デザイン思考とデザインスプリントの違いについて

デザイン思考とデザインスプリントの違い

「デザイン思考(デザインシンキング)」と「デザインスプリント」の違いはなんでしょうか?ここ数年、プロダクトやサービスの開発に有効な手法として広く話題になっています。ネット上や書店で目にしたひとも多いと思います。

ドイツのベルリンに拠点を置くイノベーションスタジオAJ&Smartの共同創業者でCEOのジョナサン・コートニー(Jonathan Courtney)氏が、トリュフのパスタの調理法を例に、わかりやすく説明してくれています。

今回は、AJ&Smartの動画「デザイン思考とデザインスプリント(その違いは何?)」を翻訳してご紹介します。※翻訳・記事掲載は許諾を得ています。(Thank you, AJ&Smart !!)

以下翻訳内容です。





やあ、AJ&Smartのジョナサンです。僕が今いるのは、AJ&Smartのウエスト・オフィスだ。あまりここを撮影することはないんだけど、このオフィスが実際はどんな感じかわかってもらえると思う。手持ちで撮影しようと今日思いついたところなんだ。

さて、今日は「デザイン思考」と「デザインスプリント」の違いについて考えてみよう。その答は、かなり明快でシンプルだよ。

では、フリップチャートで説明しよう。デザイン思考とデザインスプリントには明確な違いがある。それがわかれば、もう悩んだり、疑ったりしなくてもよくなる。もし誰かに違いをたずねられたら、同じ説明をしてあげよう。

 

デザイン思考は料理のスキルのようなもの

デザイン思考とは、料理教室に通っておいしい料理の作り方を覚えるのと似ている。

これはプロダクト作りを料理に例えているわけだ。いま僕らが料理の仕方を学んでいるとしよう。

デザイン思考は、ある特定の料理、たとえば、パスタ料理の正しい作り方をおぼえるようなものなんだ。タマネギの正しい切り方、包丁の正しい使い方を学ぶのに似ている。こういった、料理のために覚えなければならない個々の要素を学ぶこととデザイン思考は似ているんだ。

 

哲学、マインドセット、ツールキット

デザイン思考はまさに、これこれの哲学、これこれのマインドセット、これこれのツールキット…といった、様々な技術を訓練し、いろいろなことを学ぶのと同じようなものだ。しかし、そうやって身につけたものをどう組み合わせるかは、君次第だ。

ではここで、君のチームが、トリュフのパスタかなにか、とてもおいしい料理を作るよう頼まれたとしよう。君らは5人のチームだ。全員が調理に必要な個々の技術は知っている。さあ、おいしいトリュフのパスタを作ろう!

まあそうはいっても、かなり時間がかかるだろうね。なぜなら、レシピは無いし、誰が何をすることになっているか、わかっていないからだ。だから、全員があたふたするしだろう。いわゆる「おいしい」パスタがどういうものか?料理の完成形はどんなふうになるのか?を誰も知らないんだから。ちょっとしたカオスな状態になるだろうね。

そこで、デザインスプリントの出番だ。

 

調理法と作業分担

デザインスプリントは実にシンプルだ。これはレシピなんだ。ツールや材料(デザイン思考)に基づいてトリュフのパスタのような料理をどうやって作るかが、レシピ(デジタルスプリント)だ。それからこれはまた、誰が何を担当するかを明確に示したリストでもある。

いいかな。これが基本の「キ」だ。

だから、もし料理の仕方を学んでいるとすれば、ふたつの材料(食材とレシピ)とふたつの技術(切り方と調理法)が必要になるわけだ。まず、実際に食材を調理する方法を知らなければならない。つまり、タマネギの切り方とかナイフの使い方とか。次に、レシピも必要だ。料理を完成させるための段階的に順を追ったガイドが必要だからだ。

すなわち、このガイドがデザインスプリントだ。

 

デザインスプリントはレシピだ

デザインスプリントはレシピだ。デザインスプリントは、マインドセットと学びをデザイン思考から受け継いで、段階的な手順に当てはめたレシピなんだ。

もう一度、デザイン思考について考えてよう。もしデザイン思考だけを身につけたならば、確かにペルソナは作ることができるようになるし、たくさんの技術を個別に実践できるようになるだろう。しかし、手順をはっきりと厳密に示したレシピは入手できていない。

だからもし、「プロダクトを検証してくれないか」と誰かに頼まれたら、オリジナルのレシピを作るために、細切れの技術のどれとどれを組み合わせればよいのか考えないといけなくなるだろう。

非常に腕の良いデザイン思考のエキスパートなら、ちゃんと検証の手順を知っている。

しかし、ほとんどの企業で働く人たちのほとんどは、検証の仕方を教えてくれるレシピが必要となる。実戦で有効性が確認された、弾丸も通さない頑強なレシピ集だ。

それがデザインスプリントだ。

要するに、デザインスプリントは、まさしくレシピなんだ。明確に手順を示したレシピであり、また、誰が何をするかのルールでもある。

キッチンに3人いるとすれば、ひとりがこれをやって、もうひとりがこれ、3人目がこれをやるという具合だ。それから、作業をするタイミングとか、あらゆることが明確になるだろう。料理の完成形がどのようなものであるかも正確にわかる。

