社会問題を視覚的に考えさせる啓蒙色の強い映像制作例

社会問題を視覚的に考えさせる啓蒙色の強い映像について

アクション映画を観た後、なんだか強くなったような気分がすることは誰もが経験したことがあることかもしれません。映像作品はスクリーン越しであるにもかかわらず、ダイレクトに強烈なメッセージを発信しています。直接的に言葉で訴えかける以上の発言力を発揮することもあり、映像ならではの効果はあらゆる形で証明されています。そこで今回は、シリアスな社会問題を映像の効果を秀逸に駆使している啓蒙している映像作品を集めてみました。あなたの心にも必ず響くはずです。

 

現代の風潮をビビッドに痛烈に描写する映像作品

Way Out

イギリス・ロンドンを拠点とするイラストレーター・アニメーターがアート系大学名門のひとつセントラル・セント・マーチンズの卒業制作プロジェクトとして発表した映像作品「Way Out」です。独特なタッチと色のコントラストが印象的なアニメーションが、作品のタイトルになっている「Way Out(出口)」を失っていく様子を描き出しています。この作品のテーマは、デジタル上のコミュニケーションに依存し、テクノロジーというトレンドから逃れられなくなっている人間の姿。一切のセリフやBGMもなく、ただスマートフォンの操作音が虚しく響き、いつかスマートフォンの中に閉じ込められていたはずの情報に飲み込まれ、その立ち位置が逆転する…という世界は、アニメーションとは思えないリアルさを兼ね備えています。

この作品は、臨床心理学者であり精神分析家のシェリー・タークル氏の著書「Alone Together(つながっていても孤独)」を題材にしており、バーチャルな世界とリアルな世界の境界が限りなく曖昧になりつつある今の時代をダイレクトにかつ芸術的に表現しています。その芸術性の高さは、世界各国のショートフィルムフェスティバルに選出されていることからも証明されています。どこか恐ろしい、啓蒙的な映像作品です。

 

40秒に1人の危険を視覚化した映像作品

40 Secs. Kids Finder – “Filmsupply Edit Fest” – Advertisement

アメリカ全土をカバーする映像著作権エージェント「Filmsupply」が毎年開催する映像編集者の作品を賞するフェスティバル「Filmsupply Edit Fest」で発表された作品です。アメリカの秋の風物詩ハロウィーンで仮装をしてお菓子を集めるために1人で外出する小さな子供が描かれています。画面右上のカウントアップが進み40になったところで、「アメリカでは40秒に1人、子供が行方不明や誘拐に遭っています。」という衝撃的なメッセージが飛び込んできます。

この映像作品で訴えているのは、子供にマイクロチップを埋め込むことで大切な我が子を守ろうということ。日本ではマイクロチップを人間の体内に埋め込むという発想はまだ一般的ではありませんが、アメリカでは確実に広がりを見せています。アメリカでは、誘拐された子供の74%が3時間以内に殺されているという恐ろしい統計も発表されており、日頃の親の意識を啓蒙する重要性は高いのではないでしょうか。どこにでもある風景をスローモーションで見せることで、日常に潜む「目に見えない危険性」をじわじわと感じさせています。深刻な社会問題を考えさせるという点で、映像がいかに効果的かを実感できる映像作品です。

 

笑顔を忘れた子供の姿に胸がつまるテレビコマーシャル制作例

Grief Encounter “Bear” by Liz Murphy

イギリスの親と死別した子供を支えるチャリティー団体が製作したテレビコマーシャルです。朝ごはんのシリアルを用意するところから始まり、小さな男の子が全部1人で時に苦戦しつつ、毎日の生活の様々な場面を過ごす姿が描かれています。その様子をどこか悲しげな表情で見つめるクマのぬいぐるみと、BGMもなく本来笑い声が響く子供のいる家ではありえない静けさがこの映像のテーマを見事に表現しています。母親をなくした男の子なんです。「Where’s Mum?(ママはどこ?)」という最も難しい質問の答えを出す支援をしています…というメッセージに、ただただ胸がつまるような思いがします。イギリスでは、30分に1人の子供が親と死別しているという現状があるそうで、その状況を受け入れられず悲しみにすら向き合えない子供たちをあらゆる形でサポートしようという活動は意義のあることです。

このコマーシャル製作を担当したのはリズ・マーフィーという有名なコマーシャルクリエイターで、マクドナルド をはじめとする国際的大手企業も担当しており、物語性の高い、啓蒙色の強い作品を多く発信しています。静かさの中にある発言力を体感できるテレビコマーシャルです。

 

誰にでも起きうる鏡の向こうの世界を描くキャンペーン動画制作例

UNHCR IDP Tolerance Campaign “Mirror” (English version)

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が製作したキャンペーン動画「Mirror」です。朝さわやかに目覚めた女性が、キッチンで朝ごはんを作る夫と食卓に座る娘という微笑ましい風景を目にして、バスルームで鏡と向き合うという内容です。そこで彼女が目にしたのは、身の危険を感じて今まさに家族で逃げ出そうとする自分自身。一切のセリフはなく、ただ鏡を隔てて存在する2つの世界が淡々と映し出されています。

このキャンペーン動画は、ウクライナでのIDP(Internally Displaced Persons:国内避難民)に対しての受け入れ姿勢を社会全体として改善していこう、サポートしていこう、というメッセージが込められています。「一瞬にして人生は変わる可能性もあります。それは誰かの話だけではなく、もちろんあなたにも起きうることです。」という言葉は、紛争地域だけでのことではなく、世界中のどこにでも当てはまることではないでしょうか。今この瞬間が続く保証などどこにもないからこそ、目の前にいる避難を余儀された人たちと助け合える社会を作ることを再認識させてくれる響く動画です。

 


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