのに3時間かかりました。一度に3つしか文字を作れないので、1文を描くのに3週間もかかったんですよ。とてもイライラするでしょう?だから私は平筆を使います。尖ったブラシを使う時もありますし、唐筆を使うこともあります。万年筆を使う時もあります。ブラシの最大のアドバンテージは、描いている途中にブラシを回転できるところです。一番広い筆幅から少し狭く、それからまた広い筆幅へと、一筆の間に変えることが可能です。ですから、ブラシで自分のオリジナルのストロークを生み出すことができるのです。

 

TT:少しまとめると、使う道具や紙がライティングプロセスに大きく影響するということですね。ブラシを回転させることで作品に命を吹き込むことができるので、あなたは特にブラシを使うことが多いのですね。これでうまくまとまっていますか?

 

VB:とても良いと思います。それと、乾いた筆を使うことで作品にさらなるポテンシャルが生まれます。私の「3Dサジェスチョン」によく使います。(*3次元的に見える作品という意味)

 

TT:あなたが行うAll Eyes on Typeの話をしましょう。どんなイベントですか?

 

All Eyes on Typeフェスティバル

VB:All Eyes on Typeはカリグラフィーとタイポグラフィのフェスティバルです。たくさんのワークショップやレクチャーが用意されていて、展示もありますよ。それから、パーティーもありますし、カリグラフィーの即興セッションなどもあります。タイポグラフィやカリグラフィーをやっている人に必要なものばかりです。Julien PriezやEllmer Stefanなどを講師として招待しています。Julienはワークショップもやりますよ。他のワークショップは私や他のHigh on Typeの同僚が担当します。ワークショップで学べることをいくつか紹介すると、スクリプトレタリング(先の尖った筆)、ブラックレターとローマンカリグラフィー(平筆)などがあります。

 

TT:これは初めて開催されるフェスティバルですよね?

 

VB:そうです、第一回です。過去4年間でも、似たようにタイポグラフィとカリグラフィーのワークショップやレクチャー、展示などを行っていましたが、2日間のフェスティバルとして開催するのは今回が初です。

 

TT:大きな進歩ですね。他にどんな人が参加するのですか?2日間のフェスティバルを行うきっかけとなったのはどんなことですか?

 

VB:オーディエンスと自分たちを驚かせたかったんです。それに、大きなイベントを行うことでたくさんの素晴らしいカリグラファーやタイプデザイナーを招待することができますから。例えば、私が8年前にカリグラフィーのクラスを取っていたブラジル出身のYomar Augusto。それから私の大好きなタイプデザイナーの一人であるアメリカのMark Canesoも。ワークショップはHigh on Typeの講師であるHans Schuttenbeldと私の兄弟であるGuido de Boerと私で行います。

 

TT:素晴らしいですね。あなたにとって、このイベントの成功はどんなイメージですか?

 

VB:二つあります。本当に楽しいものであることと、リアルな教育であること。これがまさに、世界のカリグラフィーを先導していくというHigh on Typeのゴールでもあります。この伝統的なモノづくりにはたくさんの注目が集まっていて、インターネットはタイプとレタリングで埋め尽くされています。しかし、特に初心者にとっては、数えきれないほどのデザインの中から良い例を見つけるのが難しいのです。でも、ビールを片手に憧れのカリグラファー達と話ができるなら、最高ですよね。

 

TT:ビンセント、今日は良い話をありがとう。TypeThursdayに来てくれてありがとうございました。

 

VB:ありがとうございました!

 

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