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素晴らしいブランディング(ロゴ・デザイン)を納品するテクニック

素晴らしいブランディング(ロゴ・デザイン)を納品するテクニック

「ロゴデザイン・ブランディングのプレゼンテーションって、皆どんな風に行なっているのだろう?」そのように思うデザイナーは多いのではないでしょうか。今回は、数々の有名企業のブランディングを手がける企業 Focus Lab, LLC で、アートディレクターとして活躍している Bill Kenney 氏の記事 「素晴らしいブランディングを納品するテクニック」をご紹介したいと思います。

世界的な企業のロゴ・ブランディングを手がけるデザイン会社が、いかにして「納品」まで辿り着くのでしょうか。非常に具体的なプレゼンテクニックを公開していますので、是非一読されることをお勧めします。

原文 : “Crafting a Great Branding Delivery”

以下翻訳内容です。※翻訳・掲載は記事製作者の許諾を得ています。(Thank you, Bill ! )


素晴らしいブランディング(ロゴ・デザイン)を納品するテクニック

素晴らしいブランディングを納品するテクニック

素晴らしいデザイン・ソリューションはプロジェクトの工程のほんの一部にすぎず、練り込んだプレゼンテーションを行うことも同様に重要です。Focus Labでは、質の高い納品を行うことが、顧客にとっても全体的なコンセプトの進展においても、大きな差を生むことを早期に把握しました。この記事は、あくまでもビジュアル・ブランディング(見た目)に関するものであり、ブランディングのすべての要素(音声、メッセージなど)に関するものではありません。

 

「納品」の定義

私たちは、デザイン製作サイクルの最終時点で顧客へ送った仕事を「納品」 と定義しています。そして書類形式(確認段階)のデザインを「提出見本」と定義しています。Focus Labでは週に1回、その週に出来上がったデザインを提出します。ブランディングの提出見本は毎週金曜日に送るため、コンセプト段階(1週目)から最終システム(6週目~)で少なくとも6週間連続して提出されます。場合によっては、週の半ばでもコンセプトを送ることがありますが、大規模な案件や完璧さの求められるケースです。週の半ばで提出するものは、フィードバックを早めに頂くことを目的としているため、通常は簡単なスクリーンショットやスケッチを送信します。これもまた価値のある作業です。この話題については後程説明します。

 

良いプレゼンテーションの重要性

さて、良い見せ方が大切なのはなぜでしょうか。私たちは適切なビジュアルプレゼンテーションと説明がなければ、優れたコンセプトもそれなりのものにしかならないことを学びました。ロゴデザインを表示するJPGを見ただけでは、私たちも顧客も本来のデザインを把握することは出来ません。JPGの奥に隠されたものまで示さなくてはなりません。ぜひ多くの時間をかけて、詳細、かつ流れのあるプレゼンテーションを作成してください。その努力は大いに報われるでしょう。プレゼンテーションをすることで、顧客は全体的なビジョン・ブランドストーリー・システム全体の仕組みをより深く理解することができます。

 

初期段階

毎週の製作物は、実際のプレゼンテーション形式のレイアウトで行う必要はありません。私たちはたった1枚のアートボードで仕事をしています。これは私たちクリエイターの砂場のようなもので、ごちゃっとしたものをアイデアとして洗い出し、解析し、解決策に磨きをかけます。その後、最高のビジュアルと説明ポイントの両方をプレゼンテーション書類にして送付し、クライアントと議論します。

「提出見本」を、プロジェクトのニーズや目標によって毎週変更することが重要です。つまり、段階1の「提出見本」の目標は段階4とは大きく異なります。したがって、レイアウトとアプローチも同様に変更します。

ロゴデザインのアートボード

ごちゃっとしたアードボードです。ここから始まります。

 

整理されたアートボード

アートボードでの作業後の実際の提出見本はこんな感じです。

 

このようにして、ごちゃっとしたものを取り除き、アイデアを洗い出し、段階1を形にしてプレゼンします。この段階ではいくつかのアイデアのみをプレゼンし、それぞれのアイデアは作り込んでいないことに気付くと思います。こうすることで段階1は方向性を選択するための議論を展開し、焦点を絞る出発点となります。

