デザイナーと下請法について ~ 弁護士がお答えします。

デザイナーと下請法について ~ 弁護士がお答えします

1.はじめに

皆さん、こんにちは。弁護士の河本です。

河本氏

今回の記事は前回からの続きです。内容は「自分の著作権を侵害されたとき、何か手はないのか?」です(前回の記事をご覧になっていない方は、是非ご一読下さい。)では、早速始めて参りましょう。

 

2.デザイナーが泣き寝入り…これって弱い者いじめでは?

読者の皆さんは、たとえば、依頼を受けたデザイン等について、発注元から何度も修正要請を受け、内心では「そんなに修正してたら報酬と釣り合わないよ。」と思ったことはありませんか。本当は会社相手にちゃんと意見を主張したいけど、言うと仕事無くなりそうだから言えないという経験はありませんか。

私は、このような構造も1つの弱い者いじめではないかと思います。弱い者いじめとは、力の強い者が力の弱い者に対して力をもって圧迫することだと思っておりますが、上で書いた構造は、経済的な、つまり金銭的ないじめに当たり得ると思います。そして、金銭的ないじめを規制する法律は確かに存在します。それが下請法(正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」)という法律です。

この下請法、実はデザイナーの皆さんにも関係のある法律なのです。

 

3.デザイナーと下請法との関係

デザイナーと下請法

下請法は、もともとは製造業界での弱い者いじめを規制するために成立しました。ですが、プログラムやデザイン業界での弱い者いじめの実態を踏まえ、平成15年の法改正で新たに規制の類型が追加された経緯があります。

この新たに追加された類型「情報成果物作成委託」を解説する前に、まずは下請法が適用される当事者関係をみていきましょう。

上記のとおり、下請法は力の強い者が弱い者をいじめることを禁止します。そして、下請法は力の強弱を資本金で判断します。デザイナーの皆さんに関係のある部分を抽出すると、依頼元の資本金が1,000万円超で、皆さんが個人事業主であれば、下請法が予定する当事者関係はクリアします(下請法上はもう少し場合分けがなされていますが、ここでは話を簡単にするためにこのような表現にしてあります。)

次に、下請法が適用されるための取引、「情報成果物作成委託」をみていきましょう。これは、簡単に言えばデザインやロゴの作成委託のことです(厳密にはかなり細かく類型や要件が規定されていますが、ここでは皆さんにイメージを持っていただくために簡単にまとめています。)

つまり、資本金1,000万円以上の会社が個人事業主であるデザイナーに対して、デザインやロゴの作成を依頼した場合には下請法が適用され得るのです。(※但し、本当に下請法が問題となる取引かどうかは取引の形態等を詳細に確認する必要がありますので、その点はご注意下さい。)

そして、下請法が適用される場合、弱い立場にあるデザイナーを守るべく、法律は力の強い企業に対して様々な制約を設けます。典型的なもので言えば、⑴発注書面の交付義務、⑵不当なやり直しの禁止、⑶代金減額の禁止など、合計4つの遵守事項と11個の禁止事項が設けられています。

そして、この下請法に違反した場合、依頼元は行政から指導や勧告という名のお叱りを受け、勧告を受けた場合は社名や違反事実の概要等が世の中に広く公表されるという何とも重い罰を受けることになります。

 

4.結びに

この下請法違反は、力の弱い側が行政に通報したり、匿名での書面調査に回答することで発覚します。つまり、やり方によっては、皆さんが抱えている問題を解消することもできる訳です。

いかがでしょうか。今まで泣き寝入りと感じていた部分、これは皆さん自身が知識を蓄え、リテラシーを育み、正しく対応することで解消される余地があるのです。

とはいえ、業界構造的にはなかなか解消しづらい問題であることも事実です。大切なのは、自分が心血注いで生み出した作品が傷つけられた、そんなときにどれだけの思いをもってその回復に努められるのか、その覚悟を持てるかではないでしょうか。

 

※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。


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<プロフィール> 河本和寛(弁護士)
1989年生まれ。金沢大学を3年で卒業後、名古屋大学法科大学院に進学し、名古屋の地で弁護士となる。専門は企業法務、知的財産権及び交通事故紛争。また、弁護士1年目から全国各地の企業相手に講師として適正取引推進のための法律普及業務を行っている。

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