デジタル印刷の仕組み・特徴について:印刷史のなるほど雑学25

デジタル印刷機

デジタル印刷とは?

デジタル印刷とは、デジタルデータから紙やフィルムなどに直接印刷する手法です。オフセット印刷やグラビア印刷などに必要な製版と刷版の工程が不要です。

パソコンで作成したワープロ文書やプレゼンテーションをプリントアウトする場合も、デジタルデータをそのまま出力するので、その意味ではデジタル印刷と言えます。

しかし「デジタル印刷」というときは一般に、商業印刷の領域で、製版・刷版の工程までデジタル処理でおこなう印刷手段のことを指します。

工程が省略できるので、時間短縮とコスト削減が図れます。大量に印刷しなければ採算が合わないということもなく、少量印刷に無理なく対応できます。また、データを変更するだけで異なる内容で印刷できるので、目的に応じて少しずつ内容を変えながら印刷できます。

 

デジタル印刷のふたつの系譜

デジタル印刷のルーツについては、インクジェットプリンターとする考え方とデジタル複写機とする見方の2通りがあります。

インクジェットプリンターの技術は、1950年代に医療用記録装置として考案されました。1980年代に米国のIris Graphics社が高解像度のインクジェットプリンターを開発。デジタルプリプレスの色校正に使われるようになります。

デジタル複写機は、写真の技術で原稿を読み取り、デジタル信号に変換して紙に転写します。数十部から数百部コピーすれば、印刷会社に頼まなくても社内で準備できるようになりました。デジタル印刷によるオンデマンド印刷の始まりといえます。

商業印刷の分野では1990年代初頭に、複写機のパイオニアである米ゼロックス(Xerox)社から「オンデマンド」で印刷できる電子制作出版システム「DocuTech(ドキュテック)」が発表されました。

デジタル印刷の歴史は80年代にスタート

独シーメンス(Siemens)社が、1950年代にコンティニュアス型のインクジェットプリンターの特許を公開しました。

米国のIris Graphics社が、1985年に高解像度インクジェットプリンターを開発します。大判の用紙にも印刷できる機械でした。1989年には、Iris 3047がインクジェットプリンターとして初めて、商業印刷の色校正に使われました。

米ゼロックス社が、デジタル複写機をベースにしたDocuTechを1990年に発表しています。レーザーで原稿をスキャンし、高速で印刷できる機器です。デジタル化されたデータは編集可能で、印刷後の製本機能も備えたオンデマンド印刷システムでした。

1993年に、イスラエルのIndigo社(2001年に米HP社が買収)が、世界で初めてのデジタルオフセット印刷機E-print 1000を発売。ベルギーXeikon社も多用途のデジタル印刷機DCP-1を発売しました。

2000年代にはいると、カスタマー・リレーションシップ・マネージメント(CRM)や、One to Oneマーケティングといったマーケティング手法の登場とともに、オンデマンド印刷への需要が高まってきます。

現在は、プリプレスから印刷までの工程だけでなく、製本や折り、箔押し、カットアウトなども含めた全自動ラインを導入している印刷会社もあります。

 

少数印刷とバリアブル印刷が広げる可能性







HP Indigo 12000 Digital Press | Indigo Digital Presses | HP

HP Indigo 12000 Digital Press | Indigo Digital Presses | HP


デジタルデータ後の工程を比べると、オフセット印刷では、部数を限りなく減らしても、コスト圧縮には限界があります。オフセット印刷は高品質・大量印刷が得意ですが、製版・刷版のコストが発生するからです。一方、デジタル印刷では製版・刷版が必要ないので、100部、10部、1部と印刷部数が減るにしたがってコストは下がります。

もうひとつの大きな特徴は、バリアブル印刷(可変印刷)が可能だということです。データでバリエーションを準備しておけば、少しずつ内容の異なる印刷を連続して一気におこなえます。

たとえば、宛名を変えながらDMを印刷したり、カタログの掲載商品の一部を地域によって変えたりできます。さらに、データベースに基づいて、顧客それぞれの好みの商品にカタログの表紙を差し替えたり、消費者が作ったオリジナルデザインに基づいて、何万とおりものバリエーションで商品パッケージを印刷することも可能です。