 

最初の「提出見本」では、洗練されたデザインや完璧なシステムよりも、縛りの無い探求や改善を重視します。デザインの背後にある思考プロセス、そのプロセスに沿うビジュアルなどを共有することは見落としがちなのです。段階1では、特に進んで取り入れられるべき事項です。ワードマップ・スケッチ・アートボードのスクリーンショットなどがビジュアルの具体例です。

これらの例は、他のデザイナーにプレゼンするためだけの良い方法だと考えるデザイナーも中にはいるかもしれませんが、クライアントとの会話にも大いに役立つものだと私たちは気づきました。ここで明確にしておきますが、私は週ごとの作業の全てをプレゼンすべきだと言っているわけではありません。様々なアイデアや探求で初期のプレゼンを楽しんでください。この段階ではまだ完璧を求められることはありませんから。早い段階でより多くを示す大きな利点は、自分自身が間違った方向に突き進んでしまったり、もしかしたら顧客が好み、進めたいと思うかもしれないアイデアを切り捨ててしまったりすることを防げる点です。

 

「何を見せて何を見せないかを選ぶことは、芸術であり、快適さを生み出せる」

 

ここからの各段階では、より焦点を絞り作り込んでいきます。不要なもの(可能性のない選択肢)は取り除き、より多くの可能性のある選択肢に多くの力を注ぐべきです。どこに力を注ぐかは、顧客とデザイナーとで足並みを揃えておく必要があります。いくつかのデザインを捨て、他を追求するような雰囲気や緊張感がプロジェクトに感じられても問題ありません。この毎週のプレッシャーはプロセスを前進させ続けることにつながり、顧客とともに不思議の国に迷い込んでしまうようなことにはなりません。柔軟に対応することは大切で、何らかのプロジェクトで活用されることにはなるでしょう。

ですが、第2段階のデザインで問題が発生しない限り方向性は変えないで下さい。第3段階では、ひとつのソリューションに重点を置き、それをサポートする大きなシステムを構築します。ここまでで、3-4週間です。サポート材料としては、この時点にたどり着くまでに進化させてきた多くのビジュアルがあるはずです。第3段階はだいぶ慣れてきた感じでスタートし、何を最終的なソリューションにするかに焦点を当てていきます。

 

第5週または第6週の最終段階になると、顧客に「投資して良かった、満足した」と感じてもらえるようなシステムが出来上がります。週ごとにデザイン・ソリューションが出来上がる様子を、顧客に見せてきたからこそといえますね。

 

すっきりとデザインを魅せる

このようにして、ごちゃっとしたものを取り除き、アイデアを洗い出し、段階1を固めた状態でプレゼンします。この段階では、少しのアイデアのみをプレゼンし、当該アイデアは作り込みません。こうすることで、段階1は方向性を選択するための議論を展開し、焦点を絞る出発点となります。

 

上述の段階3でお分かりいただいたように、私たちはひとつのデザインに絞っています。選択肢をプレゼンしようとして、無駄な労力を費やすことはほとんどありません。私たちはこれが最善の方向であると確信しています。ブランドストーリーを捉えるために、より深く、より定義されたシステムを構築することに多くの時間を使っています。

 

フローに注目する

15〜40ページ程の資料をデザインする場合、いくつかの主要なビジュアルのフロールールに沿うことが非常に重要です。大きいビジュアル・小さいビジュアルの両方と、複雑なビジュアル・シンプルなビジュアルとのバランスを取ることを忘れないでください。つまり、読み手が複雑なページから複雑なページへと繰り返し飛ばないように、ページレイアウトに変化をつけてください。正確に1ページごとに作業を行う必要はありませんが、資料の流れの中で配慮してください。私は通常、資料を作成しながら30回以上資料をスクロールし、ビジュアルの区切りがどこで必要か感覚を掴みます。このバランスはより良い見た目を生み出し、より良いプレゼンテーションとなります。

 