 

レシピがあれば料理はできる

デザイン思考はマインドセットとそれを支える理論だ。たとえば、革新的なプロダクトや新しいプロダクトを実際に作り出したければ、そのための共同作業には、デザイン思考とデザインスプリントのふたつがどうしても必要になる。このふたつの関係を理解しなければならない。

ここで、「デザイン思考の理論を知らずに、デザインスプリントでプロダクトを検証できるのか?」という質問が出るかもしれない。答はイエスだ。それは、有名シェフが出した料理本を購入するのに似ている。クールで複雑な料理が載っているけど、やるべきことは、それを読んで手順どおりに段階を踏んで調理をするだけだ。

しつこく食べ物の例えを続けるよ。もしかすると、タマネギを完璧には刻めないかもしれないし、必要とされているとおりにはパスタを調理できないかもしれない。でも大丈夫だ。レシピがあって、誰が何をすべきかさえわかっていれば、パスタ料理を作ることはできる。

 

失われた部分を埋めるピースがデザインスプリント

しかし、もしデザイン思考だけをやりたいのであれば、エキスパートにならなければならない。さらに、各種レシピの作り方を完全に理解していなければならない。デザインスプリントが、パズルの失われた部分を埋めるピースである理由がそこにあるんだ。

プロダクトデザインや革新的なプロダクトについて、これまでにうまくいったプロセスを見てみると、そこにはデザイン思考のようなものがあった。

調査フェーズによく似ている。デザイン思考は、問題を明らかにして、ユーザーを理解し、ブレインストーミングとプロトタイピングをおこなう。こういったことを試すことでユーザー持つ課題に深く歩み入っていくんだ。だから、デザイン思考は、人間中心のアプローチということになる。

次に、ほとんどの場合ここで実装に移ることになる。

フリップチャートのここには、失われたパズルのピース、つまりどうやって実際にプロダクトを評価するか? というピースが必要なわけだ。

そもそも、そのプロダクトを作るべきかどうかをどうやって評価すればいいのだろうか? 僕らはデザイン思考を使っていたのだけれど、明確なレシピが無かった。そのレシピこそがデザインスプリントなんだ。

デザインスプリントというレシピによって、デザイン思考から獲得した学びや技術やマインドセットを、プロダクト作りのプロセスに適用できるようになるんだ。

 

デザインスプリントは有効性が実証されたすぐれたレシピ

それから、デザインスプリントについて僕がとても良いと思っていることがある。AJ&Smartのオフィスを見てもわかるように、僕らはデザイン思考のファンだけど、レシピがなければデザイン思考だけではあまり役にたたないんだ。

以前のプロジェクトでは、新しいアプリ開発を手伝うことになったとき、まずはレシピ作りから始めなくてはならなかった。自分たちのデザイン思考ツールキットを吟味して、このプロジェクトにはどんなレシピが使えるかを考えなくてはならなかっただ。しかも、その都度レシピを変えていたから、ひとつのレシピを複数のプロジェクトで使って実効性を確認することができなかったんだよ。

一方でデザインスプリントは、僕らが何度も何度も繰り返して長年テストしてきたレシピなんだ。そして、僕らにわかったのは、デザインスプリントが、プロダクトを評価したり、新しいプロダクトのアイデアを思いついたり、いろんなことを非常にすばやくテストしたりするためのすぐれたレシピだということだ。

 

プロダクト評価にはデザインスプリントが有効

デザイン思考がいわゆるクリエイティブ分野のためのものであり、デザイナーたちが使っていることから、デザイン思考を使うこと怖がるひとが多いよね。ステークホルダー、プロダクトマネージャー、プロダクトをデザインしたり作ったりするビジネスに関心のある人たち、こういったひとたちの多くがデザイン思考に興味を失っている。

一方で、デザインスプリントはとても客観的で、手順が段階的で、頑強で、本格的な、いわゆる「クリエイティビティ」にはほとんど関わりのないプロセスだ。だから、デザイン思考よりも戦略的でビジネス的な切り口を持っていることもあって、社員のほとんどが気軽にデザインスプリントに参加できるだろう。

デザイン思考は、僕らデザイナーがすべてをさらけ出すことができるのでとても素晴らしいんだけれども、このプロダクトを作るべきか、プロダクトはどうあるべきか、ということになると、実際のところ、やっぱりその質問の解決策はデザインスプリントなんだ。

AJ&Smart : Instagram / YouTube channel

 

参照リンク : Design Thinking Vs Design Sprints (What’s The Difference)
 – AJ&Smart (CC BY 3.0)

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