【参考資料】
Digital printing – Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Digital_printing)
【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-9 デジタル印刷 | JAGAT (https://www.jagat.or.jp/archives/52037)
200万種以上の「キシリトールガム」20周年記念デザインパッケージ (https://www.mdn.co.jp/di/newstopics/53303/)



印刷(印刷機)の歴史

木版印刷 200年〜

文字や絵などを1枚の木の板に彫り込んで作った版で同じ図柄を何枚も複製する手法を「木版印刷」(もくはんいんさつ)といいます。もっとも古くから人類が利用してきた印刷方法です。

活版印刷 1040年〜

ハンコのように文字や記号を彫り込んだ部品を「活字」(かつじ)を組み合わせて版を作り、そこにインクをつけて印刷する手法を「活版印刷」(かっぱんいんさつ)といいます。活字の出っ張った部分にインクを付けて文字を紙に転写するので、活版印刷は凸版(とっぱん)印刷に分類されます。

プレス印刷 1440年〜

活字に油性インクを塗り、印刷機を使って紙や羊皮紙に文字を写すという形式の活版印刷が、ヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gutengerg)によって初めて実用化されました。印刷機は「プレス印刷機」と呼ばれ、現在の商業印刷や出版物に使われている印刷機と原理は変わりません。

エッチング 1515年〜

「エッチング」は銅などの金属板に傷をつけてイメージを描き、そこへインクを詰め込んで紙に転写する技法です。くぼんだ部分がイメージとして印刷されるので凹版(おうはん)印刷に分類されます。

メゾチント 1642年〜

銅版画の一種である「メゾチント」は階調表現にすぐれています。銅板の表面に傷をつけてインクを詰め込み、それを紙に転写します。くぼんだ部分のインクが印刷されるので凹版印刷に分類されます。

アクアチント 1772年〜

「アクアチント」は銅版画のひとつの技法で、水彩画のように「面」で濃淡を表現できることが大きな特徴です。表面を酸で腐食させてできた凹みにインクを詰めて、それが紙に転写されるので、凹版印刷に分類されます。

リトグラフ 1796年〜

「リトグラフ」は水と油の反発を利用してイメージを印刷する方式です。凹凸を利用してインキを載せるのではなく、化学反応によってインキを付ける部分を決めます。版には石灰岩のブロックが使われたので「石版印刷」(せきばんいんさつ)ともいわれます。版面がフラットなので平版(へいはん)に分類されます。

クロモリトグラフ 1837年〜

「クロモリトグラフ」は、石版印刷「リトグラフ」を改良・発展させたカラー印刷技法です。カラーリトグラフと呼ばれることもあります。

輪転印刷 1843年〜

「輪転印刷機」(りんてんいんさつき)は、円筒形のドラムを回転させながら印刷する機械です。大きなドラムに版を湾曲させて取り付けます。ドラムを高速で回転させながら、版につけたインクを紙に転写することで、短時間に大量の印刷が可能です。

ヘクトグラフ 1860年〜

「ヘクトグラフ」は、平版印刷の一種で、ゼラチンを利用した方式です。ゼラチン版、ゼラチン複写機、ゼリーグラフと呼ばれることもあります。明治から昭和初期まで官公庁や教育機関、企業内で比較的部数の少ない内部文書の複製用に使われました。

オフセット印刷 1875年〜

「オフセット印刷」とは、現在の印刷方式の中で最もポピュラーに利用されている平版印刷の一種です。主に、書籍印刷、商業印刷、美術印刷など幅広いジャンルで使用されており、世界中で供給されている商業印刷機の多くを占めています。

インクジェット印刷 1950年〜

「インクジェット印刷」は、液体インクをとても細かい滴にして用紙などの対象物に吹きつける印刷方式です。「非接触」というのがひとつの特徴で、食用色素を使った可食インクをつめたフードプリンター等にも利用されています。

レーザー印刷 1969年〜

「レーザー印刷」は、コンビニエンスストアや職場で身近なレーザー複写機やレーザープリンターに採用されている印刷技術です。現在では、レーザーの代わりにLEDも多く使われています。1980年代中ごろに登場したDTP(デスクトップパブリッシング) で重要な役割をはたしました。


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