ストーリーテリングが重要

作業を視覚的にいかに上手にプレゼンするかに加えて、プレゼンテーションの順序付けを検討することも重要です。クリエイティブストーリーを、ひとつひとつ作り上げることを念頭においてください。あなたのクリエイティブストーリーや、どんなデザインを顧客にぴったりだと感じ求めているものだと感じたのかを、顧客が理解できるように、プレゼンテーションは分かりやすく作られるべきです。

 

「要は、最もライトなビジュアルから始め、徐々に自分の最高の出来のビジュアルに持っていくことです」

 

プレゼンの表紙はシンプルかつ魅力的に作成しましょう。私たちは通常、その段階において一番インパクトのあるビジュアルを1つ選びます。あまりにもイメージがかけ離れたものは選ばないように気を付けます。

続いて、参考までにプロジェクトのクリエイティブ概要と、その後の作業について説明が必要なこと等を数枚のコピーベースで準備し、そこに納品のゴールを定義します。こうすることで、実際にビジュアルの作業を開始する前に、顧客にデザインの意図のベースを理解してもらいます。プレゼンテーションのペースや流れは、穏やかに始め、終盤にはとても盛り上がるように構成します。

 

次はアートワークです。繰り返しますが、構築(build-up)がすべてです。特定のデザインに至るまでの改善・検証や進化の過程の例を示すべきです。これは、特定のコンセプトに至った自分の努力や思いの両方を伝えるだけではなく、デザイン作業の深さと幅もアピールできます(「これはやってみた?」という会話にも大いに役立ちます)。

プレゼンテーションの断片

これらは、全体のプレゼンテーションの中の小さな断片ですが、プレゼンテーションによって、どのように初期のソリューションに至るかを示しています。時間をかけて、デザインの探求と思考についてプレゼンしていきます。

 

レイアウトが進んで作業を加えていく際に、うまくいかないと分かっているアイデアを示すことを恐れないでください。私はどんなアイデアが、なぜうまくいかないのかを顧客と話すことが好きです。話すことで、自分の行った探求を示したりアイデアを抜粋したりするのに役立ちます。とはいっても、話すときは慎重になってください。アートボードには、クライアントが見る必要のない多くのデザインが残っています。

さらに資料作成を進め、このあたりで良いと思ったもの(自分がもっともポテンシャルの高いと感じた1つ又は2つのコンセプト)を提示していきます。色彩処理・本文中の画像・印刷物等は、見た目を魅力的なものにする「ミニシステム」と私たちは呼んでいます。

ロゴデザインの見せ方

見た目を形にして、アイデアを売り込むためのミニシステムを構築するいくつかのページの例です。自分のデザインを本文中に挿入することは必須です。自分がここぞと思うところまでとっておき、「ビビッ!」と感じたところで本文に挿入しましょう。

 

資料作成も終盤に近付いたら、カバーページから見た目を意識的に再度調整してください。最高中の最高のものであるとクライアントに感じさせるのです。こうやって作られた見た目は、最も注目され、作り込まれたものであるという印象を与えます。アイデアを作り込まず、ソリューションを勝ち取ることを目的とした段階1では、基本的に不可能な作業ですが、後の段階になれば容易に達成可能であり、アイデアを締めくくる主な焦点となっていくはずです。

最後に、翌週の作業に移る時には、先週見せた一部を最初の数ページに持ってくると良いでしょう。顧客にとっても、チームにとっても、前の週までにどこまで終わったかを理解するのに役立ちます。どのページを持ってくるかの例としては、クリエイティブ概要、先週の段階で最も完成に近いバージョン、進むべき方向への理解を維持するのに役立つムードボード等が挙げられます。自分と同じように、他の皆が過去のデザインを理解していると想定してはいけません。新しい段階に入る前に、簡単にビジュアルリマインダーを行うことは素晴らしい導入です。

 

最終段階

最終段階は初期段階と同様に重要です。どちらの段階も目指すゴールは異なりますが、プロジェクト全体の成功にとって大いに重要です。最終段階の見本と納品を混同しないでください。「納品」は、まだ先の工程にあり、スタイルガイドとアセットのコレクションで構成されます。

