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レーザー印刷について

レーザー印刷の仕組み・特徴について:印刷史のなるほど雑学22

レーザー印刷について

レーザー印刷とは?

コンビニエンスストアや職場で身近なレーザー複写機やレーザープリンターに採用されている印刷技術です。現在では、レーザーの代わりにLEDも多く使われています。

レーザープリンターは、コンピューターの出力機器として1970年代に、研究開発が進められました。インクジェットプリンターと同じく、コンピューターなどのデジタル機器から送られてきたデジタル信号をイメージとして用紙に出力します。

モニター画面で見たままを、普通紙に高速で印刷できるレーザープリンターは、1980年代中ごろに登場したDTP(デスクトップパブリッシング) で重要な役割をはたします。

 

レーザー印刷の原理について

米国の物理学者で発明家のチェスター・カールソン(Chester Carlson)が、1938年にゼログラフィ(Xerography)という複製技術を発明しました。この技術によって、1959年には世界で初めての普通紙複写機が生まれます。静電気を光でコントロールすることでイメージを複製する、というゼログラフィの印刷と同じ原理がレーザープリンターにも応用されています。




レーザー印刷はおおまかに以下の工程でおこなわれます。

帯電:感光ドラム表面全体に均一にプラス静電気をためる。
露光:パソコンから送られてくるデジタルデータに基づいて、レーザーで感光ドラム表面に像を描きます。信号に応じてプラス静電気を強めます。こうすることで静電気の強弱でイメージが描かれます。
現像:マイナス静電気を帯びたトナーを感光ドラムに振りかけると、プラス静電気が強められた部分にトナーが吸い寄せられて、トナーのイメージが描かれます。
転写:トナーで描かれたイメージをコピー用紙へ転写する。
定着:熱でトナーの樹脂成分を溶かして用紙上に定着させる。

モノクロ複写機の場合は、黒のトナー一色なので、上記の工程1回だけで複写は完了します。カラー複写機の場合は、シアン・マゼンタ・イエローと黒の計4つの像を重ねることでカラーの複写をおこなっています。

テキストや画像など1ページ分のデータをまとめて処理するので、印字スピードが速いのが特徴です。ページ単位で印刷するので、ページプリンターとも呼ばれます。

 

レーザープリンターの開発史

1938年、米国のチェスター・カールソンがゼログラフィ(Xerography)を発明します。このゼログラフィの技術に基づいて1959年に、世界初の普通紙複写機Xerox 914がゼロックス社の前身であるハロイド・ゼロックス(Haloid Xerox)社から発売されました。

1969年に、ゼロックス社のゲイリー・スタークウェザー(Gary Starkweather)が、複写機の技術を基にレーザープリンターを考案します。のちに発売された同社のXerox 9700は、このアイデアに基づいて開発されました。

世界で初めて市場に導入されたレーザープリンターは、米IBM社のIBM 3800です。同社の大型汎用コンピューター専用の周辺機器として1976年に発売されました。現代のプリンターに比べるとはるかに巨大なものです。連続用紙を使って高速印刷しました。

1977年には、ゼロックス社から同社初のレーザープリンター、Xerox 9700が発売されます。現在のレーザープリンターの元祖ともいえる画期的な製品でした。カットシートへの自動両面印刷が可能で、毎分120枚印刷する能力がありました。解像度は300dpi。文字だけでなく画像も印刷できました。

1979年に日本のキヤノン社が、世界で初めて半導体レーザーを採用したレーザープリンターLBP-10を発売。大幅な小型化を実現した卓上型のモデルでした。価格も当時の標準的価格の10分の1と低く、パソコン市場にレーザープリンターが受け入れられるきっかけになりました。

1984年に、米アップル(Apple)社から同社初のレーザープリンターLaserWriter、米ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)社からHP LaserJetが発売されます。いずれもキヤノン社製のCXエンジンを搭載していました。アップル社のレーザープリンターは、この後の世代もキヤノン社の開発するエンジンを採用します。

1985年にアップル社から発売されたLaserWriterには、世界で初めて「PostScript(ポストスクリプト)」が採用されました。PostScriptは、米アドビシステムズ(Adobe Systems)社が開発したページ記述言語です。ここに米アルダス(Aldus)社のレイアウトソフト「PageMaker(ページメーカー)」が加わって、DTPの本格化を牽引します。

 

「3A宣言」とDTP

1985年1月、米アップル社の株主総会でアルダス社のポール・ブレイナード(Paul Brainerd)社長が、「Desktop publishing(デスクトップ・パブリッシング)」を提唱しました。のちに「DTP」と略される「Desktop publishing」という言葉は、ブレイナード社長が生み出したと言われています。

photology1971 – stock.adobe.com

アップル社のパソコン「Macintosh(マッキントッシュ)」は、デスクトップ(机上)にファイルやフォルダを並べたグラフィカルなユーザーインターフェイスを採用していました。これによって誰でも直感的に操作できる、というのが特徴のひとつでした。

