Skip links
Raymond Loewy_デザイナーアーカイブ

レイモンド・ローウィ(Raymond Loewy)- 流線型スタイリングで歴史に輝くインダストリアル・デザインの草分け

Raymond Loewy_デザイナーアーカイブ

ハリウッド映画『バック・トゥ・ザ・フーチャー』で主人公のマーティとドクは1955年にタイムスリップします。その時代に独特のスタイリングで人気を博した乗用車メーカーのひとつにスチュードベイカー(Studebaker)があります。なめらかな流れるようなラインが印象的なモデルをレイモンド・ローウィがデザインしました。

ローウィは「インダストリアル・デザインの父」と呼ばれています。そのデザインの特徴は流線型(streamline)モチーフです。「口紅から機関車まで」と表現されるように、ひげ剃りや鉛筆削りから長距離パスや鉄道車両まで、あらゆるプロダクトを流線型デザインでスタイリッシュに変えました。また、インダストリアル・デザインにとどまらず、タバコのパッケージから大統領専用機エアフォース・ワンの外装なども手がけた、まさに20世紀の代表的デザイナーのひとりです。

Raymond Loewy

Raymond Loewy by Wikipedia

 

それは複写機から始まった

ローウィは1929年にゲステットナー社から複写機の外観の改良を依頼されます。同社に限らずそのころの製品の外観は、部品を組み上げただけといったものでした。

複写機のデザイン (via Pinterest)

彼はスチール製の黒いケースをデザインし、シンプルで機能的な製品に仕上げました。インダストリアル・デザイン(industrial design)という言葉が生まれる前にローウィが初めておこなったインダストリアルデザインです。これが評価され、コールドスポット(Coldspot)冷蔵庫の仕事が続きます。ローウィはインダストリアル・デザイナーとして認知されます。

 

鉄道車両のデザイン

1937年にはペンシルバニア鉄道のために蒸気機関車や電気機関車のデザインを始めます。

鉄道車両のデザイン

20世紀前半ペンシルバニア鉄道は米国最大規模の鉄道会社でした。ローウィがデザインしたS1形、T1形といった蒸気機関車は丸みを帯びた流線型で飛行機や宇宙船を思わせるような美しい外観を持っています。

 

ロゴデザイン

スチュードベイカーのロゴデザイン

レイモンド・ローウィのデザイン事務所は1930年代の後半から代表的自動車メーカーのひとつであるスチュードベイカーと関わりを持ちます。流線型スタイリングを持つ歴史的なモデルをいくつか発表します。このときメーカーのロゴもローウィがリニューアルしました。それまで使われていたシンボルは車輪にブランド名を重ねた素朴なマークでした。

ステュードベイカーのロゴ

それを流れるような「S」を使ったシンプルなワードロゴに変更しました。いま見ても1世紀前に作られたとは思えないとてもスタイリッシュなものです。

 

石油ブランド「エクソン」のロゴデザイン

インダストリアル・デザインで名声を馳せたレイモンド・ローウィですが、多くの世界的ブランドのロゴもデザインしています。

エクソンの会社ロゴ

・エクソンのロゴ / wolterke – stock.adobe.com

石油大手のエクソン(Exxon)のロゴもローウィの手によるものです。石油会社スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーはエッソ(Esso)というブランドを使っていましたが、他社からの訴えで米国内ではエッソブランドの使用を特定の地域だけに制限されてしまいました。それ以外の地域で使うための代わりの新しいブランド名が必要になった同社はレイモンド・ローウィに依頼します。

ロゴのラフスケッチ (via Pinterest)

彼は「Exxon」というブランド名を鉛筆書きのラフスケッチ76案とともに提案したと言われています。いずれもふたつのエックス「xx」にポイントを置いた案ですが、これは「Esso」の「ss」を意識したものであり、古いブランドが新しいブランドに変わったことを示しています。また最終的なロゴのつながった「X」は信頼性を表現しているとも言われています。ローウィの提案の数年後、1972年にスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー社は、社名自体を「Exxon Corporation」に変更しました。

ちなみにエクソンは1999年に同じく石油大手のモービル(Mobil)と合併し、社名はエクソンモービルに変わりましたが、モービルのロゴはチャマイエフ&ガイスマー(Chermayeff & Geismar)が制作しました。

 

石油ブランド「シェル」「BP」のロゴデザイン

ローウィはほかにも世界的な石油ブランドを手がけています。

シェル石油のロゴデザイン

・シェルのロゴ / Alexandr Blinov – stock.adobe.com

石油を中心にエネルギー事業をおこなっているロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)の有名なホタテ貝のロゴマークは、起源を20世紀初頭まで遡ります。当初は写実的だった図柄は徐々にシンプルになり、色が赤と黄に決まるなど、時の流れとともに少しずつ変わっていったロゴですが、現在使われているロゴは1971年にレイモンド・ローウィが手がけたものです。

ブリティッシュ・ペトロリアムのロゴ

・ブリティッシュ・ペトロリアムの旧ロゴ / hansenn – stock.adobe.com

英国発祥のブリティッシュ・ペトロリアム(British Petroleum、略称BP)は盾とBPの文字を組み合わせたロゴを1930年から2000年まで使っていました。時代とともに少しずつ修正が施されていましたが、1989年から2000年まで使われていたロゴもローウィの手によるものです。

 

アンビグラム・ロゴ

New Manのロゴデザイン (via Wikipedia)