最終段階は他の段階とは違い大きなインパクトを与えます。この段階は、ひとつのシステムにおける一貫性に関するものであり、自分の思いついたデザイン・ソリューションの力を示すものです。

まず、フォーマットを1つの長い「スクロール」スタイルのアートボードに変更することから始めます。デザインフロー全体をひとつの資料に格納することで、最終的なひとつのソリューションの本質を作り出します。不可解な改ページは許されません。私たちは同じく、上述のビジュアル・ストーリーテリングの方法で作業していますが、決断を加えることでより洗練され意図的なものになります。最終段階の作業の大部分は、文脈に沿ってデザインを取り込んでいくことです。より多く取り込んだ方が良いです。

「Focus Labによる〈Assembly〉のリブランディング中、私たちは毎週、大きな期待を寄せて待っていました。すべての提出見本において、彼らの思考過程や方法論が説明されていました。私たちのフィードバックを含めた構築が毎週なされます。プロジェクトの終盤には、一緒に作り上げてきたものに満足すると同時に、Focus Labが私たちをそこまで一緒に連れてきてくれたことに、大変満足しました。」-マシュー・スミス氏/@whale

コピー(文章)によるサポート

 

コピー(文章)によるサポート

ビジュアル的なフローが終わったら書いた文章について考えましょう。文章で提出見本をサポートする方法は2つあります。プレゼンテーションの低評価につながるタイプミスを排除し、上手に編集してください。編集段階では、少なくとも2つの異なる角度から見ることをお勧めします。

提出見本をサポートする最初の文章は資料の中に置きます。かわいらしいデザインを至る所に配置するだけで、誰もが自分の伝えたいことを理解できると期待してはいけません。シンプルな見出しを設けたり、目立たない程度の説明文を一緒につけたりしましょう。

 

「提出時の混乱は、少なければ少ないほどいい」

ロゴデザインとコピー1

ロゴデザインとコピー2

 

提出見本をサポートする2つ目の文章は、提出見本に同封する顧客宛のメッセージです。これは全体の構成に役立つ重要な部分です。きちんと仕事をしていれば、自分のこなした作業を顧客に伝えて共有することに興奮するはずです。キラキラと伝えてください。そして、自分の行ったこと、その理由、そこから何を自分が期待しているのか等を概説してください。下記のような感じで・・・

 

お客様  

今週は作業が素晴らしくはかどり、作業の進捗具合に満足しております。今週は、色・タイポグラフィー・最新のロゴタイプの3つの最重要事項に焦点を当てました。ロゴタイプの重要性について先週打合せいたしましたので、優先的に取り組みました。かなり時間をかけて修正作業に臨みました。どのように、なぜ再加工したのかは、ビジュアルのコレクションを参照してください。

この段階のゴールは、お客様から修正したロゴタイプの最終承認を頂いた後、カラーパレットと新しいタイポグラフィのペアリングに対するお客様の反応をお伺いすることです。まだ2週間は残っておりますので、8ページ目に載せてあるソーシャルメディアのアイコンや、プレゼンテーション中の画像等に捉われすぎないようにしてください。それらは、単なる会話のきっかけとなるものであって、明日の会議ではもっと沢山のことをお話しさせていただきます。

すべてが順調にいくことを願っており、近いうちに皆さんとこのことについて話し合うことを楽しみにしています。ありがとうございました!

 

最終製品へ




これは、プロジェクトを要約するために作成したビデオです。最終段階の納品ではありませんよ。

 

さあ、どうする?

これらの知識が、あなたの次回の提出見本に役立つことを願っています。何があなたの心に響いたか、また私たちが見逃してしまっている業界の落とし穴等あれば、Twitter @madebysidecarで教えてください。

私たちが作成したVertical Style Guide TemplateBranding Artboards TemplateBranding Showcase Templateをチェックして、作業をもっと簡単にしてください。これらのテンプレートにより、上述した知識を身につけ、すぐ作業ルーチンに取り入れることができます。

お読みいただきありがとうございます👍

created by Bill Kenney ( Focus Lab, LLC )

 

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