出版・印刷の工程は、デザイン、版下、製版、印刷と分かれていて、それぞれの専門家が作業を分担していました。しかし、グラフィカルインターフェイスで使いやすいパソコン「Macintosh」とレイアウトソフト「PageMaker」、ページ技術言語「PostScript」を組み合わせれば、ひとつのシステムで迅速に低コストで出版できるのだということを、「デスクトップ・パブリッシング」という言葉で表現したのです。

それぞれのメーカー名、アップル(Apple)、アルダス(Aldus)、アドビ(Adobe)の頭文字から「3A宣言」といわれています。


【参考資料】
Laser printing – Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Laser_printing)
レーザープリンター – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/レーザープリンター)
キヤノン:技術のご紹介 | サイエンスラボ デジタル複写機 (https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/07.html)
Desktop publishing – Wikipedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Desktop_publishing)
Xerox Celebrates Xerox 9700 Innovation | Xerox Newsroom (https://www.news.xerox.com/news/40-year-anniversay-of-the-Xerox-9700-and-its-innovation)



印刷(印刷機)の歴史

木版印刷 200年〜

文字や絵などを1枚の木の板に彫り込んで作った版で同じ図柄を何枚も複製する手法を「木版印刷」(もくはんいんさつ)といいます。もっとも古くから人類が利用してきた印刷方法です。

活版印刷 1040年〜

ハンコのように文字や記号を彫り込んだ部品を「活字」(かつじ)を組み合わせて版を作り、そこにインクをつけて印刷する手法を「活版印刷」(かっぱんいんさつ)といいます。活字の出っ張った部分にインクを付けて文字を紙に転写するので、活版印刷は凸版(とっぱん)印刷に分類されます。

プレス印刷 1440年〜

活字に油性インクを塗り、印刷機を使って紙や羊皮紙に文字を写すという形式の活版印刷が、ヨハネス・グーテンベルク(Johannes Gutengerg)によって初めて実用化されました。印刷機は「プレス印刷機」と呼ばれ、現在の商業印刷や出版物に使われている印刷機と原理は変わりません。

エッチング 1515年〜

「エッチング」は銅などの金属板に傷をつけてイメージを描き、そこへインクを詰め込んで紙に転写する技法です。くぼんだ部分がイメージとして印刷されるので凹版(おうはん)印刷に分類されます。

メゾチント 1642年〜

銅版画の一種である「メゾチント」は階調表現にすぐれています。銅板の表面に傷をつけてインクを詰め込み、それを紙に転写します。くぼんだ部分のインクが印刷されるので凹版印刷に分類されます。

アクアチント 1772年〜

「アクアチント」は銅版画のひとつの技法で、水彩画のように「面」で濃淡を表現できることが大きな特徴です。表面を酸で腐食させてできた凹みにインクを詰めて、それが紙に転写されるので、凹版印刷に分類されます。

リトグラフ 1796年〜

「リトグラフ」は水と油の反発を利用してイメージを印刷する方式です。凹凸を利用してインキを載せるのではなく、化学反応によってインキを付ける部分を決めます。版には石灰岩のブロックが使われたので「石版印刷」(せきばんいんさつ)ともいわれます。版面がフラットなので平版(へいはん)に分類されます。

クロモリトグラフ 1837年〜

「クロモリトグラフ」は、石版印刷「リトグラフ」を改良・発展させたカラー印刷技法です。カラーリトグラフと呼ばれることもあります。

輪転印刷 1843年〜

「輪転印刷機」(りんてんいんさつき)は、円筒形のドラムを回転させながら印刷する機械です。大きなドラムに版を湾曲させて取り付けます。ドラムを高速で回転させながら、版につけたインクを紙に転写することで、短時間に大量の印刷が可能です。

ヘクトグラフ 1860年〜

「ヘクトグラフ」は、平版印刷の一種で、ゼラチンを利用した方式です。ゼラチン版、ゼラチン複写機、ゼリーグラフと呼ばれることもあります。明治から昭和初期まで官公庁や教育機関、企業内で比較的部数の少ない内部文書の複製用に使われました。

オフセット印刷 1875年〜

「オフセット印刷」とは、現在の印刷方式の中で最もポピュラーに利用されている平版印刷の一種です。主に、書籍印刷、商業印刷、美術印刷など幅広いジャンルで使用されており、世界中で供給されている商業印刷機の多くを占めています。

インクジェット印刷 1950年〜

「インクジェット印刷」は、液体インクをとても細かい滴にして用紙などの対象物に吹きつける印刷方式です。「非接触」というのがひとつの特徴で、食用色素を使った可食インクをつめたフードプリンター等にも利用されています。

レーザー印刷 1969年〜

「レーザー印刷」は、コンビニエンスストアや職場で身近なレーザー複写機やレーザープリンターに採用されている印刷技術です。現在では、レーザーの代わりにLEDも多く使われています。1980年代中ごろに登場したDTP(デスクトップパブリッシング)で重要な役割をはたしました。


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