ローウィが1969年に制作したフランスのファッションブランド「New Man」のロゴは、180度回転させても全く同じ形になります。

このような複数の角度から読めるグラフィカルな文字はアンビグラム(ambigram)と呼ばれます。ローウィの「New Man」は今でもアンビグラムを使った代表的なロゴのひとつに数えられます。

 

世界的ブランドのパッケージデザイン

コカコーラ社のデザイン

配送トラックデザイン (via Pinterest)

1940年代にザ・コカ・コーラ・カンパニー(The Coca-Cola Company)のクーラーボックスやドリンク・ディスペンサー、配送トラックなどをリ・デザインしました。いずれも美しさと機能性を兼ね備えたもので、中でも配送トラックは配達員の要望に応えて設計し直して使い勝手を改善しました。

なお、あの曲線的なボトルのオリジナルデザインをローウィがおこなったと誤解されることも多いようですが、後に発売されたサイズバリエーションのリ・デザインに彼は関わっていました。

 

ナビスコのロゴデザイン

ナビスコのロゴデザイン

・ナビスコのロゴ / “>Koukichi Takahashi – stock.adobe.com

ビスケットなどで有名なナビスコ(Nabisco)のロゴは、楕円形の上にアンテナのような十字架を乗せた印象的なものです。赤字に白で表されたこのロゴは1900年から使われていました。これを三角形にしてパッケージの左上隅に斜めにレイアウトしたのがレイモンド・ローウィです。

 

宇宙ステーションのデザインコンサルタント

宇宙ステーションのデザイン (via Pinterest)

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、60年代初頭から70年代末まで人類を月に送るための「アポロ」計画と宇宙で実験するための宇宙ステーション「スカイラブ」計画を続けました。レイモンド・ローウィは1967年から1973年まで、宇宙での居住性や快適さを実現するためのコンサルタントとしてNASAに貢献しました。

面白いエピソードがあります。1968年に映画『2001年宇宙の旅』が公開された時、スカイラブ計画に関わっているローウィ事務所のデザイナーたちに、「米国宇宙開発の父」ヴェルナー・フォン・ブラウン(Wernher von Braun)博士がその映画を見るように進めたというものです。

ともかく、スカイラブ計画では宇宙飛行士が船内で過ごす時間が非常に長くなったので、レイモンド・ローウィをはじめとするデザイナーたちは新たに船内の配色などにも注意を払いました。

このようなアイデアにより狭く閉ざされた無重力の室内で飛行士たちが何週間も快適に任務を遂行できるようになったのです。

 

デザイン法則「MAYA」

レイモンド・ローウィは成功するデザインの法則を発見し、それを「Most Advanced, Yet Acceptable」と表現しました。「もっとも先進的だが受け入れることができる」という意味のこの言葉の頭文字をとって「MAYAの法則または原理」(MAYA priciple)と呼ばれています。

「新しいものへの興味」と「見慣れないものへの抵抗」という2つの矛盾する心理を消費者は持っていることをローウィは発見しました。消費者は新奇なものに惹かれるけれども、新しすぎると恐れを抱いてしまう為、そのちょうどいいバランスの状態を「Most Advanced, Yet Acceptable」(もっとも先進的だが受け入れることができる)として、あらゆるデザインやソリューションにMAYA法則を適用しました。

 

フランスで生まれ、米国で活躍し、フランスで永眠

レイモンド・ローウィは1893年にフランスのパリで生まれました。第一次世界大戦に従軍したのち1919年にニューヨークに移ります。

元々キャリアのスタートは、メイシーズ百貨店(Macy’s)などの店舗装飾の仕事やファッション誌『ヴォーグ』(Vogue)のイラストを描いたりしていましたが、1929年のゲステットナー複写機を皮切りにインダストリアル・デザイナーとしての輝かしい経歴が始まります。1980年に87歳で引退しフランスへ戻り、1986年にモンテカルロで永眠しました。

 

レイモンド・ローウィ(Raymond Loewy)
1893年〜1986年
フランス・米国
インダストリアルデザイナー


【参考資料】
Raymond Loewy、Wikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Raymond_Loewy)
The Official Website of Raymond Loewy(https://www.raymondloewy.com/)
Garrison uwm early industrial design raymond loewy(https://www.slideshare.net/LeeAnnGarrison/garrison-uwm-early-industrial-design-raymond-loewy)
Raymond Loewy designs、Art and design、The Guardian
(https://theguardian.com/artanddesign/gallery/2013/nov/05/raymond-loewy-timeless-designs-in-pictures)
Design THE PIONEER OF STREAMLINING – The New York Times(https://www.nytimes.com/1979/11/04/archives/design-the-pioneer-of-streamlining-design.html)
Coke and the Legacy of Raymond Loewy: The Coca-Cola Company(https://www.coca-colacompany.com/stories/master-of-design-coke-and-the-legacy-of-raymond-loewy)
Exxon by Loewy | Logo Design Love(https://www.logodesignlove.com/exxon-logo-raymond-loewy)
Designed Different- Raymond Loewy(https://youtu.be/8Z-qGJfaA7k)
レイモンド・ローウィ、Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/レイモンド・ローウィ)
20世紀工業デザインの巨匠レイモンド・ローウィの 「コカ・コーラ」デザイン遺産: The Coca-Cola Company(https://www.cocacola.co.jp/stories/raymond-loewy)

最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)




サイトへのお問い合わせ・依頼各種デザイン作成について


Home
ご依頼・お問い合わせ
Top